コメディ・ライト小説(新)

Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.44 )
日時: 2018/04/07 00:15
名前: Aika (ID: brdCxKVT)

Episode33:あの時の答え。





軽音部の発表が終わった後―――。

わたしは、 スマホを開いてLINEで文字を打って。
智也を校舎の中庭に呼び出した。

文化祭でにぎわう、 生徒たちの声を聴きながら。
その場に立ち尽くしていると。
しばらくしてから、 智也がわたしのもとへ駆け寄ってきた。


「―――わりぃ…片付けが長引いて」


急いで来たのか、 息は少しだけ上がっていた。


「ううん、 大丈夫だよ」


わたしは、 首を横に振りながらそう答えた。

智也が遅れて来てくれたことには
少しだけ感謝しているのも本音だった。

言葉の整理をする時間が、 もらえたから―――。


「―――それで…話したいことって何?」


―――ドクンッ…。

鼓動が大きく鳴り響いた。

顔を見上げると、 真剣な表情で彼はわたしを見つめている。
中庭の新緑に染まっている木々がそっと揺れた。

わたしは、 唾を飲み込んで。
一呼吸置いてから、 言葉を紡いだ。


「―――こないだの、 告白の返事…いま、聞いてもらってもいいかな?」


そう問いかけると。
智也は何も言わずにゆっくりと首を縦に振った。

それを確認して。

わたしは、 瞳を閉じながら先程の智也の歌っている姿を思い浮かべる。


「智也の歌…聞いたよ。歌の中にわたしへの想いがたくさん詰まってて…智也の気持ちが痛いほど伝わってくる、 そんな歌だった」


智也は何も言わず、 ただわたしの言葉だけを聞いていた。
わたしは、 それに構わずに。
自分の伝えたいことを全部…言葉にする。


「――――だけど、 ごめん。わたしは、 その智也の気持ちには答えられない」



智也が、 本気で…わたしを好きだからこそ。
わたしも、 自分の気持ちに嘘をつかずに
正直に答えを出す―――。



「―――わたしは…裕樹さんのことだけしか、見えない。だから…ごめん」




少しの沈黙のあと。



智也がゆっくりと口を開いた。




「――――やっぱり…アイツが好きなんだな、 お前は」



寂しいような、 切ないような表情でそう言って。
智也はわたしを見つめる。


わたしは、 その言葉に。



ゆっくりと頷いた。




智也は、 それから優しく笑って。
わたしの頭をそっと撫でた。




「―――わかった。…ごめんな、困らせて」




そんな智也の優しさに。
涙がこぼれた。




すると、 智也が焦ったような顔をしながら言う。




「バカ…泣くなよ。お前は何も悪くねぇんだから」




「だって…」





フラれた相手に。
そんな優しい言い方ができる智也に。
わたしは、罪悪感の気持ちでいっぱいで―――。

涙が止まらなかった―――。





「―――ごめんっ…ごめんね、智也」
「だーかーらっ…分かったから、 もう謝るな」
「でもっ…」



なおも、 謝ろうとするわたしに。
智也は提案をする。



「―――じゃあ…ほんとに悪いと思ってるなら、俺からのお願い!」
「な、 何?」
「―――――これからも、 告白する前みたいに…友達として接してくれない?」





そう言ってから、 智也はわたしにいつもの
悪戯っぽい笑顔を見せた。





その笑顔に向かって。
わたしも、 優しく微笑みながら。





「―――うん、 分かった」






小さくうなずいて。
そう返すと。





「うんっ!それでよし!この話は終わりな!」





大きな声でそう言って。




「そろそろ、 後夜祭だし。行こうぜ」




わたしの手を引っ張って中庭から連れ出す。





智也の大きな背中を眺めながら。






――――「わたしを…好きになってくれて…ありがとう」







そう小さくお礼を言った。








「ん?…何か言った?」








きっと、 文化祭の喧騒に紛れて
今の言葉は消えてしまったんだろう。

智也が振り返って、 そう聞いてきた。

わたしは、 小さく笑って―――。





「ううん、 何でもない」





そう返した。






智也はさして、気にした様子もなく。







「―――ふーん、 まぁいいけどさ」






そう言って、また前を向いた。





だけど。






チラッと少しだけ見えた、 智也の頬は。
赤く…染まっていて――――。






聞こえたくせに、 わざとそう聞いてきた君がなんだか可愛いと思ってしまった―――。






「な~に、にやついてんだよ」
「別に」





なんて思ったことは、 君には内緒―――。