コメディ・ライト小説(新)

Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.27 )
日時: 2017/11/11 22:41
名前: Aika (ID: 9mZpevdx)

Episode20:すれ違う心。





みんながみんな…幸せになれる方法があればいい。
そうしたら…こんなにも傷つくことなんかないのに―――。



■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■


昨日の今日で…なんとなく、智也と顔を合わせるのが気まずかった。
智也と付き合う気なんか、なかったのに。
なのに。


「なんで…考えとく、 なんて無責任な事言っちゃうかな…わたし」



智也のことを…好きか嫌いかで言えば好きだ。
でも、この『好き』は…ひとりの男の子としてじゃない。
単純に友達として好きだってこと―――。

そんなの、 わかってるはずなのに。



あの時の智也の真剣な顔を見ていたら。
なんだか、 気持ちが少しだけ揺れた気がして―――。
気づいたらそんな風に口走っている自分がいた―――。



重たい足取りで教室まで向かっていると。
廊下の隅で裕樹さんが数人の女子生徒に囲まれているのが目に入った。

いつも通りの事なので、その前をスルーして…教室の扉に手を伸ばしたときだった。


「相田先生さー、昨日の夜…駅前で綺麗な女の人と一緒にいましたよね?」


そんな会話が聞こえて。わたしは、とっさに教室の扉を開ける手を止めて。
裕樹さんの方へ慌てて振りかえる。


裕樹さんは、その女子生徒の言葉に。
表情も変えずに返していた。


「人違いだろ。俺、昨日はずっと家にいたし」


ずっと…家にいた?
そんなの、 嘘だ。
だって…わたしは、 知ってる。

昨日…裕樹さんと夕方ごろにマンションの廊下でぶつかったし。
あの時の裕樹さんはかなり慌てた様子で急いでて―――。

まるで、 人を待たせてるみたいな感じだった―――。



「えー!絶対、先生だったよ!あれ、彼女ですよね?」
「彼女だったらめっちゃショックなんだけど!」
「だーかーら、 違うから!」


そう言い捨てて…裕樹さんは、 女子生徒の集団から逃げるように離れていった。


「あ、先生逃げた」
「これから、職員会議なんだよ。お前らにかまってる暇はないの」


女子生徒にそう言い返したあと。
裕樹さんと視線が合って。

わたしは、パッと勢いよくそらして…さっさと教室の扉を開けて入った。

―――わたし、 何を動揺してるんだろう。
裕樹さんに彼女がいようがいまいが…わたしの恋は叶わない。
そんなの、 知ってるはずなのに。



それなのに。




こんなにも、 悲しいのは…どうして?





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「それじゃあ、うちらのクラスの出し物はメイド喫茶に決定しましたー」

ホームルームの時間。
文化祭実行委員の進行のもとクラスの出し物の話し合いをしていて。

結果、メイド喫茶になったみたいだ。


やだなー…できれば、メイドだけは避けたいな。
絶対似合わないし。
あんなヒラヒラの服なんか着たくない。


「じゃあ、準備が中心の裏方の人と衣装係と会計と…あとは本番活躍する厨房係とメイドの子を決めていきたいと思います」


うーん。わたしは、やっぱり裏方がいいな。
文化祭当日は楽できるし。
うん、それでいこう。


心のなかでそんな風に頷いていると。


「桜、お前メイドやれば?」


余計なことを言う男子生徒がいた。
わたしは、ジト目でその男子生徒を見る。
その男子生徒とは昨日、わたしに告白してきた智也だ。

「やるわけないでしょ!そういうのは、可愛い子がやるって相場があるんだから」
「え!桜、メイドやってくれるのー?」

実行委員の女の子が今の会話が聞こえたらしく目を輝かせながら嬉しそうに言ってきた。

「いや、違います違います。わたし、やりたくな――」
「桜、めっちゃメイドがいいって言ってましたー」


スパーンと、智也の頭をおもいっきりひっぱたく。
このバカは何を余計なことを言ってるんだ!

「いってぇな!何すんだよ」
「それは、こっちの台詞だから!頼むから余計なことを言わないでー!」

言い合っていると。
実行委員の女の子が勝手に話を進めていて。

「じゃあ、メイドの一人は智也くんの推薦で桜ってことでいいのかな?」
「え!いや、待って待って――」

否定する前に。

クラスの全員が。


「まぁ、いいんじゃね?」
「そーだねー、桜可愛いもんね」
「似合いそうだよな」


納得をしはじめていて。
わたしは、言葉を失ってしまった―――。


「あ…じゃあ、はい。それでいいです」


もはや、クラスの雰囲気を壊したくないばかりに反論せず引き受けてしまった。
なんか、一気に文化祭が憂鬱になったわ。

「あ!桜がメイドやるならあたしもやりまーす」

その時。 手を挙げた女子がいた。
それは、親友の志穂だった。

「志穂!ありがとう!」
「うん!一緒に頑張ろうね~」

志穂が一緒なら…まぁ、いっか。
そうポジティブに考えることにした。

そんな感じで着々とクラスの人の役割がどんどん決められていった。




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放課後。
わたしは、さっきの文化祭の役割決めについて、余計なことを言った智也に詰め寄る。


「智也!さっきは、よくも余計なことを言ってくれたね!」

そう言うと。智也はため息をついて。
わたしに向き合う。

「なんだよ、まだ怒ってんのかよ」
「当たり前でしょ~。裏方の方が良かったのに最悪」
「いーじゃねーか。メイドだと準備とかねーし、本番だけ活躍すればいいんだぜ?そっちの方が楽じゃん」

わたしは、正論に何も言い返せず。
言葉に詰まっていると。
志穂がやって来て。
会話に加わった。

「まぁまぁ、桜落ち着きなって!智也はただ桜のメイド姿が見たくてあんなこと言ったんだからさ」
「―――えっ」

突然の志穂の言葉に。
わたしは、言葉を失った。

智也は慌てて否定している。


「アホか!そんなわけ、ねーし」
「じゃあ、なんで顔が赤いんですかね?」
「うるせーよ」


わたしがそんな智也を見て。
クスッと笑うと。


「なに、笑ってんだよ」


不機嫌そうにそう呟いた。
わたしは、笑顔のまま。


「いや…なんか、可愛いなーって思っただけ」



そう言うと。
智也はますます顔を赤くして。
ゆでだこみたいになっていた。

その顔がほんとにおかしくって。
わたしと志穂は大声で笑っていた。




「おめぇら、笑うんじゃねぇ!つか、見るな!」
「やっば!写真とりてぇ!」
「とるなー!」




その様子を。




「………………」



裕樹さんが切なげに見ていることなんか知らずに―――。