コメディ・ライト小説(新)

Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.47 )
日時: 2018/08/19 20:53
名前: Aika (ID: hoxlJQ3C)

Episode36:夏の夜、 秘めた感情。




夏祭り当日―――。

「やっばー…支度に時間かかっちゃった」

履き慣れない下駄にいらだちを感じながら
小走りで待ち合わせ場所まで向かう。

少し遅くなりそうだな―――。

なんてことを思いながら急ぎ足で向かっていると。

「―――桜?」

背中から声をかけられて振り返ると。
私服姿の智也がいた。

「智也!やっほー!」

なるべく、気まずくならないようにいつも通りな感じで言葉をかわす。
すると、智也も優しく笑って返してくれた。

「おー…なんか、急いでんなー」
「いやー…遅刻してみんなを待たせたら申し訳ないと思って…あ!でも、智也がまだここにいるなら、大丈夫かな?」

沈黙になるのが嫌で捲し立てるように言葉を並べた。

智也はそんなわたしに対して、気にした様子もなく携帯を見ながら言葉を並べる。

「あー…志穂と先生がもう待ってるっぽい」
「え!嘘!じゃあ、急がなきゃ―――」

走り出そうとした瞬間。
智也がわたしの手を握って引きとめる。

「バカ。そんな格好で走ったら危ねーだろが。あの二人には俺がLINEしといたから…ゆっくり行こうぜー」

握られた手が…暖かくて…不覚にもドキッとした。

智也はそう言い終えたあと、すぐにわたしの手を離した。それから、わたしに背中を向けて先に歩き出す。
その後ろをわたしも、黙って着いていく―――。


「―――あ、それと…浴衣似合ってる。可愛い」



普段の智也だったら…絶対に言わないひとことを言われて。
また、鼓動がうるさくなる。

―――そんなこと、言うとか…ずるい。反則過ぎる。



ぼんやりとそう思いながら、 下駄の音を響かせてゆっくりと二人のもとへと向かっていく―――。




■ □ ■ □ ■ □ ■ □




「あ!智也と桜きた!」

待ち合わせ場所にいた志穂と目があって、私たちに気づいてそんな声をあげていた。
裕樹さんも、わたしに気がついて手を振ってくれている。

「わりー!待たせたな」
「いいよいいよー。そんな待ってないし。じゃあ、花火始まるまで屋台でもまわろっか」

志穂の提案にみんながうなずいて、人混みのなかを歩く―――。



「―――いたっ…」



慣れない人混みで、わたしが色々な人にぶつかっていると。
そっと、腕を引っ張られて。
手をつないでくれた人がいた。


「え―――?」


そっと、横に目をやると。
そこにいたのは、赤い顔をした裕樹さん―――。



「―――はぐれると困るから、こうしてよっか」


小さく耳元で裕樹さんはそう言って。
わたしの手をしっかりと握ってくれた。



このとき、わたしは気づいていなかった―――。





切ない瞳で、 わたしたちを見ていた…智也の視線に―――。


「―――やっぱり…俺じゃない、か」






「―――智也…」






そんな、智也を見つめる志穂の想いにも。







何一つ、 気づいてなんかいなかったんだ―――。