コメディ・ライト小説(新)

Re: 恋芽生え、愛が咲く。〜短篇集〜 ( No.1 )
日時: 2017/04/01 23:30
名前: 珠紀 (ID: v2e9ZzsT)



『君の存在』



三浦瑞 Tama Miura

石橋拓哉 Takuya Ishibashi



*Start*ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

……あんな思いをするなら、恋愛なんてもうしない……
私はそう誓った。

                  …***…

「綺麗……」

放課後、私は一人で天体の雑誌を見ていた。

星は飽きない。
いろんな色、形…
私は昔から星が大好きだった。

「何?ここのスポット俺と行きたい?勿論、OKですけど」

後ろからムードもなく話しかけてくる男。

「……」

「無視!無視ですかぁっ!さすが俺のタマ!」

うるさい…
本当に。

「誰が『俺の』」

半年前、拓哉が告白してきた。
勿論、断ったのだけれど、拓哉は『諦める』という単語を知らなかった。

「もう、何度も何度も私のところに来ないで。返事は一緒なんだから……」

……あんな思いはもうしたくないの……
私は拓哉に背を向け、歩き出す。

「ちょっ!タマ!待って!一緒に」
「ひとりで帰る」
「待てって!」

グッと腕を掴まれ、振り解こうとしたが力が強い。

「……俺……昔のタマを捨てた男と一緒にされてんの?」
「うるさい!!!!!」

何よ……
男はみんなあっさり裏切るんだから。

「拓哉、モテるんだし、テキトーに彼女作ればいいじゃん……」
「……はあ?おい……だから俺は」

「もういい加減にしてよ……っっ何度も断らせないで!!!!!」

……一瞬……何かを踏み潰した音がした。
そんな顔……させたかったわけじゃないのに……っっ


私は背を向け走り出した。

                 …***…

家についてどんなに時間がたっても拓哉のあの顔が頭から離れない。
傷つけたかったわけじゃない……
ただ私が……怖いだけなの。

ーピロロロンー

着信音がなり、涙を拭いて電話に出る。

「……はい」
「瑞!すぐ来て!!」

友達の千尋からだった。

「拓哉が事故った!!」


事故った……?
嘘。
だってさっき普通に話してて……
何で……

「何で!!」

私はすぐに病院へ駆けつけた。

「拓哉っ!」

病室に入ると、元気にはしゃいでいる拓哉の姿。

「ぇ…」

急に力が抜け、その場に座り込む。

「あ、瑞!」

千尋がそれを支える。

「……拓哉……無事、だったの?」

そう拓哉を見上げた。

「え……ねぇ……この人、誰」

返ってきたのはそんな言葉だった。

「……え?」

病室にいた千尋達がざわつく。

「な、何言ってんの?この子は瑞だよ?記憶喪失?」

千尋が私を立たせながら拓哉に問いかける。

「は?何言ってんの。正常だっつの、千尋だろ?伸之に晴香に志穂、智に向井。パーフェクト♪」

拓哉は私の存在だけ消していた。


もう傷つけたことを謝ることすらできないのだ。

ー次の日

「はよー」

拓哉は擦り傷だけだったらしく、いつもどうり元気に登校していた。
だけど…

「拓哉……瑞のところに来ないね」

半年前に戻っただけ…
それだけ。
千尋の言葉をそう片付けた。

ードンー

「あ、悪い」

ふざけて遊んでいた拓哉が私の机にぶつかる。
と、ひょうしに筆記用具が落ちそうになるのを、拓哉が間一髪で止めた。

「あっぶねー……」
「あ、ありがと。拓哉」
「こっちこそごめん、三浦さん」

……一瞬『三浦』って誰だと思った。

「おーい拓哉っ!」
「おー、今行く!」

目もあわさずに駆け出す彼の背中が、はじめて…




遠いと思った。

━━月日は二カ月経ち、だけど尚、拓哉の記憶は戻らないままだった。

「そういえば……拓哉、彼女できたらしいよ!」
「え!?マジで!?瑞のこと好きだったんじゃないの?」
「瑞の記憶だけ二ヶ月前の事故でなくしたんだって……」

教室にいた女子達の話が耳に入る。

「はぁ?何そのドラマチックなシナリオ……」
「ま、いんじゃない?瑞、相手にしてなかったし」

……拓哉に彼女。
好きだよ、と言う拓哉の顔が頭に浮かんだ。
いつもふざけてたけど、拓哉は私を見てくれてた……

これは……そんな拓哉を傷つけた、罰だ。

いても経ってもいられなくなり、私は『あそこ』へ向かう。

「え!?瑞!?どこ行くの!」
「展望台!!」

拓哉が事故にあう前、話していたパワースポット。
神様、お願いです。どうか。





━━展望台についた私は息を大きく吸う。

「拓哉を返してくださぁああああああああああああああああい!!!!!!!!!!!!」

拓哉から私を消さないでください……

今頃『好き』と気づくなんて。

「声でけぇ」

後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「拓哉」

そこには爆笑している拓哉がいた。

「だっはははっ!おまっ!デカすぎ」

ぽかんと拓哉を見つめる。

「ってかさぁ……何で一人できてんの?あんなに誘ったのに」

『あんなに誘った』って…

「拓哉……記憶」

私がそう言うとバツが悪そうに下を向く。

「あー……ごめんなさい。記憶喪失とか嘘デス」
「はぁ!?」
「いやいやいや!ごめんって!!怒らないで?タマちゃん」
「何……で……」

いつもどうりの拓哉に涙が溢れる。

「何で……嘘なんか……ついたの」
「……俺がタマのこと忘れるわけないじゃん」

抱きしめられて拓哉の香水の香りに包まれる。

「俺に好きって言われることで、タマが傷つくんなら……事故利用してタマを忘れたフリをしてずっと片思いでいいかなぁと思ったんですよ」

ポンポンと背中を叩かれ、わざとらしく敬語で話す拓哉。

「でも、彼女できたって」
「はぁ?誰がそんなこと言ったんだよ」

『俺はタマだけだっつの』
そう拗ねたように呟く彼を愛しく思った。

そっと抱きしめ返す。

私が彼に想いを伝えるのはそう遠くない話。
私が勇気を出して言ったときはちゃんと受けとめてよね…?

*End*ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー