コメディ・ライト小説(新)

Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.18 )
日時: 2017/06/23 18:39
名前: Aika (ID: 4JWV4T54)

Episode13:嘘と本音。





「――――――よしっ。プリントは大方合ってたしこの位なら合格だな。帰っていいぞ」

1時間ぐらい、解くのにかかった何枚ものプリントを机の上で整えながら
裕樹さんはニコッと笑ってそう言った。

わたしはペンケースや教科書を鞄にしまいながら、さっきの言葉を思い出していた。

『―――行くなよ』

裕樹さんは冗談だって笑いながら言った。
だけど、 やっぱりわたしは心の中で納得がいっていなくって。

だって…
あんなに、 切ない瞳をしてたのに?
あれは、 本当に冗談だったって…裕樹さんは言い切れるの??

今すぐにでも貴方の口から聞きたかった、 けど。

聞いてしまえば。








今の関係が壊れるんじゃないかって…思う。









それが
すごくこわい――――。








「―――桜??うつむいて、どうしたんだよ」







気づけば。
すぐ近くに、 わたしをのぞきこむ裕樹さんの心配そうな顔があった。

「具合でも悪いのか??」

わたしは…そっとうつむいていた顔を上げて。
裕樹さんのシャツの裾を軽くつかんで。
すがりつくように、聞いた。
頭では聞くべきじゃないことだって分かってる。
だけど。



もう、 止められない――――。




「―――さっきの言葉は…本当に冗談??」




裕樹さんは、一瞬固まった。
それから一呼吸置いてから口を開く。




「さっきの…言葉って??」




本当は…何のことか、 分かってるくせに―――――。
とぼけようとする裕樹さんにいらだちを感じながら、わたしはもう一度言う。

「……智也と…デートに行くって言ったら、行くなって言ったじゃん」

少しだけ荒っぽい声になったと自分でも思う。
だけど、 わたしは貴方の本音が聞きたくて。
ただそれだけで、この時はいっぱいだった。

「あれはっ…嘘かって聞いてんの!!」

なぜだか、 わたしの瞳は涙でいっぱいになっていた。
どうして、 涙なんか出してるんだわたしは。
ただ、 わたしは裕樹さんの本音が聞きたいだけなのに。
それ以上なんか何も望んでないはずなのに。
なのに。


どうして、 こんなにも辛くって…胸の奥が苦しいの――――??





「―――桜…あの、さ」
「ごめん、 やっぱりいい」




答えようとする裕樹さんの声を遮った。
それからわたしは涙をぬぐってから先生と向き合う。



「今のは…忘れて」
「おいっ…さく―――」

先生のわたしを呼ぶ声も聴かずにわたしは教室の扉を勢いよく閉めて走り去る。
廊下を駆け抜けながらも、 ぬぐってもぬぐいきれない。
とめどなく流れる涙の雨。

わたし、 最低だ。

自分から聞いたのに。
先生の答えも聞かずに逃げるなんて―――。

一気に階段を駆け下りて、 着いたのは下駄箱。
わたしは下駄箱にもたれかかって。
力なくその場にしゃがみこんだ。

髪をかきむしりながら、一人ポツリとつぶやく。

「何がしたいんだ、わたしは…」






情けなさすぎるよ、 ほんとに。





入り口の扉からは。
夕陽の光が差し込んでいた。



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■裕樹side■






桜が出て行った扉の方を。
俺はその場でただ、 呆然と見つめていた。



「泣いてたな、 アイツ」



まぁ、泣かせてしまったのは…俺、なんだけど。



『桜…あの、さ』


あのとき、 俺は無意識で。
桜に、 伝えてしまいそうになった。

自分の心の内に。
秘めていたもの。


途端に。
顔が熱くなって。
恥ずかしくなる。




「あーっ…桜の奴…何、言わそうとしてんだよ!!つーか、なんでいきなりあんな顔して聞いてくんだよ!!まぁ、冗談とか言って嘘ついた俺が悪いんだけどさ…」

だけど。



―――言えるわけない。



窓に映る夕焼け空を見ながら。
ポツリとうそぶいた。



「―――桜が好きだから…長谷部とデートに行くな、 なんて」







その言葉は。














誰にも届くことなく、 消えてしまった――――。