コメディ・ライト小説(新)
- Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.43 )
- 日時: 2018/04/05 03:59
- 名前: Aika (ID: brdCxKVT)
Episode32:歌に込められた想い。
文化祭の喧騒の中―――。
すれ違っていた想いが1つになって、
言葉じゃ言い表せないぐらい…嬉しい気持ちってあったんだなって素直に思った―――。
それと、 同時に―――。
自分のなかに、 決着を着けなければならないことがあることにも気づいた。
「―――あのさ、 裕樹さん」
意を決して。
裕樹さんと向き合う。
裕樹さんは、 優しい目線でわたしを見つめて。
「―――何?」
そう聞き返した。
わたしは、なんとなく裕樹さんの目をみれなくて。
思わず下を向いてしまった。
それから、 そっと口を開いた。
「その…これから、 1人で行きたいところがあるの。だから―――」
「―――分かってるよ」
言い終わる前に。
裕樹さんは、 わたしの言葉の上にそう重ねてきた。
うつむいていた顔をそっとあげると。
顔色ひとつ変わらずに。
さっきと同じ優しい瞳で、 わたしを見つめる裕樹さんがいた。
「―――長谷部のところ、 でしょ?行ってきな」
その言葉に。わたしは。
「うんっ!ありがと、 行ってくる!」
そう言って、 わたしは勢いよく走り出した。
―――もう、 自分の気持ちに逃げない。
先生だからとか、 関係ない。
裕樹さんの気持ちを知った以上、 もう自分の気持ちに嘘はつきたくない。
きちんと、 先生と向き合うために―――。
智也に、 伝えたいことがある。
向かったのは、 智也が軽音部のライブをしている体育館―――。
大勢の人混みのなかを、 必死にかきわけて。
前へ…進むと。
舞台の上には…ちょうど、 智也がいた。
マイクの前に立っている智也が話し始める。
『えーっと…次の歌は…俺がいま、恋をしている人に向けて作詞した曲です』
その言葉に。
体育館の中が一斉にざわめきはじめる。
―――恋をしている、 人。
その言葉だけが、 頭の中で反芻している。
『―――考えて…考えて、 俺が作詞した唄、精一杯歌うんで聞いてください!』
―――絶対に見に来い。
そう言った意味って―――。
『―――聞いてください。 ´´叶わなくても´´』
キーボードの切ないメロディーが流れて。
曲が始まった―――。
―――『君と出会うまで こんな気持ち知らなかった 君と出会うまで誰かを好きになったことなんかなかったから』
その歌の中には。
智也のわたしへの、 想いがたくさん詰まっていた。
『一緒に笑いながら 帰った帰り道
放課後に寄った喫茶店
デートの後ももっと一緒にいたくて連れてった
公園も
鮮明に蘇ってくる君との大切な日々』
歌詞のなかに。
智也と、 過ごした時間がちゃんと入っていて。
わたしの心のなかに響いてくる―――。
―――『俺以外に大切に想う人がいても構わない
たとえ、 叶わない恋と知ってても
好きだから』
自然と、 頬を伝っていく涙―――。
智也の真っ直ぐで、 ストレートな想いがそのまま歌になってて―――。
『言葉じゃ伝えきれない想いを君に聞かせたい。
俺の心のなかにある想いを君に聞かせたい。
だから、 この歌にのせて届けるよ―――』
―――「うん、 届いたよ。 智也の想い――。」
わたしは、 智也の歌声を聴きながら。
静かにそう呟いて、 うなずいた。
智也がどんなに、 わたしを好きなのか――。
痛いぐらいに、 伝わってきた。
だから、 わたしも…その気持ちに真剣に答えるよ。
ありったけの、 今の嘘偽りのない想いを…貴方にきちんと伝えるから。
だから、 聞いてくれますか―――?
このときのわたしは
心のなかで、 静かにそう感じていたんだ―――。