コメディ・ライト小説(新)

Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.26 )
日時: 2017/09/03 18:16
名前: Aika (ID: tDifp7KY)

Episode19:想い、 想われる恋。





『―――俺…ずっと前から桜が好きだ!だから、俺と付き合ってください』


吸い込まれるような…真剣な瞳で智也はわたしに向かってそう告げた。
わたしは、そんな智也のことを直視できなくて。
思わず目を背けてしまった。

それから、 震える声で目を伏せたまま…口を開いた。

「―――本気、 なの?」

智也の気持ちを疑ってるわけじゃない。
だけど…特別可愛いわけでもない、何の取り柄もない自分を好きだって言ってくれていることが嘘みたいで―――。

思わず、 そう聞いてしまった。

おそるおそる、顔をあげると。
そこには、優しく微笑む智也がいて―――。

わたしの質問に答える。



「―――本気に決まってんだろ、 バーカ」



はっきりとそう言われて。
わたしは、戸惑ってしまい。
何も返事ができずにいると。

智也がわたしの頭をポンポンしながら、言う。


「別に今すぐ返事が欲しいわけじゃねぇからさ。ただ、お前に…俺の気持ち知ってもらいたくて言っただけだから気にすんな」


わたしを気遣う智也の優しさに。
複雑な気持ちを抱えてしまった。

―――今まで、 わたしは智也のことをただの友達としてしか見てなかった。
男の子として見たことなんか…一度っきりもない。

だって。




わたしの瞳には…。









裕樹さんしか、 見えていなかったから―――。










「―――ごめん、智也。わたし、好きな人がいるの。ずっとずっと…好きな人がっ…だから」
「―――そんなこと、知ってる」
「え?」


驚きもせずに。
智也はハッキリとそう言った。

なんで…。 誰にも好きな人がいるなんて、言ったことないのに―――。




「―――好きなんだろ?…相田のこと」




わたしの瞳を真っ直ぐに見つめながら、そう言う智也は。少しだけ、 どこか切なそうに見えた。
わたしは、罪悪感を感じながらも。
小さくコクリと頷いた。



「先生だし…何回も諦めようとした。けど、無理だった」

消せなかった―――。
この恋心は。

たとえ、 許されないとしても。

わたしは、 あの人を好きでいたい。



「―――それでもいい」



智也の予想外の言葉に。わたしは、ビックリして目を見開いてしまった。



「お前が相田を本気で想ってるように、俺だってお前に本気で惚れてる。だから、相田のこと…いまはまだ忘れられなくていい。俺がアイツのコトなんか忘れられるぐらいお前を幸せにしてやる」


その言葉に。わたしは、涙が溢れそうになった。
本気で…智也はわたしのことが、 好きなんだ―――。

でも、そんなに想ってるならなおさら―――。



そんな、智也の気持ちを振り回すようなことできるわけない。




「―――だからさ…その上で俺と付き合うこと、考えろよ」




そう言って智也はまた、いつもみたいに。
わたしの髪をくしゃっとした。

もう、何を言っても。
きっと、智也は引き下がらない。
そう思ったからわたしは。


「―――分かった。そこまで、言うなら…考えてみる」


とりあえず、頷いて。そう返事をした。
すると、智也は嬉しそうに笑った。

その笑顔に胸の奥がチクッと痛む。





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「じゃあ、また明日な」
「うん、ここまで送ってくれてありがと。今日は楽しかった」
「おうっ!じゃあな」


わたしのマンションの下で智也とお別れしわたしは、階段を上がっていく。
自分の家の階まで上がると。


―――ドンッ。



勢いよく人とぶつかってしまい、尻餅をついてしまった。




「―――すみません、急いでたもん、で…」

ぶつかった人がそう言って、手を差し出していたから。わたしは、とっさにその手を掴み顔を上げると。そこにいたのは、見知った人物。

「―――せん、せい?」

裕樹さんだった―――。




ここ数日間、まともに視線なんか合わせてなかったから。こんな間近で見るのは久しぶりで―――。

わたしは、なんだか緊張して顔を見れずにいた。




「す、すみません。あの、ありがとうございます」
「別に…俺の方こそ悪かったな。怪我とかしてねぇか?」
「はい、大丈夫です。それじゃ」


二人っきりが耐えられなくて。
わたしは、そそくさと自宅へ向かおうとすると。

途端に。

腕を力強く握られた―――。



まるで、 『行くな』って言ってるみたいに―――。




「―――あの、先生?…なにか」
「―――アイツと…長谷部となんか、あった?」




アイツって…智也のこと、 かな。

もしかして、 顔に出てたのかな―――。




「もしかして…告られた?アイツに―――」




必死に聞いてくる、先生に。
わたしは、何も答えられずにいると。

さらに、握られた腕に力が込められて―――。



「っ…痛ッ」


思わず、そう叫んでしまった。
すると、先生は我にかえって。

「悪いッ…ごめん。俺、何きいてんだろーな。関係ねぇのに。今のは忘れて」

それだけ、捲し立てる様に告げて。
そそくさと、わたしのもとから去っていった。

ポツンとひとり、取り残されたわたしは。
さっきまで握られていた腕をそっと片方の手で支える。
それから、 目頭が熱くなり。
ポロリと涙が頬を伝った。



―――はじめて。




裕樹さんのことを、 怖いと思った。




「ねぇ、先生…わたし、先生のことが分からないよ」




小さい頃からずっと一緒で、近くにいたのに。
なんか、今は。
ずっと遠いところに裕樹さんがいるみたいで―――。



先生は、 なんで。
わたしと智也の関係を気にしてるの―――?

妹として幼馴染みとして、 心配してるの?
それとも―――。






先生の気持ちを知りたいのに。
わたしには、 その一歩が踏み出せなくて―――。





その場で立ち尽くしたままだった―――。