コメディ・ライト小説(新)
- Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.50 )
- 日時: 2018/08/25 22:32
- 名前: Aika (ID: aVnYacR3)
Episode37:行き場のない想い。
「あっ!射的だ~」
射的を見つけてわたしがはしゃいでいると。
裕樹さんがニコッと笑って。
「なんか、欲しいもんある?」
「えっ…え?」
突然、そう聞かれてわたしが焦っていると。
いつの間にか隣で智也が射的を始めていて。
可愛い熊のぬいぐるみに命中させていた。
―――バァンっ。
勢いよくそんな音が響く。
そういえば、中学生の頃から智也ってこういうの得意だったよな―――。
なんて、ぼんやりと考えていると。
「―――はい」
目の前に智也が取ったぬいぐるみがあって。
勢いよく顔をあげると、ぶっきらぼうな顔をした智也がいた―――。
「えっ?」
何が起きているのか理解できなくて、呆けた声を出してしまった。
「お前…こういうの好きだろ?やるよ」
たしかに…可愛いな~って思ってたぬいぐるみだけど―――。
隣にいた裕樹さんに目をやると。
「―――よかったな、 桜」
平気そうな顔で無邪気に笑う裕樹さんに…
複雑な気持ちになる――。
わたしは、 ひとことお礼を言って智也からぬいぐるみを受け取る。
――ちょっとぐらい…妬いてくれたっていいじゃん。
心の奥底では、 どんよりとしたそんな感情が渦巻いていた。
やっぱり、 わたしよりも裕樹さんは年上で大人だから…妬かないのかな――?
「桜…腹、減ってない?」
何も気づかない裕樹さんは無邪気にそんなことを聞いてくる。
わたしは慌てて笑顔を作る。
―――やめやめ!暗いことを考えるのは。
付き合えてるだけでも幸せなんだからこれ以上、欲張りになっちゃだめ!
そう自分に言い聞かせて裕樹さんと向き合う。
「あ、 そうだね。なんか食べたいな」
「焼きそばとかうまそーじゃね?」
「わかる~。屋台のやきそばってなんか美味しいよね!」
そうだよ。
こうして、話せるだけでも幸せで楽しいんだから何も気にすることなんかない―――。
うん。
上手くいってるし…これでいいんだ。
「―――長谷部たちは…って、あれ?」
「ん?どったの、裕樹さん」
「―――人混みでアイツら…どっか行っちゃったな」
後ろを振り返るとたしかに二人の姿はなかった。
え?ってことは…
いまって、 裕樹さんと二人っきり―――?
意識したとたん…顔が熱くなっていく。
「どーするか…って、桜?顔赤いけど大丈夫?」
「え!?赤くないし!大丈夫です!」
「そう?…まぁ、いいか。せっかくだし二人でちょっとまわろっか」
そんな提案に照れ臭いながらもゆっくりと首を縦にふる。
そして、 裕樹さんが手を差し出してくれたのでその手を…そっと握った。
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □
*志穂 side*
「よかった~!これで二人っきりだ~」
草むらからそっと、先生と桜が二人でまわりはじめる様子を見てにやにやとした表情で見るあたし。
だけど、智也はつまんなさそうな顔で見ている。
「―――最初っから…アイツら二人にすんのが目的だったわけ?」
「まーね!桜って、まわりの目とか気にするしこうでもしないとデートとかしないと思って」
「俺は…あの2人だけにするのは、止めた方が良いと思うけど?」
あたしは、そう言う智也と向き合う。
智也は複雑そうな表情をしている。
あたしは、智也に聞きたかったことを口にする。
「―――あんたってさ…まだ、 桜のこと好きなの?」
予想外だったのか。
智也が目を見開く。
それから、 あたしから顔を背けて答える。
「―――好きだよ」
予想はしてた。
だから、 あたしは落ち着いていられた。
それから、智也は言葉を紡ぐ。
「―――諦めなきゃって分かってる。それでも、桜の笑顔とか何気ない仕草とか…新しい一面を見つけるたびに…やっぱり好きだなって思って…」
苦しそうな…いまにも泣きそうな声でそう言う智也にあたしは、口を開いた。
「―――じゃあ、 あたしが桜のこと…忘れさせてあげる」
―――パァンっ…
途端に大輪の花火が夜空にあがる。
花火の光に照らされて、智也の表情が見えた。
驚いたような顔をしていて…あたしを見つめていた。
「―――あたし…智也のことが好き。 だから、付き合って」
夏の風がそっと吹いて。
浴衣の裾が揺れる。
そして… ゆっくりと、 それぞれの思いが動き出す瞬間だった。