コメディ・ライト小説(新)

Re: ホロフロノス〜刻限の輪廻〜 ( No.8 )
日時: 2017/03/08 11:57
名前: 珠紀 (ID: dXUQaT2.)

***





――カチカチ…カチッ

静まり返った部屋の中で、懐中時計だけが鳴り響いている。



また夢を見た。
今度はいつもよりも鮮明に。


空を見上げるとからすが鳴いている。


「痛…っ」


ピリッとした痛みに下を見る。
素足のままだった。


どうして………


足の裏を見ると血が滲んでいる。
瓦礫を踏んでしまったのだ。

あたりを見渡すと、沢山の瓦礫の山だった。
近くには鉄骨のビルが原型を留めないほどに崩壊されていた。

風景に色彩を与えるはずの草木は枯れ、暗褐色あんかっしょくの光景がそこには広がっていた。

全身に鳥肌が立つ。

この世界はやけにリアルで、夢だという意識が頭の片隅にあるのに、風景に見入っているとつい夢であることを忘れてしまう。

再び空を見上げる。
黒に揺れる空。

黒いモノが空をむしばんでいた。


暑くもないのに額から汗が流れ落ちる。


「いらっしゃい」


いきなり背後から声をかけられ、身体を震わせ後ろを振り返る。

そこには黒マントの青年がいた。


「…誰?」


一歩下がり問いかける。


「……………」


彼は無言だ。

フードで顔が隠れており表情が見えない。
口だけは確認できるが、、動く気配すらない。


「ねえっ………!?」


呼びかけると同時に強い風が吹き身体を攻撃する。
それと同時に男のフードが脱げた。


「………あ」


思わず声が漏れる。


彼の髪は白く染められていた。
風に揺られ、きらきらと白銀に光る。


彼と目があった瞬間、彼は人形のように微笑んだ。


「もう少しだね」


そんな言葉を残して。










その刹那、グラっと視界が歪む。
今までの目の前にいた男の姿も、見えない。

驚きはしなかった。
日向子は知っている。
これは現実の自分が、覚醒したからなのだと。

そしてゆっくりと意識は途切れ、奇妙な夢の世界は終わりを告げた。

重たい瞼を開けるとそこにはいつもの天井がある。


「やっぱり」


夢だった。
本当に変な夢。

ゆっくりとベットの上に身体を起して窓の外を見ると、もう日が昇り始めているのか、光がカーテンの隙間から室内に漏れていた。

枕元の時計を見ると、六時を少し過ぎたところだ。

ベットから降りて、そっと窓にかかるカーテンを開いた。


「……あの男の人……誰だったのかな……」


そう呟くと、準備する手つきが少し鈍くなるような気がした。