コメディ・ライト小説(新)

未来改変 ( No.4 )
日時: 2017/03/26 11:52
名前: ラッテ (ID: 5YaOdPeQ)

Re;4 廃

傘など、持っていない。当然だ。傘を作る、人間がいないのだから。

雨に打たれながら、奶斗は歩いた。

今歩いている所が、元はどういう場所だったのか、彼は知らない。

廃墟と化した家らしき物体が無数にも並んでいる。

彼がいた場所も、そのうちの一つ。

どうしてこの場所にいるのか、どのような選択肢を選んでここに来たのか。

思い返すのも、億劫だった。

彼は、歩いた。

何も考えずに、ひたすら歩いた。

相変わらず、雨は煩い。

聞き飽きた、この世界の音楽。この音は、この荒廃した世界に相応しいのかもしれない。

目の前には、ひたすら物体が並んでいる。

もう、自分がどの物体に潜んでいたのかすら、分からなくなってしまった。

もう、戻ろうか。そう考えた時、彼の時間は止まった。

彼は、驚いた。そして、感激した。

あれだけ煩かった雨の音は、止まった。

久しぶりの、この感触。

彼の目の前には、二つの白い文字が現れた。

『戻る』『進む』

今までに無い、選択肢。

彼は、『進む』を選んだ。

『戻る』の文字は消え、『進む』の文字が巨大化して体内に入り込んだ。

そして、時間の停止は終わった。

再び聴こえた煩い雨の音。しかし、何故か今まで聞き飽きていた雨の音が、新たな音に聞こえて仕方がなかった。

目の前には何も無い。

だが、進む。彼は、進む。

世界を、変える為。世界を、戻す為。

未来を、変える為に。