コメディ・ライト小説(新)

Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.45 )
日時: 2018/04/15 23:33
名前: Aika (ID: vstNT7v3)

Episode34:花火にこめた願い。




後夜祭―――。


わたしの学校では、 後夜祭は花火があがる。
だからなのか、 後夜祭がきっかけで告白する人も多くて。
カップルが増えるという現象が毎年起こっていたりする。



すっかり薄暗くなっている空を見て。
わたしは、 ポツリと呟いた。



「―――花火、 か」


本音を言えば。
打ちあがる花火を…裕樹さんと見れたらどんなに幸せだろう―――。


そんな叶いもしない願いを心の奥底で思いながら、わたしは校庭に立ち尽くしていた。


両思いになれただけで、 充分に幸せなはずなのに。
なんで―――。



こんなにも、 欲張りになってるのかな―――。



「―――桜?…なに、暗い顔してんだよ」



隣に立っていた智也に
不意にそう言われた。
そんなに、 顔に出てたのかな…わたし。


「ごめん…なんでもないから」
「―――また、アイツのこと…考えてた?」


慌てて言い繕った言葉を智也に遮られた。
わたしは、智也の方に顔を向けると。
そこには、 切ない…智也の顔があって―――。

わたしは、 何も言えなくなってしまった。



「―――お前…分かりやすすぎ」


そう告げて。
不貞腐れたように智也はそっぽを向けた。

わたしは、 目を伏せて下を向く。


―――智也には、 わたしの考えていることなんかお見通し…なんだな。


智也じゃなくて…先生に伝わればいいのに。
そう思ったわたしは、 酷いと自分でも思う。


だけど。



それだけ…わたしは




君のことが―――。





―――「桜ッ!!」





瞬間―――。
名前を勢いよく呼ばれて。
手を捕まれて、 引っ張られた―――。



「―――わりぃっ!長谷部!コイツ、借りる」
「はぁ!?」


連れ出してくれたのは。
他の誰でもない、 わたしの大好きな…





大切な、 ひと。




「―――裕樹さん!いきなり、 なに」
「―――花火!一緒に見よう!」




言いかけた言葉の上に重なったのは。
わたしが、 叶いもしない絵空事だと思っていたこと―――。



「俺…めっちゃ良い場所知ってるから、着いてきて」


嬉しくて、 思わず涙が溢れ出す。
その言葉に大きく頷いた―――。



「うん」




繋いだ手は、 大きくて暖かかった。





**********************************************************




着いたのは屋上―――。


「いいの?屋上なんか入っちゃって」
「いいんだよ、 俺…先生だから」
「職権乱用じゃん、それ」
「うっせー」


他愛のない、 いつもの言い合いにそっと笑みがこぼれる。
やっぱり、 裕樹さんといると楽しい―――。



瞬間―――。



―――バァンッ。



大きな音を立てて、 花火が上がった。




「わぁ…綺麗」



そんな声をもらすと。
満足そうに隣で裕樹さんが笑っていた。


「だろ?…夜風も気持ちいいし、良いところだろ?」
「うん!…ありがとう」


―――そのとき。





不意に、 裕樹さんが指をからませて。
手を繋ぐ―――。


思いもしなかったことに、わたしの鼓動は大きく高鳴る。


「え?え?…どうし―――」


混乱していると。
裕樹さんが耳元でそっと。






「―――好きだ」






そう言葉にした―――。



その言葉に、 わたしはまた恥ずかしくなって。
顔をうつむかせてしまう。





「―――わたしも、 好き」





ボソッと小さな声でそう言うと。




裕樹さんは、 意地悪そうな笑みを浮かべて。





「え~?なに?…花火の音で聞こえなかったわ」
「はぁ!?嘘だ!絶対、聞こえてたでしょ!」
「嘘つかねぇし。俺、正直者だから」



裕樹さんのからかう様子にイラッとしながらも。
わたしも、裕樹さんみたいに耳元に口を近づけて。




「―――好きって言ったの!」





大きな声でハッキリとそう言った。





すると―――。





花火の明かりに照らされて。
裕樹さんが、 嬉しそうに笑って―――。




「―――よくできました」




そう言った―――。




やっぱり、 子供扱いされてるみたいだ。




そう思ったけど、 裕樹さんの笑った顔をみたら
さっきの言葉に嘘はないってことが分かって―――。




心のなかが、満たされた感じがした―――。




ずーっと、 裕樹さんと
こうして隣にいられたらいいのに―――。





そんな願い事をわたしは、 暗い夜空に咲く花火にこめた―――。