コメディ・ライト小説(新)
- Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.13 )
- 日時: 2017/06/12 00:28
- 名前: Aika (ID: MBdLXTlT)
Episode8:ぬくもり。
カフェで勉強してたらすっかり外は真っ暗になっていた。
「もう遅いし…今日はこの辺までにしとこっか」
志穂が数学の教科書をそう言って閉じる。
わたしと智也も志穂の発言にうなずく。
「そーだな。結構すすんだしな」
「お母さんとかも心配するしねー」
カップに残っていたキャラメルラテを飲みほして
わたしたちはお店を出た。
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「じゃあ、俺はこっちだから」
いつもの交差点のところで。
智也はわたしと、志穂にむかって背中を向けてそう言う。
それから、歩を止めて。
くるりとわたしの方へ視線を合わせて口を開いた。
「あの賭け…マジだから。ちゃんと覚えとけよ」
真剣な声のトーンで念を押すかのようにそう言って
逃げるように智也は去っていった。
そんなに何回も言わなくたって、覚えてるのに―――。
なんてことをボーッとしながら考えていると。
状況の読めていない志穂が質問してきた。
「え?え?何よ、賭けって??」
わたしは、一度ため息をついた。
それから暗闇に染まったいつもの帰り道を歩きながら事の成り行きを志穂に説明をした。
「―――まぁ、そんなわけで。負けたほうは勝ったものの言うことを何でもきくという条件で勝負することになったんだわ」
黙って聞いていた志穂が。
不意に口を開いた。
「桜は…もし、負けたら。ほんとに智也の言うことを何でもきくつもりなの?」
「え?」
それは思いもよらなかった質問だったから。
府抜けた声が口から出てしまった。
「そりゃあ…そういう条件だから。約束は守るつもりだよ?」
「もしもっ…それが―――」
そこで何かを言いかけて。
志穂は困ったかのように言葉を詰まらせていた。
少しの間のあと。
真剣な表情から一転して、急に明るい笑顔で言葉を紡いだ。
「―――ううん、やっぱり何でもない。そういうことなら負けらんないね、テスト」
「うん、ありがと。勝ったらなんか、おごってもらおうかなー!」
「おー!いいじゃーん!ついでにあたしの分もお願いしたいわー」
「志穂は相変わらずちゃっかりしてんなー」
志穂が何を言いかけたのか。
ほんとは、 すごく気にかかるけど。
聞いちゃいけない…そんな気がして。
なんとなく、 このときのわたしは。
その部分に触れることができなかった―――。
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「じゃーね!桜!また明日ー」
「うん!バイバイ」
志穂ともいつもの分かれ道で別れて。
そこから1人の通学路になる。
この辺は人通りも少なくて夜になると月明かりと街灯しかないので少し怖かったりする。
「すっかり、暗くなっちゃったなー。一応、お母さんには連絡したからだいじょーぶだけど…」
歩きながらスマホをしていると。
「ねぇねぇ、君」
後ろから突然声をかけられた。
「えっ…」
振り返ると見知らぬ男の人の集団がいた。人数は3、4人ぐらい。
なんだろう。…すごく嫌な予感がする。
「えっと…なんですか?」
「かわいーね。これからどっか遊びにいかない?」
嫌な予感が的中してしまった。
これは、まずいやつだ。
どうしよう、逃げなきゃ―――。
「おっと。逃がさないよー」
踵を返そうとした瞬間。腕を強く握られてしまった。
「ちょっと!離して―――」
「暴れんじゃねーよ!」
力強い声でそう怒鳴られて。思いっきり平手打ちされた。鈍い音が静かな路上に響き渡る。
平手打ちされた部分を手で押さえて、瞳にじわりと涙が滲む。
―――こわい、 誰か…助けて。
そう思った刹那。
―――ダンッ。
わたしの頬を平手打ちした男の1人が突然、誰かに殴られて。力なくその場に気絶した。
突然のことにわたしは、唖然としてしまった。
「―――オイ…汚い手でコイツに触れてんじゃねーよ」
その声は。
わたしのよく知っている人のもので―――。
世界で一番大好きな、 人。
「なっ…なんだよ、お前!」
殴りかかる残りの男の集団もその人に敵うことなく次々と返り討ちにあっていて。
気がつくと全員、 倒れこんでいた。
―――ずるいなぁ、この人は。
人がせっかく諦めようって頑張っているのに。
なのに。
なんで…こういうときに現れて助けてくれるの?
こんな風に守られたら―――。
ときめいちゃいけないって、分かってても…
ドキドキが止まらなくなるじゃん―――。
「桜!!」
その人は真っ先にわたしのもとに駆け込んできた。
それから、わたしの頬に優しく触れて。
わたしの大好きな、 優しい声で聞いてきた。
「大丈夫か?」
―――駄目だよ、裕樹さん。
こんな風に優しくされたら。
諦めたい気持ちも諦められなくなる―――。
気持ちが溢れそうになって…苦しくなる。
それからしばらくして、我に返ると。
恐怖心がなくなり、安心して。
滲んでいた涙が溢れて。
無意識でわたしは、ボロボロと大粒の涙を流しながらその胸に飛び込んでしまった。
―――「裕樹さんっ…ありがとうっ…助けてくれて…」
涙を流しながら、 そう言うわたしを。
裕樹さんは優しく背中に手をまわして抱き締め返してくれた。
「ったく…あまり俺を心配させてんじゃねぇよ、バカ」
裕樹さんは耳元で小さくそう呟いて。
そのまま、わたしが泣き止むまで抱き締めてくれた。