コメディ・ライト小説(新)

未来改変 ( No.29 )
日時: 2017/04/06 20:18
名前: ラッテ (ID: 5YaOdPeQ)

Re;27 家


それぞれの能力オリジン紹介が終わり、朝登の提案により各自寝室で寝る事となった。

時刻はもう午後十時。

朝登の能力オリジンは少し複雑なため、今度実践する機会があった時に紹介すると言った。

雄哉と芽亜は自分達の寝室に割り振られた部屋へ行き、少し睡眠を取ることにした。

部屋は、少し小さかったが、余裕を持って寝れるだけのスペースがあった。

もう誰かが用意してくれたのか、立派なベッドが二つ並べて置かれてあった。

雄哉は思わず白いフカフカなベッドに、飛び込んでしまった。

その気持ち良さでそのまま深い眠りにつけそうだったが、妹の芽亜がこちらに冷たい視線を送っているのに気が付き、急いで気を取り戻した。

「芽亜も寝転がってみなよ。気持ち良いぞ。」

芽亜は言われた通りにベッドに寝転がった。

あまりにも気持ちよかったのか、何も言わずにそのまま眠りについてしまった。

久しぶりだった。しっかりとしたベッドで、しっかりとした睡眠を取るのは。

隣で寝ている芽亜の顔を見て、雄哉は少し微笑んだ。

久しぶりに、安心している芽亜の寝顔を見た。

始めて芽亜が家に来て、始めて同じ布団で寝た時に見た顔と、どこか同じようなものを感じていた。

そのような事を考えていたら、雄哉もウトウトしてきてしまった。

雄哉は横になり、そのまま目を瞑った。

今日は色々な事があった。

いきなり謎の男に襲撃されて、真国会に連れてこられ、ナンバーズの一員になって…。

雄哉は、これからの毎日に不安を感じていたが、それを掻き消すほどの、安心があった。

同じ志を持つ仲間が出来た。同じ目的を果たそうとする仲間が出来た。

彼等を、《家族》と思っても良いだろうか。

この場所を、《家》としても良いだろうか。

雄哉は、そして恐らく芽亜も、この場所を、《家》だと思っているだろう。






良いのだ。人は皆、愛に飢えている。

その欲求が満たされなくなった時、人は孤独を感じる。

今まで雄哉と芽亜は長い時間の間二人だけで生きてきた。

二人だからこそ乗り越えられたが、もし一人だけだったら孤独に押し潰されて耐えられなくなっていただろう。

人には、《家族》が必要だ。愛を確認することのできる、《家》が必要だ。

それに気づく事が出来るのは、悲しいが孤独を味わった人間だけだ。

人は、自分に注がれている愛を知らない。だから、当たり前の日常を大切にしていない。

失ってからは遅いのだ。それなのに、気付こうとしない。

それどころか、その愛を踏みにじる人間までいる。

人という生物は、愛ありきで成り立っている。

それに気づく事が出来るのは、本当に孤独を味わってからしか不可能なのだろうか。

悲しい生き物だ、人というものは。

だから、滅ぼそうとする。

人は人同士、傷つけあう。

《愛》に気付いていないから。

人と人の対立は、いつまでも続いていく。

いつまでも。





「…了解しました、雁夜さん。」

白神 朝登は、そう言って電話を切った。

指令が来た。

朝登は、来るべき戦闘に備えて早く寝るべきだ、と判断し寝室へと急いだ。

ついに明日、ナンバーズ始めての戦闘が行われる。

彼等は、戦う。

戦う相手は、《裏政府の人間》だ。





「どうだ?大丈夫そうか?」

電話を終えた篠に、廉が話しかけた。

「それはどっちがだ?」

「両方とも、だ。」

篠はため息をつき、話し出した。

「まず、明日の戦闘の件に関しては、何も問題ない。あいつらの事だ。しっかりと任務こなして帰ってくるだろう。」

それを聞いた廉は、安心した。

いくらクリエイターを集めたとはいえ、始めての戦闘にはやはり不安が募る。

最強と言っても過言ではないこの男が言うのなら安心だ、と廉は思った。

「んで、もう一つの方は、少し問題ありだ。」

もう一つの方。それが意味するのは、篠の体調だ。

「やはり前回の戦闘が響いているのか?使徒能力ゴッドメッセンジャーはやはり強かったか。」

「ま、往生際が悪かっただけで大して苦戦はしなかったがな。だが、心臓一つ無駄にしちまったがな。」

「それで得たものが大きかったから良いだろう。」

篠は今睡魔に襲われているので、早く寝室に行って寝たいと思っていた。

早く話を切り上げようとする篠に、廉は最後、といって一つ質問した。

「問題ないのか?例の彼は。」

すると、篠はニヤリとして答えた。

「大丈夫だ。お前らの期待通りになってるよ。」

「…そうか。それではおやすみ、雁夜君。」

そう言って廉は去っていった。

前回の戦いで得たもの。

篠にとってもかなり大きなものだったが、それ以上にこの団体に、いや、これからの世界にとってもかなり大きなものだ。

それが、篠の理想の世界へと変える、《最後のピース》だったのだから。

「しっかりと働いてもらうぞぉ、オリジナルゥ!!」





男は、静かに時を待っていた。

自分達の目的を達成させるために。

そして今、時は来た。

男は立ち上がり、四人の仲間に声をかけた。

「行くぞ。」

戦いが今、始まろうとしていた。

彼等の目的は二つ。

一つは、現政府を滅ぼす事。彼等は裏政府の人間。滅ぼそうとするのも、当然の事。

もう一つは、失われた仲間を取り戻す事。

「待ってろ、奶斗。」

彼等をまとめている男、黒霧 魁斗はそう言って、歩き出した。




今、戦いが、始まる。



第4章 終わり