コメディ・ライト小説(新)
- 未来改変 ( No.32 )
- 日時: 2017/04/08 09:42
- 名前: ラッテ (ID: 5YaOdPeQ)
Re;30 離
リーダーからの指令を受けた黒マントの人間達は、、当初の予定通りバラバラに分かれて、ナンバーズを囲む様になる様にした。
そして、全員が配置についた時、再び指令は来た。
「いけ。」
朝登達の前に、黒マントの人間は再び現れた。
しかも、今度は四人だった。さらに、囲まれてしまっている。
朝登の読みが当たり、ナンバーズは緊張に包まれた。
どうすればいいか分からず、戸惑っている雄哉達と、どう命令をすべきか迷っている朝登。
黒マントの集団は、あらかじめ作戦を練っていた。
しかし、ナンバーズは作戦をたてなかった。
相手がどういう人間なのかも知らず、地形がどういうところかも知らなかったからだ。
だが、それは相手にも当てはまること。
黒マントの集団は、どうしてこんなにも動けるのか、朝登は不思議で仕方がなかった。
それも当然。朝登は知らない。
黒マントの集団のリーダー、黒霧 魁斗の能力を。
「みんな包囲ご苦労。今ナンバーズ全員の能力を視ている所だ。あと少し待っていてくれ。」
電話より機能は劣るが、便利性に優れる無線で、魁斗は仲間全員に伝えた。
あと少しで全員の能力が判明する、という所で、相手は動いた。
動いたのは、和貴だった。
「いつまでも相手に囲まれてちゃダメだ!一人でも崩さないと…。」
そう言って和貴は一人の黒マントに向かっていった。
赤髪の男が迫って来てどうするか迷っている彼女のもとに、魁斗は命令した。
「そいつの能力はもう視終わっている。美夏は、そいつを担当してくれ。」
美夏、と呼ばれる彼女は、了解、と言って赤髪の男に触れた。
「悪いけど、場所を変えるわよ。」
「何…?」
和貴がどういう事かを尋ねた時にはもう遅く、その場から二人は消えていた。
雄哉と芽亜、玲子は何が起こったかを理解できていなかったが、朝登は理解していた。
今消えた黒マントの人間が、玲子に似た能力を持っていたのだ、と確信した。
この時点で、朝登が一番警戒していた能力者が消えた。
朝登は、三人に命令した。
「僕が二人を相手する!雄哉くんと芽亜ちゃんは、残り一人と戦ってくれ!玲子さんは、二人のアシストを頼む!」
困惑していた三人は、ようやく落ち着いた。
《命令》が来た。この事が、三人を落ち着かせたのだ。
「了解!!」
三人は、口を揃えてそう言った。
その様子を視ていた魁斗が、指令を送った。
「全員の能力が判明した。あの白髪男は厄介だが、残りの三人もなかなか手強い。三人のうち一人が、瞬間移動を持っている。だから、凰牙があの三人を倒してくれ。彩都と絢で、白髪男を倒せ。」
「了解。」
凰牙と呼ばれた大きな男は、三人の元へ向かって行った。
凰牙は、さっき朝登達と出会った時に話した、低い声の持ち主である。
「戦おうか、若者達よ。」
残った二人は、こちらへ歩み寄っている朝登を見て、不満を持った。
いや、正式にいうと絢と呼ばれた少女が、不満を持ったのだ。
「最悪〜。めっちゃ弱そうな男じゃん!あ〜、どうせなら私の所にあの赤髪がこればよかったのに〜。」
愚痴を言っている彼女に、彩都と呼ばれた男が、声をかけた。
「まあ、いいじゃないか。この男を倒して、さっさと他のやつのところ行こう。横取りしてやろうよ。」
「ん〜、ま、そだね。じゃ、さっさと倒そっか!」
そう言って、絢は黒マントを取った。
見た目からすると、女子高生のようだった。茶色の長い髪を、後ろで一回だけ結んで後は放っておいているため、髪が広がっていた。
帽子をかぶっていて、服はいかにも休日中の女子高生、という感じだった。
拳を構えた絢は、朝登に向かって言った。
「てな訳だから、さっさと倒させてもらうよ、貧弱男さん。」
それを聞いていた彩都が、ブフッと吹き出した。
何がおかしいのか、と振り返った絢に、彩都はこう返した。
「僕に初めて会った時もそんなこと言ってましたよね、って思い出しちゃって。」
そう言いながら、彩都も黒マントを取った。
銀髪で、セットされている髪。きちっとした服装をしていて、いかにもイケメンという感じだった。しかし、確かに彼からは貧弱そうなイメージがどうしても生まれてしまう。
まあ、そんなことはどうでもいいのだが。
戦闘態勢に入った二人を前にして、朝登は威勢良く言った。
「意気込んでいる最中悪いのですが、勝つのは僕です。」
それを聞いた絢が、今までもずっとイライラしていたが、遂に怒ったのか可愛い顔を険しくして言った。
その声には、紛れも無い殺気が含まれていた。
「ほざくのも大概にしとけよ。私を舐めやがって。」
彩都も、絢ほどには殺気を放っていないが、先ほどまでの軽快な声とは違う、低く男らしさが増した声で、言った。
「春野ちゃん、言い過ぎですよ。どうせ勝つのは僕たちです。」
朝登も、今までの気持ちを改めて、集中して言った。
「グダグダ言ってても終わりませんし、早く戦いましょうか。」
そう言って、朝登は何も無いところから剣を取り出して、構えた。
白神 朝登。能力名・神器創生。
神器を作り出し、戦う能力。
神器は、いくつも種類があり、その時により使い分ける。
今朝登が構えている剣の名は、《イリュージョンソード》。
通常の剣とは、少し違う光る剣。
「行きますよ。」
朝登は、二人に向かって走り出した。
その様子を遠くから見ていた魁斗は、ゆっくり微笑んだ。
安心したかのようだった。
魁斗は、路地裏から三キロメートルはあるビルの屋上から一連の流れを視ていた。
今まで立っていたが、ゆっくりと腰を下ろした。
高いところで感じる風というのは、地上で感じる風とは違う心地よさがある。
魁斗はそのまま寝転がり、目を閉じた。
今は、戦いが終わるのを待とう。それまでは、この風の気持ちよさを満喫していよう。
魁斗のその判断は、正しかった。
これから、戦いは長く続く。
その戦いの決着がつくまで、彼は《待つ》事にしたのだ。
忘れてはいけない。戦いの先に待っているのは、《敵》なのかもしれない、という事を。