コメディ・ライト小説(新)

未来改変 ( No.31 )
日時: 2017/04/08 09:00
名前: ラッテ (ID: 5YaOdPeQ)

Re;29 戦


黒マントで全身を覆った三人組の内の一人が、ナンバーズに話しかけた。

その声は、とても低く、聞いていると《恐怖》すら覚えるのでは無いか、という声だった。

「あなた達は何者ですか?この路地裏には、あまり人が来ないのですが‥。」

誰も、答えなかった。誰も、答えられなかった。

突然の状況に、誰一人としてついていけなかったからだ。

いや、一人だけいる。

この状況についてきている一人の男が。

「ただの通りすがりですよ。あなた達こそ、どうされたんですか?」

黒マントの男の声とは違い、落ち着くような声。

聞いていると、いつの間にか周りが花畑に変わっていて、気持ちが良くなっていくような、そんな声が聞こえた。

声の主は、言うまでもなく朝登だった。

落ち着いた態度で、そう返した。

黒マントの男は、一息ついて再び話し始めた。

「我々は、この路地裏を溜まり場としているのですよ。人が来ないですからね。普段話せないような話もここでは出来てしまうのですよ。今日も、今から全員で集合する予定です。時間が惜しいので、行かせてもらいますね。」

男はそう言って、残りの二人を連れてどこかへ行ってしまった。

しばらく沈黙が流れていたが、それを破ったのは、いつもより確かに元気が無い声を発した、和貴だった。

「あ、朝登さん。なんで追わなかったんですか?」

その問いに対して、朝登は逆に投げかけるような体で返した。

「いや、少しおかしいと思ってね。確かにこんなところに人は来ない。ここを溜まり場にする、という彼等の意見も最もだ。しかし、彼に彼等が裏政府の人間だったとして、誰が彼等を目撃したんだ?人が全く来ない、この路地裏で。」

再び沈黙が流れた。

今度は、恐怖と不安からによる沈黙である。

何故?その気持ちが、沈黙を流した。

それを破ったのは、今度は玲子だった。

「この路地裏に入っていくところを、目撃したんじゃないんですか?」

「それは有り得ない。さっきも見ただろう?彼等はいきなり出現した。おそらく、佐竹さんの様な能力オリジンを持った人間が裏政府にもいるんだ。だから、彼等が路地裏に入っていく様な場面自体が、そもそも存在しないんだ。」

誰もその謎を解明できなかった。

人は、未解決の謎ができた時、曖昧に流しておくか、自分の憶測で決めつけるかのどちらかの手段を取る。

今回の場合、朝登は後者の手段を選んだ。

「この路地裏自体がおかしいんだ。僕らはこの謎の路地裏に、来てしまった。もう、ここは敵の独壇場なんだ。」

その考えは、あながち間違いではなかった。

彼等を遠くから見つめる男が一人、いた。

彼はクスッと笑い、電話をかけた。

「始めるぞ。」

朝登達は、敵の罠にまんまとはまってしまったのだ。