コメディ・ライト小説(新)

Re: ホロフロノス〜刻限の輪廻〜 ( No.14 )
日時: 2017/04/28 20:37
名前: 珠紀 (ID: 17jRVk42)

直後、ドアが開き、仮面をつけた男が室内に足を踏み入れる。

唖然としていた日向子は、その気配にはっとして、ドアの方を見た。
そして、その顔を見て思わず後ずさる。

男は奇妙に微笑んだ能のお面をつけていた。


「…………」


窓に背中をつけ、怯えた表情を見せる日向子に、男は微動たりせずに見つめ、手に持っていた拳銃の弾を日向子へと放つ。


日向子は倒れた。

痛みは感じなかった。
麻酔銃だ。

手も足も、身体中が溶けたアイスみたいにゆるゆるだ。


「力が……入らない」


━━衝撃。

大きな男の叫び声。
先程の能のお面の男の声だ。

誰かが日向子を抱き上げる。

なんだかとても眠い。

日向子は誰かに包まれて、うとうととまどろむ。

不思議な心地よさの中、目をあけると優の顔が見えた。


「え、ユウちゃん……?」


そう言って、手を伸ばした。


「日向子」


驚いた顔で優も手を伸ばしその手を掴んだ。

そのまま日向子は光り輝く暗闇へと落ちていく。

一人、深く高く。

誰かが守るように日向子を抱きしめる。

朦朧と瞼を開けると、事故の前に出会った軍人の仮装をした男がいた。

苦しそうに顔を歪ませている。

優の姿がない。
確かに先程は優がいたはずだ。

まわりを見ると様々なお面をつけている人たちに取り囲まれていた。

その人たちがくぐもった声をそろえる。


「ホロス、その女を渡せ」


ホロス、とは日向子を抱えている男の名だろう。

がくん、とホロスの体が低くなった。


「……ヒナは渡さない」


次の瞬間、轟音と共に光の固まりがホロスから放たれた。

その光は二人を包み込み、日向子とホロスの姿を消し去った。