コメディ・ライト小説(新)

未来改変 ( No.36 )
日時: 2017/04/09 08:32
名前: ラッテ (ID: 5YaOdPeQ)

Re;33 加


雄哉は、今までに味わったことの無い不思議な感覚に襲われていた。

それは、決して嫌な感覚では無かった。

あまりにも心地が良すぎて、逆におかしな気分になってしまいそうなのだ。

そんな気分の中でも、怒りだけは忘れていなかった。

妹を傷つけた、倒すべき相手への怒りを、忘れてなどいなかった。

雄哉は、震えている凰牙を睨みつけた。

その瞬間。雄哉の体は人間とは思えない程の速度で前進した。

凰牙は、ただ見ているだけしかできなかった。

体を動かすことが、出来なかった。恐怖により、体が言う事を聞かなかったのだ。

解読不能の言語で何かを話している雄哉の事など、考える事すら出来なかった。

《恐怖》。《圧倒的恐怖》。

人は戦う事を放棄した時、初めて敗北する。

それは即ち、恐怖に勝てなかった時、人は敗北するという事を意味している。

凰牙は、負けた。

人として。





謎の頭痛に襲われて、頭を抱え込んでいる朝登。

彩都と絢は、今しかないと判断して、朝登を襲った。

朝登を指示通り《拘束》しようと近づいたが、その時異変は起きた。

朝登の体にも、光が発生した。

白く光る、眩い光。赤く光る、光の輪。

そして、今まで以上に透き通った白い瞳で、自分を捉えようとした二人を、睨みつけた。





それから、三十分後。

路地裏には、誰も立っていなかった。

全員、地面に伏せ、倒れていた。

戦いの結果は、引き分けかの様に思えた。

だが、勝者は存在した。

この勝負は、黒霧 魁斗の勝利で終わった。

取り戻したのだから。

《天月 奶斗》を。

倒れている《白神 朝登》を抱え、その場から去ろうとした魁斗。

この時、魁斗は戦いは終わったと思っていた。

和貴と空間移動使いの世良の戦いも、引き分けで終わっていた。

しかし、敵は残っていた。

立ち去ろうとした魁斗の前に現れたのは、かつての宿敵、雁夜 篠だった。

「そいつをどうするつもりだ?黒霧。」




この時、ようやく世界は結末を迎えた。

奶斗が、篠との戦闘で設定した、世界が来たのだ。

これからこの世界は、加速する。

《最後》へと。



第5章 終わり