コメディ・ライト小説(新)
- 未来改変 ( No.10 )
- 日時: 2017/03/31 13:55
- 名前: ラッテ (ID: 5YaOdPeQ)
Re;10 謎
魁斗が視ることの出来るのは、目標にした人物の《名前》《年齢》《性別》《性格》《過去》《心情》そして、《記憶》。
それが全て情報として、頭の中に刷り込まれる。
しかし、《記憶》だけは例外だ。
そもそも、《記憶》と《過去》は、何が違うのか。
答えは簡単である。
《その人物が体験してきた事》か、《その人物が干渉した事》かである。
前者は、過去のことを表している。
分かりやすく言うと、奶斗が体験してきた人生が視えるのだ。
ならば後者は、記憶の事を指している。
つまり、魁斗の視ることのできる《記憶》というのは、奶斗が体験してきた分岐点、キーの事を表しているのだ。
謎の少女。リセットの前に現れた少女の事ではない。
確かに彼女も大きなキーであることには違いない。
しかし、それ以前に重要なのは、奶斗が助けている交差点の少女である。
彼女が、奶斗の分岐点の原点。
原点の謎が解き明かされたのなら、連鎖してそれ以降の分岐点の謎も紐解けて行く。
今一番視なければいけないのは、交差点の少女の正体なのである。
先程も言った通り、魁斗が視る《記憶》は、視え方が他の視ることの出来る事象と違う。
記憶だけが唯一、映像として目に焼き付けられるのである。
その記憶の中の人物でも、魁斗は視る事ができる。
しかし、記憶の中の人物は、視ることのできる事象の範囲が狭まってしまう。
《名前》《年齢》《性格》
この三つだけである。
しかし、それだけでも知る価値はある。
名前さえ暴けば、あとは様々な手段を使いその人物の元へ辿り着くことができる。
人間は、名前を知られてしまったら、どう防ごうと正体が暴かれてしまうのである。
そう考えると、魁斗の持つ能力は、非常に危険な力である。
超千里眼を手に入れたのが常識のありそうな魁斗で、本当に良かった。
魁斗がこの能力を手に入れた経緯。
それを奶斗が尋ねても、彼は口を開かなかった。
人は誰だって他の人間に言いたくない事が一つや二つくらいあるものだ。
それを追及されると、根本的な人間的問題が破滅する恐れもある。
奶斗の前には、《追求する》《追求しない》の分岐点が現れた。
この後どちらを選ぼうと、魁斗にはどちらを選択したのか視られてしまう。
ならば、今は《追求しない》。
知りたい気持ちは当然ある。
だからこそ、魁斗が自ら口を開けるまで、待つのだ。
記憶の中の人物を視る時は、非常に時間がかかる。
初期のパソコンを開く時に非常に時間がかかったが、それと同じような感覚だ。
ずっと頭の中でロード中で、一向にダウンロードされない。
ダウンロードが終わるまで、魁斗は集中しなければいけない。
それでも、彼には話す余裕くらいあるが。
「なあ、魁斗。どうしてそこまで俺に協力するんだ?」
魁斗は集中した表情のまま、答えた。
「何となく、予感してるんだ。お前が未来を改変して、最終到着点が雨の世界から変わった時、能力は無くなる。そんな予感が。この能力を、俺は望んで手に入れたわけじゃない。むしろ、嫌っているほどだ。それが無くなるなら、どれだけでも協力する。それに、雨の世界が世界の行く果てなんて、嫌だしな。」
よく集中しているのにこれだけ話す事ができるな、と奶斗は感心した。
それと同時に、感激した。
最強の、協力者が現れたのだから。
ようやく視る事が終わったらしい。
少女の名は、三条 沙耶。
魁斗や奶斗はおろか、おそらく知らない人間はいないであろうという程の有名人物であった。
今から四年前に、《儀式》と名付けられた、少女の大量虐殺。理由は、国のトップしか知らない、そのあまりにも非人間的な行いによって、政府は解体された。
その虐殺された少女の中で、最後まで抗った、《英雄》と呼ばれた、死んだはずの少女。
それが、三条沙耶。