コメディ・ライト小説(新)
- Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.14 )
- 日時: 2017/05/27 00:35
- 名前: Aika (ID: LpTTulAV)
Episode9:夜風吹く帰り道で。
ひとしきり、泣いて…落ち着いたあと。
街灯だけの暗い夜道を裕樹さんと一緒に歩いた。
隣を歩く裕樹さんの横顔が、なんだか格好よく見えて…心臓の高鳴りが止まらない。
「なんだよ?…俺の顔、なんかついてる?」
まじまじと見すぎたのか。
不思議そうな顔で裕樹さんにそう聞かれてしまった。わたしは、慌てて首を横に振って答える。
「いや、べつに―――…」
その時。
車が後ろから猛スピードでやってきて。
「あぶねっ…」
車道寄りにいたわたしを裕樹さんが勢いよく自分の方へ引き寄せた。
また、裕樹さんと身体が密着して。
心臓がうるさく、鳴り響く。
「あ…あり、がと」
触れられた手が熱い。
―――きっと、 今のわたし…顔赤いんだろうな。
「ったく…気をつけろよな」
ぶっきらぼうにそう言って裕樹さんは手を離す。
離された手が…なんだか名残惜しく感じた。
―――前までは好きでいるだけで、こうして傍にいられるだけで幸せだったのに。
今は…もっと触れてほしいって心のそこで叫んでる気がする。
そんな自分にため息が出た。
嫌だな、恋って―――。
好きになればなるほど…どんどん欲張りになっていく。
そんなことを思いながら裕樹さんの後ろを歩いていると―――。
「お前、 さ…長谷部と付き合ってんの?」
予想もしていなかった裕樹さんからの言葉に。
わたしの思考が停止した。
「え?」
間の抜けた声でそう聞き返してしまった。
長谷部って…智也のこと、だよね?
なんで…裕樹さんがそんな事を気にしてるのかわたしには全く理解できなかった。
「付き合ってないよ…智也はただの友達だから」
そう正直に答えると。
裕樹さんは背を向けたまま表情を見せずに口を開いた。
「ふーん…いつも一緒につるんでるみてーだし、俺はてっきり付き合ってんのかと思った」
その言葉を聞いて。
わたしは、愕然とした。
ただの…興味本意かって、なんとなく確信したから。
今の質問に…わたしに対する恋愛感情なんか微塵もないんだって悟ったから。
「先生は…いないんですか?付き合ってる人とか好きな、人…とか」
―――ずっと聞きたかったけど。聞く勇気がなくて聞けなかったことをわたしは聞いてしまった。
すると、先生の歩がピタリと止まった。
夜風がそよぐ音だけが路上に響いていた。
「―――付き合ってる奴はいねぇけど…好きな女はいるよ」
そう言いきって振り返る。
月明かりに照らされた裕樹さんの顔はいつになく真剣で。
その表情をみて。わたしは、なにも言えなくなる。
沈黙を破るように裕樹さんは続ける。
「―――まぁ、でも。…この想いを伝える気は一生ねぇけどな」
投げやりにそう言いはる裕樹さんに。
わたしは言葉を返す。
「どうして?…好きなら伝えればいいのに―――」
「―――叶わねぇよ」
「え?どう、して…」
即答で帰って来た言葉に。
わたしは唖然とする。
なんで、 叶わないなんて簡単に決めつけるんだろう。そんなの…伝えなきゃ分かんないじゃん。
そう疑問に感じていると裕樹さんがわたしの方へ視線を向けて。
それから小さく笑って再び続けて話す。
「―――好きだって言いたくても…言えないからな」
言葉の意味が理解できなかった。
言いたくても…言えない?
「他の人と付き合ってるとか?ですか?」
そう聞くと。裕樹さんは困ったような顔をしている。違ったのかな。
「あー!俺の話は終わり!大体、なんで教師と生徒で恋ばななんかしてるんだかな」
「いや、裕樹さんが振ってきたんじゃん!」
「え、そうだっけか?」
「うん。それで伝えられない理由はなんですか?」
興味津々にもう一度、そう聞いても。
「だーかーらー!その話は終わりだ。さっさと家帰って勉強しろ!テストなんだろ?」
言われて気づく。
そうだった!テスト勉強しなきゃだった!
「そーだった!ヤバイー!特に現代文ー!」
「あー…お前、中学のときから苦手だったもんなー」
「苦手って言うのもあるけど智也とテスト勝負しててさー…負けたほうは何でも相手の言うこと聞かなきゃなんないんだよねー」
何気なく裕樹さんにそう言うと。
裕樹さんが急に真面目な顔でわたしにむかって言う。
「は?…お前、長谷部とそんな約束してんのか?」
「え…まぁ」
そう言うと。裕樹さんは、大きくため息を吐いた。
「お前って…ほんっと、何も分かってないわ」
「え?え?何よ、急に」
狼狽えていると。
裕樹さんがわたしに人差し指を突きだしてきた。
「―――簡単に、男とそんな約束すんな」
低い声色で…少しだけ機嫌が悪そうな顔でそう言う裕樹さん。
何で、急に不機嫌になったのか分かんないけど。
とりあえずわたしは、頷いて答える。
「…わかった」
そう言うと。裕樹さんがいつもの柔らかい顔に戻った。その顔をみて、わたしはホッとする。
「あ!言っとくけど…今年からうちの学校、赤点とったら補習だから覚悟しとけよー」
「は!?聞いてないんだけど!」
「そりゃあ言ってねぇからなー。お前だけだぞ、今のところ知ってるやつ」
ヤバイよ、現代文赤点常連のわたしにとって滅茶苦茶辛いよ。
てか、これってもう補習確定じゃないのわたし。
わたしがこの世の終わりみたいな思考に走ると。
見かねた裕樹さんが助け船を出してくれた。
「あー…あのさ。俺でよければ教えてやるけど?」
その言葉に。わたしは目を輝かせる。
「ほんとに!?…やった!裕樹さんが教えてくれるなら赤点回避できるかもしんない!」
「オイオイ…大袈裟すぎ…」
「ありがとう、裕樹さん!」
笑顔でお礼を言うと。
裕樹さんは照れたようにそっぽを向く。
「ばーか!そう言うのは赤点回避してから言えよ」
「はいはい」
こういう風にわたしが困ってると。
助けてくれるところとか。
照れ隠しするところとか。素直じゃないところとか。
貴方の色んな表情とか仕草とか…言葉に一つ一つにドキドキして。
そして感じる。
やっぱり、 貴方が大好きだってこと―――。