コメディ・ライト小説(新)
- Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.17 )
- 日時: 2017/06/12 01:35
- 名前: Aika (ID: MBdLXTlT)
Episode12:期待。
言葉にしなければ
心の奥底にある気持ちなんて
相手には何一つ伝わらない―――。
ねぇ、 教えてください。
貴方はわたしのこと、 本当はどう想っていますか―――?
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「はぁ…補習、 やだなー」
―――放課後。
現代文で赤点を取ってしまったわたしは、補習対象者になってしまったため重い足取りで国語準備室へと向かっている。
本当に最悪だ―――。
何が最悪かと言うとクラスで現代文に関して赤点を取ったのはわたしだけだったらしく。
1人で補習を受けるという状況が尚更嫌だった。
しかも。
補習を担当するのは…相田先生。
つまりは、裕樹さんということになる。
それが、 耐えられそうにない。
だって、 今…まともに口聞いてないし。
向こうがなんか、わたしのこと避けてるし。
それなのに。
「2人っきりで…補習とか…マジで勘弁してくれー」
そう呟いて。
今日の1日で何回出たかも分からないぐらい、わたしはため息を大きく吐いた。
――そして。
気がつけば、国語準備室の前―――。
「うだうだしてても仕方ないし。ちゃっちゃとやって、さっさと帰ろ」
やけになって、勢いよく準備室の扉を開けると。
そこにいたのは―――。
「先生―――?」
椅子に座って眠っている裕樹さんの姿―――。
窓は少しだけ開いていて…5月の少しだけ涼しい風が優しく吹いている。
そして、 裕樹さんの黒髪をわずかに揺らしていた。
わたしは、不覚にも。
初めて見る裕樹さんの寝顔に。
少しだけ…ときめいてしまった。
いつもは、眼鏡をかけているのに。
外しているところとか。
読みかけの本を手に持ったまま眠りこけているところとか。
わたしの知らない、違った表情を見つける度に鼓動が高鳴って…ドキドキが止まらない―――。
「疲れ…溜まってたのかな」
わたしには、裕樹さんの仕事内容まではよくわからないけど。テスト明けだし採点の作業で疲れてたのかもしれないなーと、ぼんやりと考えていた。
しばらくの間。
傍によって…気持ち良さそうに眠りこけている裕樹さんを眺めていたら。
―――触れたい。
素直にそう感じてしまった。
「少しぐらいなら…大丈夫、だよね」
わたしは、そっと。
手を伸ばして。
裕樹さんのサラサラの髪に触れて、 優しく撫でた。
―――すると。
バサリッ…。
裕樹さんが手に持っていた本が勢いよく床に落ちたと思ったら。
勢いよく、 腕を捕まれた。
捕まれた腕の方に目をやると―――。
「なに、 してんの?」
そう言って。
裕樹さんは、 寝起きの顔をわたしに向けていた。
眼鏡がないから。
見慣れないその表情に。
また、 心臓がバクバクしてうるさい。
わたしは、 とっさに言い訳をした。
「えっと…その…髪にゴミがついてたから取ろうと思っただけ!」
苦しいかな…と、思いつつもわたしがそう言いきると。
裕樹さんは。
「ふーん…ま、いいや」
1言。そう言ってからわたしの手を離して。
眼鏡をかけて。
机の引き出しから補習プリントを取り出してわたしに手渡した。
それから、対して気にした様子でもなく。
「じゃ、そのプリント全部終わらせたら帰っていいから。分からなかったら聞いて」
淡々とした風にそう言って。
わたしの横に座った。
―――なんだろう。
別に怒ってないのかな―――。
わたしは、シャーペンを走らせて。
渡されたプリントを無言で解き続けた。
だけど。
心の中の奥底では。
裕樹さんが何を考えているのか全く理解できなくって―――。
モヤモヤとした感情が渦巻いていた。
「あのさ―――」
―――不意に。
裕樹さんから、口を開いた。
わたしは、シャーペンを走らせながら。
「ん?なにー?」
耳だけを裕樹さんの方へ傾けた。
すると。
裕樹さんは頬をポリポリとかきながら。
わたしの方へは視線を向けず、こんな質問を投げかけた。
「―――長谷部に…賭けの内容、なんて言われたんだよ?」
途端。
シャーペンを走らせていた手がピタッと止まる。
まぁ、現代文のわたしの点数からきっと賭けに勝ったのは智也だって裕樹さんも薄々感じたんだと思う。
だけど。
なんで。
賭けの内容を裕樹さんが気にするのか。
それがわたしには、分からなかった。
―――わたしがプリントの問題から遠ざけて。顔を上げて裕樹さんの方へ目をやると。
裕樹さんは、目線を合わせてくれず。
うつむいていて、表情はよく見えなかった。
わたしは、正直に打ち明けた。
「―――今度の日曜…デートしたいって言われた」
しばらくの沈黙のあと。
裕樹さんは、か細い声で聞く。
「行くの?…長谷部と」
わたしは、小さく頷いた。
「そりゃあ、約束だし。破るわけにはいかないっしょ」
本音を言えば。
裕樹さんが好きなのに。
他の人とデートに行くのは…気が引けた。
裕樹さんが引き留めてくれたらな―――。
なんていう、夢物語を心のなかで感じていると。
「―――行くなよ」
空耳かと思った。
「え?」
ビックリして。
呆けた顔でそう言うと。
目の前には、 今までに見たことがない
裕樹さんの真剣な顔があった。
「―――なーんて、な。冗談。…デート、楽しんでこいよ」
嬉しい…そう思ったのも束の間で。
すぐさま、裕樹さんはそう付け足したかのように言った。それからいつもみたいにわたしの頭を優しく撫でた。
―――やっぱり、 子供扱いだ。
一瞬だけ。
『行くなよ』
そう言った言葉が。
本音かと思ったのに―――。
もしかしたら、 両思いかもってほんのちょっとだけ期待したのに。
裏切られたみたいで。
わたしにとっては、すごくショックだった―――。