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Re:2 序

天月奶斗は、生まれた時は普通の人間であった。

そんな彼に変化が現れたのは、十六歳の時であった。

いつも通りに過ごしていた。そんなある日のこと。

彼は交通事故にあった。いや、あうべきだった。

赤信号で飛び出した見知らぬ少女を助ける為に飛び出し、トラックに轢かれ、病院に搬送されたが、奶斗は息を引き取った。

筈だった。

彼は再び目を覚ました。そこは、交通事故に遭う前の横断歩道の前だった。

しかも、目の前では自分が助けたはずの見知らぬ少女が赤信号なのにも関わらず飛び出していた。

時間が、巻き戻った。そう、確信せざるを得なかった。

奶斗は再び少女を助けるべく道路に飛び出そうとした。

その瞬間、奶斗以外の時間が止まった。

正確に言えば、奶斗単体の時間も止まっているのだ。時間が動いているのは、唯一、奶斗の『意識』だけだった。

彼の目の前には、白色で書かれた括弧で括られた二つの文字が現れた。

『助ける』『助けない』

彼はこの時、助けようという『意思』を持っていた。その為、自動的に助ける、という手段が選ばれたのである。

『助けない』という文字は消え、『助ける』という文字が更に大きくなり、そして時間の停止は終わった。

見知らぬ少女を突き飛ばし、トラックが目の前まで迫ってきたその瞬間、奶斗は目を閉じた。

そして、目を開けた。そこには、信じられない光景が広がっていた。

トラックが、『倒れていた』のである。

この時、何が自分の身に起こっているのか、奶斗は理解することができなかった。

しかし、彼はこの時から長い時間をかけて、自分が背負ってしまった悲しき宿命と、向き合っていくのであった。




彼は、ある能力を手に入れてしまったのだ。

『自分が死んだ時、世界がリセットされる』能力と、

『未来を変える』能力を。

この力が、彼の運命を、大きく狂わした。