コメディ・ライト小説(新)

Re: キミの隣に。『コメント募集中!!』 ( No.89 )
日時: 2017/05/01 22:12
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

episode14「Prospective」







「芽衣ちゃんおはよっ」

通学路。昨日と同じように咲恵ちゃんが言って私の肩を叩く。
……昨日は、無理な笑顔で言っていたけれど。

「おはよ!」

心からの笑顔で――咲恵ちゃんに挨拶をした。


「昨日……大丈夫?」

咲恵ちゃんは心配そうに眉を下げて問いかけてきた。
「昨日」……急に倒れた日だ。

どこか私の気持ちは吹っ切れていた。


「大丈夫、だよ!心配掛けてごめん」
「いや、謝ることなんてないよ?でも本当心配したなぁ~、直ったとしても油断しちゃ駄目だよ?」
「分かってるってー」

そんな会話を交わしながら、学校の校門を抜け下駄箱で靴を履き替え――いつもの一日が始まる。



○*



「え、昨日の特活無くなっちゃったの?」
「当ったり前じゃん!?倒れたんだから!!それにしても大丈夫?芽衣ちゃん……」

ゆかちゃんの話では……昨日の特活は無くなったと。

私のせい……分かってはいるけれど、そう思うと苦しい。

「私は大丈夫……けど、何か無くならせちゃってごめん……」
「気にしないでよ!芽衣ちゃんが倒れたのに特活なんかしていられるものですか!」

ゆかちゃんの言葉に思わず目頭が熱くなるのを感じた。



今日も特活があるらしい。

浮き足が立つほど、楽しみだった――。




Re: キミの隣に。『コメント募集中!!』 ( No.90 )
日時: 2017/05/03 11:53
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

~






この中学校の文化祭は中々有名で、周辺から沢山の人々が訪れ――一番訪れた人数が多かった年は4000人ほどだったという。
敷地面積が広いここは、行事に関して多大なる評価を受けている。

その一つが、この世界での1ヶ月後行われる行事――文化祭。


「悠人さぼるなよー」
「青石ー、これ手伝って」


……青石くんと話せる最後の機会。


○*



この時期になると、廊下や教室の壁は文化祭の出し物のポスターでほぼ埋め尽くされる。また、周辺地域にそのポスターを貼りに行くことも許されていて、看板作りは中々重要な仕事だ。
私とゆかちゃんで大量のポスターを作る。出席番号1~8番で女子は私たちしか居なくて、男子はゆかちゃん曰く絵が下手らしい……。

青石くんはそんな男子をまとめるためー、と言っていた。青石くんはそこそこ絵が上手い方だ。


「男子サボってないでちゃんとやってよね!?1時間減ってんだから――じゃなくて!去年も余裕~とか思ってたら時間無くなって……最後すごい焦った人、この中にいたでしょ!?」

明らかに私への嫌味が聞こえた気がするけれど、言い直してくれたから聞き流しておこう……。


最終的に、どれだけポスターを作ったとしても……一番大切なのは、店の外見だ。今男子が作ってくれている店自体の看板に何も特徴がなければ、印象に残らなければ……きっと売り上げは最悪だろう。

ゆかちゃんは何だかんだ、こういう行事に積極的だ。

だからその気持ちで色々ぶちまけているけれど、やっぱり楽しみたいという気持ちからなのだろう――。



青石くんのことを一瞥する。


……きっと、楽しめるよね?











――


今回は説明が多かったと思います。
長々とした説明ですが……ちらっとでも目を通していただけると嬉しいです。

Re: キミの隣に。『コメント募集中!!』 ( No.91 )
日時: 2017/05/05 14:55
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

~




「これ手伝ってー」
「はいはーい」
「なんか返事が冷たい……」

男子からの笑い声が別作業をしている私とゆかちゃんの耳に届く。


青石くんは神妙な顔つきで店の看板を作っていた。……普段、ずっと明るいからそのイメージしかなかったけれど……、


やっぱり、自分が天国に引き渡される、そう知っていて笑顔で過ごすのは辛いんだ。


普段より真面目な顔はそう物語っているような気がした。


楽しまないと。

吹っ切らないと。



――私は知らず知らずのうちに、自分に言い聞かせて…………。



○*


「ポスター9枚書き終わったぁ~!」
「これでやっと5分の1なんだよね……」
「さすがに45枚も書けって意味分かんないよっ!」

私とゆかちゃんは余りにも大変すぎるポスター作り作業に不満をぶちまけていた。


「大変そうだな」
「そうなんだよ!青石そこそこ絵上手いからこっち回ってきて欲しいくらい!」

その方が良いんじゃないの――?と、訳知り顔のゆかちゃんは私を振り向いた。

「……あはは……」

曖昧な笑みで返す。


「別にそっち回ってもいいんだけどな……てかあいつら口だけで全然作業しないから、これやりたいくらいなんだけど」
「でもまああんたがあいつら――男子たちをまとめてくれないと、この班崩壊するよ絶対」
「崩壊はねーよ!?せめて爆発……」

(もっとひどい……)


そう心の中で突っ込む。




同時に……嫌な感情が湧いてきた。

八谷さんと青石くんが話していたときと同じ感情……嫉妬。




『私が?青石のこと……?』
『うん。もしかして好きだったりして?』

ゆかちゃんと…中2で同じクラスになったときの会話だ。

その時、青石くんも同じクラスだった。
何かと仲が良さそうに見えたゆかちゃんと青石くん……もしかしてゆかちゃんは、と思って聞いてみたことがある。


『……やだなぁ、好きなわけないじゃん。黒崎さん、冗談は……やめてよね……』


何でも話せる友達、ではなかった頃の会話だ。

だからゆかちゃんは……嘘をついて居たのではないのだろうか。




「爆発はひどい」
「ボケてみただけだしー」


口は悪くなってしまっているけれど。

……不思議と、顔は笑顔に見える。
楽しそう。嬉しそう。



もしかして、ゆかちゃんは……

青石くんのことが好きなのかな――。





―――



今考えているラストは……結構、バッドエンドになります……。