コメディ・ライト小説(新)
- 未来改変 ( No.8 )
- 日時: 2017/03/31 13:04
- 名前: ラッテ (ID: 5YaOdPeQ)
Re;8 黒
そこからの奶斗は早かった。
昔同級生だったというトラックの運転手の話から、黒桐魁斗の居場所を割り当てた。
今、この世界では、黒桐魁斗は働いている。
《探偵》として。
あとは探偵事務所へ向かうだけ。
奶斗は、ひたすら走った。
今回の場合は、フューチャーを発現しなくても、事務所へ向かう事は出来ただろう。
しかし、奶斗は今まで繰り返してきた人生の中で、自らの意思を操作して、意図的にフューチャーを発現させる事が可能になっていた。
レインボーキックを纏い、事務所へと向かった。
周りの人間に、不思議がられるのでは無いか?
その点は、大丈夫である。
フューチャーの内の一つ、《オールステレス》が、発動しているからである。
奶斗の分岐点の中には、どうしても周りの人間に見られてはいけない状況になるものも多々あった。
そういう場合に発動するのが、このオールステレスである。
周りの人間から見られないようになる。
しかし、あくまで《見えなくなる》だけである。
人間の視界には必ず死界がある。
オールステレスは、人間の死界から出来るだけ外れるようになっているだけなのだ。
だから当然、誰かに触れられると、死界から外れていた姿が視界に入り、姿は丸見えになってしまう。
使い勝手のいい力では無いのだ。
《黒桐探偵事務所》
黒い文字で大きな看板に書かれていたので、いとも簡単に発見する事ができた。
郊外の商店街の端にひっそりと建っている割には、堂々とした看板だ。
そう思いながらも、未来を変えるために奶斗は中へ入った。
選択肢が現れたが、一瞬で《入る》に設定された。
やはり、黒桐魁斗は強大なキーなのだ。
一階はカフェになっているので、二階建ての建物で残っているのはあと二階だけ。
階段を上がり、インターホンを鳴らした。
すると、中から入れ、という言葉が聞こえてきた。
リセット直前に聞いた、あの声と同じ声。
奶斗は、勢いよく扉を開けた。
中は綺麗に整理されていた。
いや。ソファーにテーブル、冷蔵庫にテレビ。あと洗濯機。これだけしか家具は中に存在していなかった。
今まで見たことの無いあまりにも綺麗すぎる内装を見て感想が出て来ずにただ唖然としている奶斗の前に、スーツを着た黒桐魁斗が現れた。
そして、言った。
「待っていた。哀しき少年、天月奶斗。」