コメディ・ライト小説(新)

Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.28 )
日時: 2017/11/11 23:39
名前: Aika (ID: 9mZpevdx)

Episode21:迷い道。




好きな人を簡単に忘れられる方法があればいいのに―――。
そしたら、 こんなにも悲しい気持ちになることなんかないのに。



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文化祭の準備は着々と進み―――。
遂に今日は文化祭当日です。


「わぁ!桜、やっぱり可愛い!メイド似合ってんじゃ~ん」

隣でわたしのメイド姿を見て、はしゃぐ志穂。
わたしは、複雑な表情で返す。

「えー…そうかな?志穂の方が可愛いと思うけど」「そんなことないって!あたしなんかよりも桜の方が可愛いよ」

とりあえず、誉めてくれた志穂に笑顔でお礼を言う。それから、わたしはふと気になったことを口走る。

「そういやぁ…今日、志穂の彼氏は文化祭、遊びに来ないの?」

すると。
志穂は明るかった表情から一気に暗い顔になって。
それから。
そっと口を開いた。

「―――それなんだけど、さ。実はあたし…彼氏と別れたんだ」

衝撃の一言に。
わたしは言葉を失った。
そんなわたしに気を使ってか、志穂は明るく笑顔で振る舞う。

「まぁ…最近、すれ違ってばっかしで喧嘩も多かったし!仕方ないっしょ!」

―――ほんとは、辛いのに。
無理に笑う志穂をみて、わたしは胸がチクリと傷んだ。
彼氏と上手くいってないのは…なんとなく、知ってたけど。
そんなに、こじれてたとは思わなかった―――。

「ごめん、わたし…嫌なこと聞いて」
「ううん!黙ってたあたしが悪いんだし桜が謝る必要なんか何もないよ」

志穂の優しさに。
罪悪感が少しだけ和らいだ。
すごいな、志穂は。
辛くても、そんな風に笑顔でいられて―――。


わたしだったら、 きっと…
志穂みたいに強くないから、 泣いてしまうだろうな―――。


「わぁ!智也くん、めっちゃかっこよくない?」
「写メ撮りたい!」


女子のキャーキャー騒ぐ声が聞こえて。
志穂とわたしで声の方を振りかえると。
そこには、 ウェイター姿の…智也がいて。


不覚にも。


その姿に、 一瞬…ドキッとした。




「智也、似合ってんじゃん!いいね、その衣装」

志穂が親指を立てて智也にそう言うと。
智也はにかっと笑って。

「サンキュー!志穂もいいじゃん、それ」
「へいへい、お世辞をどーも」

そんなやり取りをしたあと。
智也はわたしの方へ視線を向けてきた。

目が合って。

なんだか、恥ずかしくなってわたしは視線をそらした。
そんなわたしに構わず。
智也はわたしの元へと近寄ってきて。
耳元でそっと、 ささやいた。


「―――めっちゃ可愛い。すっげぇ似合ってる」


予想外すぎて。
わたしは、とっさに智也から距離を取って。
口をパクパクさせていると。
智也が吹き出した。

「おっまえ…ほんと面白いな。見てて飽きねぇわ」

遊ばれていることにムッとして言い返す。

「からかわないでよ!バカ!」
「悪かったよ。でも、今言ったことは嘘じゃねーから」

そう言って。智也は優しく、また笑った。
その笑顔…ずるいよ。
許したくなるじゃん。

まぁ、 許すんだけどさ。


「そだ、桜!今日の午後1時から、軽音部のライブあるからぜってぇ見にこいよ」
「うん、見に行く。志穂も行くっしょ?」
「おう!智也の晴れ舞台見に行くか~」
「なんだよ、それ。じゃあ、約束だからな」


そう言い残して。
智也はわたしたちの元から離れていった。
智也の後ろ姿を眺めながら。

わたしは…そろそろ自分の気持ちをはっきりさせなくちゃいけない―――。
そう思った。


「―――桜、さ。…智也となんかあったでしょ」
「ひぇっ!??」


突然の志穂のそんな発言に。
わたしは、すっとんきょうな声をあげた。
そんなわたしの反応を見て、志穂は苦笑しながら言葉を続ける。

「あたしが気づいてないとでも思った?…まぁ大方、智也に告られて桜は答えを迷っているってところだろうけどさ」

鋭すぎるよ、志穂。
てか、間違ってないし正解に近いし。

わたしは、何も言わずに頷いた。
志穂はやっぱりかーなんて言いながら、笑っていた。
志穂にはほんと、嘘つけないな。


「―――付き合うの?智也と」


わたしの気持ちを確かめるように。
志穂は聞いてきた。

―――きっと…志穂は見抜いている。
わたしが、 智也を恋愛対象として見ていないことも。今まで、智也の想いに気づいてなかったことも。


わたしは、 志穂の質問に。
窓の外に広がるすみわたる青空を眺めながら、答えた。




「―――正直に言うと…迷ってる。答えを早く出さなきゃって思ってるけど…どうしたらいいのか分かんなくて」


そう言うと。
志穂は優しい顔でそっかとひとこと、言って。
それから遠くの方をみつめながら言葉を紡ぐ。



「―――あたしは、桜がどんな答えを出しても桜の味方だから。…でも、後悔しない道を選びなよ」

志穂の言葉にはどこか、重みがあって。
なんとなく、心にすっと入ってきた。



「うん、ありがと。志穂」


頷いて、お礼を言う。
それからさっきの志穂の言った言葉の意味を…探す。

―――後悔しない道、 か。



瞳を閉じて。
頭に思い浮かぶのは…自分が想いを寄せる人と、自分を想ってくれる人の姿―――。




わたしは、 どっちの道を…選ぶべきなんだろう―――。
文化祭の喧騒のなか。
わたしは、自分の気持ちにそっと向き合っていた―――。