コメディ・ライト小説(新)

未来改変 ( No.17 )
日時: 2017/04/04 12:59
名前: ラッテ (ID: 5YaOdPeQ)

Re;17 悲


現在の時点で、有利なのは言うまでもなく篠だろう。

《万物崩壊》といういわばチート能力オリジンにより、彼は未だに無傷。

彼が崩壊させることが出来る事象に、範囲の制限などない。

例えば、自身に溜まった《疲労》を崩壊させることだって可能なのである。

彼は、あらゆる事象を崩壊させる。

唯一崩壊できない《事》に、奶斗はいち早く気付くべきだったのである。

戦い開始から五分が経過した。

奶斗は地面に伏せ倒れ、篠は奶斗を踏みつけていた。

「楽しかったぜ。久しぶりに五分間も戦うことができたぜ。ありがとよ。ま、これ以上戦っても何にもならねえ。さっさと連れてくからな。」

そう言って、篠は奶斗に触れた。

実際、篠に奶斗を殺す気は無かった。

捕獲。それが篠が今すべきこと。

殺してはいけない。だから、この時篠は能力オリジンを発動しなかった。

しかし、奶斗の本能は察してしまった。

《触られた》と。《崩壊させられる》と。

奶斗は、いや、奶斗の本能は、人間の活動できる制限を超えてしまった。

疲弊していて動けないはずの体を、どこから力が出てくるのか、篠の手を振り払い大きく後退した。

その有様は、もはや獣だった。

激しく呼吸を繰り返し、篠を睨みつけている。

篠は危険を悟った。人は、土壇場ピンチこそ力を発揮するのだ。

魁斗だけでも攫おうか、と考えた時、奶斗は動きを見せた。

すぐに警戒態勢に入ったが、そのまま奶斗は倒れた。今度こそ、完全に気を失ったのである。

もう一度奶斗を拘束するため、近づいた篠。

もう流石に動けないだろう。その考えが、命取りとなった。

奶斗の体に手を触れようとしたその時、再び異変は起きた。

消えかけていた、奶斗の体から発せられていた光が、再び強い光を発し始めたのである。

さらに、目だけが白くなっていたが、髪の毛がまでもが黒色から白色に変化したのである。

流石の篠でも、恐怖を覚えた。

何故なら、自分が見ているこの光景は、あまりにも人の領域から離れすぎていて、神に近づきすぎているのではないか、という人ではなくなってしまうような恐怖感に襲われたからである。

この時、恐怖を覚えてしまったがために、いけなかったのかもしれない。

戦いは、最終局面を迎えた。

奶斗は、ゆっくりと立ち上がった。

《それ》は、人とはあまりにもかけ離れている姿であった。

光り輝く翼を生やし、周りには漫画なので見るような赤く輝く光の輪がいくつも出現していた。

もうこれは、人ではない。

奶斗は、この時完全に、人ではなくなった。