コメディ・ライト小説(新)

Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.52 )
日時: 2018/08/28 00:40
名前: Aika (ID: y9FxUFsG)

Episode39:恋に落ちた音が聞こえたら。





*志穂 side*



智也を好きな自分に気がついたのは。
文化祭が終わったばかりの頃―――。



その日はあたしは、日直だったため放課後の誰もいない教室で1人、居残って日誌を書いていた。

窓は微かに開いていて
運動部の練習の掛け声が小さく聞こえてくる。

ほんのりと茜色に染まった空がきれいで―――。

見とれてたとき。





―――ガラッ。





教室の扉が開いた。
扉の方に目をやると、 そこには見慣れた人物がいた。




「あっれ~?志穂じゃん!まだ残ってたんだ」


ギターケースを片手に持った智也だった。
部活終わりかな―――。

あたしは、智也に笑顔を向けながら軽く雑談を始める。


「ほんとは、菊池くんとなんだけど…今日欠席だったから結局1人でやることになっちゃってさ~」
「あー…そっか。アイツが風邪ってめずらしいよな~」


そう返して、智也はあたしの席の前の人の椅子に腰掛け始めた。


「帰らないの?部活…終わったんでしょ?」


不思議に思って…そう聞くと。


「―――手伝うよ。日誌の他になんか、やることある?」
「あ…えっと…黒板消しと机の整頓ぐらいかな?」
「オッケー!任せろ!」


智也はニコッと笑って席を立ち、黒板を消し始める。
なんだろ―――。

いつもなら、めんどくさがって…帰りそうなのにな。


いつもと違う智也に調子を狂いそうになりながらも、あたしは日誌を書き進めた。
そして、あたしが最後まで書き終えたと同時に智也も黒板消しと机の整頓が終わったようだった。


「おっ!終わった~?」
「うん、 お陰さまで。じゃあ、あたし…これ出してくるわ」
「おー!じゃあ、下駄箱で待ってる」
「おけー」


それから、鞄を肩にかけて…席をたち上がり教室から出ようとした。そのとき。


―――グラッ。


「―――わっ…」


バランスを崩して後ろに転びそうになったのを。





――トンッ…。




誰かが…支えてくれたのがわかった。
後ろを振り返らなくても支えてくれたのが誰かなんてすぐに分かる―――。


「―――あっぶね~…何もないところで転びそうになるなよ」
「ご…ごめん」



―――触れられた肩が熱い。
ドキドキと高鳴る鼓動。


「じっ…じゃあ、あたし急いでこれ渡してくるわー!」


慣れない感覚にあたしは、いたたまれなくなって
逃げるように教室を飛び出した。

―――なんなの?この気持ち。

あたしは…彼氏と別れたばかりなのに。

しばらく、恋なんかいいやって思ってたのに。

なのに。





この胸の高鳴りは…なに?







□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □




いつもの帰り道を智也と二人っきりで歩く。
こんなこと…いつものことなのに。
なぜか、今日は智也を意識してしまう―――。



あたし…おかしい。




「―――志穂?大丈夫?」
「えっ!何が?」
「なんか…さっきから、ボーッとしてね?具合でもわりぃのか?」

心配そうに除きこむ智也に、あたしは反射的に顔をそらす。

「ううんっ!そんなことないから!」
「そう?なら、いいけど」

ホッとした表情になる智也。

なんだかんだ…心配してくれてる。
口は悪いけど…根は優しい―――。

それが智也だ―――。

そういう奴だから。
今まで友達として好きだった。
気兼ねなく、なんでも話せて…本当の自分でいられる。
だからこそ、友達でいられた。


なのに。





あんな一瞬の出来事で。






友達として見てたのに…。





「―――夕日…綺麗だな!」






今は。
友達として見れなくなってる―――。




一瞬で…心を奪われてしまった―――。






「―――写真とろっかな~」





スマホで無邪気に…夕焼け空の写真を撮る君の隣で。





あたしは、 聞こえないように
小さく呟いた―――。





「―――――すき」





その2文字は。
丁度、 横を通った車の音に書き消された。




「―――なに?今…なんか、言った?」





あたしは、 そんな智也に笑顔で。






「―――ううん。なーんも、言ってない」







ごめんね。智也―――。




今は、 まだ気づいたばかりだから。




この気持ちはまだ、 秘密にしておきたいんだ―――。






だけど。






いつか、 きちんと伝えるから。






だから。







それまで。







―――待っててくれますか?








赤い夏の夕焼け空だけが。





あたしたちを見ていた―――。