コメディ・ライト小説(新)
- Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.5 )
- 日時: 2018/04/03 01:47
- 名前: Aika (ID: tcaX5Vvk)
Episode2:貴方がくれたもの。
貴方の言葉に、わたしは何度救われただろうか。
少しだけ大げさかもしれないけど
貴方がいなければ、きっと今のわたしはいないんじゃないかって思う。
それぐらい貴方はわたしにとって、すごく大切なひとなんです。
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――中学3年の冬。
今日は高校受験の合格発表の日だった。
「落ちてたら…どうしよ」
心配性のわたしは、朝から重い顔。
正直、自信は全くなかった。
自己採点の結果もあまり良くなかったし―――。
なんてことを悶々と考えながら、家の扉を開けると。
「「あっ…」」
ちょうど、マンションの隣の扉もあいて…そこから出てきたのは見知った顔。
「おはよう…裕樹さん」
そう。お隣から出てきたのは、現在大学4年の裕樹さん。見事に教員採用試験に合格が決まって4月から高校の教師になるみたいだ。
「おはよー!…そういやぁ、今日が合格発表だっけか?」
朝一番に笑顔でそんなことを言う裕樹さん。
わたしは、思いっきりひきつった顔で答える。
「もー!朝から嫌なこと言わないでよー」
むくれながら、そう言うと裕樹さんは屈託のない笑顔で悪気もなく言う。
「あははっ…わりぃわりぃ。それでテンション低いんだなお前」
駅までの道のりを二人でそんな会話をしながら一緒に歩く。バッタリ会ったときは、わたしたちは大体自然な形で途中まで一緒にすることが多かったりする。
「だってー!全然入試問題わかんなかったしさー…自信なんかないよ」
下を向いてそう言うと。
裕樹さんはわたしの頭に優しく手を置いて。
撫でながら口を開いた。
「桜なら、ぜってー大丈夫だ」
力強い言葉とわたしの頭を優しく撫でる仕草ひとつにまた、ドキッとした。
「俺はお前が頑張ってたの知ってるから。努力は報われるっていうしな。自信もって見に行ってこいよ!それで駄目だったら俺んところ来て泣いていいからよー」
「不吉なこというな!」
「あははっ…まぁ、今のはお前が暗い顔してるから笑わせようと」
「笑えない冗談は止めて」
不思議だ。
裕樹さんといると、さっきまでの不安でいっぱいだった気持ちが一瞬でどこかへ消えてしまった。
なぜか、重い顔が明るい顔になってる。
「じゃあ…俺はこっちの電車だから」
駅のホーム。裕樹さんは違う電車。
ここで、お別れか。なんだか名残惜しい。
もっと一緒にいたい…だなんて思う自分はバカだと思う。
「うん、またね」
「あとさー」
「ん?」
裕樹さんはバッグからゴソゴソと探して何かを取り出した。
そして、それをわたしに手渡す。
くれたのは、 合格祈願のお守り。
「ほんとは…受験当日に渡したかったんだけどな。遅くなっちまってわりぃ」
「えっ…嘘!裕樹さん用意しててくれたの…?」
驚きでいっぱいだった。
裕樹さん自身だって自分の就職のことで大変だったはずなのに。
それなのに、 わたしの事も考えてくれていて―――。
こんなこと、 されたら。
「ありがと、裕樹さん。行ってくるね」
「おう!行ってこい!」
わたし、 貴方の事。
今よりももっと…好きになっちゃうじゃんか、バカ。
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入試の結果は。
見事に合格だった。
一緒に受けた友達もみんな、合格で。
幸せすぎて嬉しすぎて涙が出て―――。
友達と抱き合って泣いた。
ひとしきり、泣いて。
落ち着いたときに。
鞄からスマホを取り出した。
裕樹さんあてにLINEでメッセージをうつ。
『サクラサク!(^^)/』
そう伝えると。
すぐに返信がきて。
『やったなー!おめでとう!ヽ(*´▽)ノ♪』
「顔文字…ウケるんですけど」
クスッとその返信に思わず笑ってしまった。
ありがとうスタンプを送って携帯を閉じる。
―――3月のまだ、冷たい風が吹く。
上を見上げると。
雲ひとつない澄みきった青空が広がっていた。