コメディ・ライト小説(新)
- 未来改変 ( No.18 )
- 日時: 2017/04/04 13:18
- 名前: ラッテ (ID: 5YaOdPeQ)
Re;18 良
奶斗は、穏やかな気分であった。
心地の良い、ベッドの中で寝ているような気分であった。
だが確かに、 とてつもない力が体の中を超スピードで循環しているのが分かった。
奶斗は目を開けた。
今まで見てきた世界と、違って見えた。
明るく、輝いている世界。
大きく、深呼吸をした。
そして、倒すべき相手、まだこの時奶斗は名を知らなかったが、篠の元へ勢いよく飛び込んだ。
篠は、察してしまった。
《死ぬ》
雁夜 篠。この人間が死の恐怖が無かったのは、自分がそうなるわけがない、というよく言えば余裕、悪く言えば自分に自惚れているところがあったからである。
この時、初めて《死ぬ》という事を感じ、それは初めてとも言える恐怖えと変わり、体を支配した。
動かない体。命令を聞かない手。
その時、篠は知った。
「これが、死ぬってやつか。」
動かない、人形と化している篠を、奶斗は思い切り殴った。
篠は勢い良く飛ばされていった。
噴き出した血は、彼が飛んでいったルートを的確に表している。
瓦礫の中で埋もれ、今まで感じたこともない痛みに襲われている篠は、能力を発動せず、微動だにしなかった。
恐怖を感じていた。しかし、笑っていた。
歓喜していたのである。初めて感じる、恐怖に。
人とは恐ろしい生き物である。
限界に達した時、そこで止まらずに、限界を超えてしまう。
恐怖が限界に達した時、彼は覚醒した。
全身で感じているはずの痛みをものともせず、立ち上がった。
そして、味わっていた。恐怖と、痛みを。
トドメを刺そうと向かってきている奶斗の拳を避けようともせず、そのままくらった。
再び篠は建物を貫通しながら吹き飛んだ。
その出血量は凄まじく、並の人間ではとうに死んでいるだろう、という状態になった。
だが、そんなことはどうでも良かった。
今は、この痛みと恐怖を、もっとこの体に刷り込むんだ。
奶斗は人ではなくなっていた。
しかし、それは篠にも当てはまることだったのかもしれない。
三度目、今度こそトドメを刺そうと猛スピードで突進してきた奶斗を今度は篠は止めた。
掌で。
不敵な笑みを浮かべた篠を前に、崩壊していく奶斗の拳。
それを気にせず、残ったもう片方の拳で篠の心臓を貫こうと拳を振りかざした奶斗。
その拳は、確かに心臓を貫いた。
だが、篠は動いた。心臓を貫かれた今でも。
そして、拳を抜けずに動けないでいる奶斗の顔を掴んだ。
結末は、目に見えていた。
人では無いモノ同士の戦いは、最も悲惨な結末を迎えようとしていた。
この時点では。
それから、五十分後。
魁斗は、目を覚ました。