コメディ・ライト小説(新)
- Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.21 )
- 日時: 2017/08/13 23:46
- 名前: Aika (ID: CW8ddSGz)
Episode16:戸惑い。
貴方が向けてくれてた視線に。
わたしは、 何一つ気づいてなんかいなかった―――。
************************************************************
「まだ9時50分かぁ…ちょっと早かったかな」
今日は日曜日。
つまり、 智也と約束していた映画を見に行く日。
―――そうだよ、 単純に友達と遊びにいくだけだし。
深い意味なんかない。
緊張をほぐすためにデート、 という単語は考えずに頭のなかで何度もそう言い返してわたしは、約束した駅前の時計前に向かっている。
「あっ…桜っ!」
時計前の手前までいくと。
智也は既に着いていて待っていたみたいで、 こちらに気づき手を振っていた。
わたしも手を振り替えして小走りで駆け寄る。
「ごめん…待たせちゃったかな?」
「別に。…俺も今来たところだし」
そんな会話をしていてふと、思う。
―――あれ?…これ、カップルの会話っぽくない?
頭をブンブンと横に振って一人で否定する。
いやいや!違う!
普通の友達とでも普通にするよ、こんな会話!多分!
そんなわたしを見て不審そうな顔をしている智也。
「桜ー。どーした?」
「別に!ただ考え事をしていただけだからお構い無く!さぁ、映画館行こう!」
「ああ…。そーだな…行くか」
そう言って。
智也は。
―――自然な流れでわたしの手を握って歩き出す。
わたしは、 そんな予想外の行動にビックリして。
顔を上げて智也を見つめる。
「ちょっ…!なんで、手…!」
言葉にならず、口をパクパクしてると。
智也がぶっきらぼうに言う。
「っ…別にいいだろ。デート、 なんだし?」
「ええっ!!?…そう、だけど」
たしかに。
表向きはデート、 と言うことになってはいるけれど。
でも、 なんていうか。
恥ずかしい。
「賭けに負けたのはお前なんだから、桜は黙って俺の言うこと、聞いてればいいの」
図星を指されて。
それ以上は何も言い返すことができず。
わたしは、 智也の手を握り返した。
心なしか。
智也の頬は…ほんの少しだけ。
赤かった気がした―――。
■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □
「映画の上映時間まで少しだけ時間あるなー。どーするか」
映画のチケットを買ったあと。
智也が腕時計を眺めがらそう口走った。
たしかに上映時間まで30分程度余裕がある。
「そーだなー…志穂と来たときはいつもプリクラ撮ってたけどね」
そんなことを、さらっと言うと。
智也がまた、予想外のことを言い出す。
「じゃあ…俺と撮るか」
「はぁ!??」
思わず裏返った声を出してしまった。
「何だよ、その反応。俺と撮りたくねーのかよ」
「いや…そーいうんじゃないけど!男の子は嫌なんじゃないのかなーって…それに、こういうのは、カップルがすることだと思うし―――」
「あぁ、もう!ごちゃごちゃうるせぇなぁ!ほら、行こうぜ」
わたしの言葉を遮って。
智也がまたわたしの手を握ってゲーセンの方へと足を進めている。
――まぁ、智也が乗り気なら…いっか。
嫌がってるようには見えなかったから。
わたしは、拒まずに着いていくことにした。
■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
「何これ!智也、めっちゃ変な顔!ウケる」
「うっせぇな!桜だってこの写真ひどくね?」
「これは、智也が変なこと言うからでしょーが!」
二人で言い合いながらプリクラの写真に落書きしている。
―――わたし、 最低だ。
先生が好きなのに。
他の男の子と一緒にいて…いま、 楽しいって感じてる。
「おっ!写真、出てきた」
隣で智也が嬉しそうにそう言っていて。
わたしは、何も言わずに写真を取り出してハサミで半分に切る。
「はい、半分は智也の分ね」
笑顔で渡すと。智也も笑い返して。
「うん、 ありがと」
一言。そう言った。
その笑顔に、 不覚にも。
ドキドキしてしまったのは…君には内緒――。