コメディ・ライト小説(新)
- Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.55 )
- 日時: 2019/02/04 01:53
- 名前: Aika (ID: PyqyMePO)
Episode42:見えない未来に、思うのは。
その日のお昼休みのこと―――。
志穂は、珍しく教室じゃなくて屋上で食べたいと言い出した。
わたしは、笑顔でいいよと返した。
きっと―――。
屋上にした理由は…誰にも聞かれずにわたしに相談したいことがあるからだと察したからだ。
「―――あたし…智也が好きみたい、なんだよね」
屋上の夏の生暖かい風が吹くなか。
志穂は、優しい声色でそう言った。
わたしから、背を向けていたため
志穂が今、どんな表情をしているのかは分からなかった。
今朝の二人の様子で…本当になんとなくだけど察していたからわたしは、さして驚かなかった。
少しの間のあと、わたしは…ゆっくりと口を開いて志穂に問いかける。
「―――もしかして、さ…夏祭りに告白したりした?」
聞くべきではない、
そう頭では分かっていても考えとは裏腹にわたしは
はっきりとそう口にしていた。
「おー…桜ってば~、ダイレクトに聞くね」
そう言って志穂は、乾いた笑い声を見せて。
それからうつむいたまま、答えた。
「―――気持ち、抑えられなくて…告ったんだけどフラれた」
震える声で…か細かった。
知らなかった―――。
ずっと、志穂と智也の傍にいながら。
わたしは、 志穂の想いに全く気づけずにいた。
いったい、いつから智也のことをそういう対象として見ていたのだろうか―――?
ましてや、志穂は…智也のわたしへの気持ちにも気づいていた筈なのに―――。
きっと…諦めようと忘れようと…そう思った瞬間だってあった筈なのに―――。
それでも…諦められず好きでいた気持ちは、きっと辛かったはずなのに。
誰にも言えずに…1人でずっと抱え込んでいた。
そう思うと…わたしから大粒の涙が溢れてこぼれ落ちて。
「桜?…どーしたの?」
急に泣き出したわたしにビックリした様子で志穂が見ていた。
「ごめんね…わたし、志穂が智也をそういう風に見てるの全然わかんなくって…それなのにわたしと一緒にいるの…辛かったよね」
そう言うと…志穂がゆっくりとわたしの元へと駆け寄ってくれて。
ハンカチでそっと涙をふきとって口を開いた。
「―――桜はなんも悪くない。たしかに智也に一途に愛される桜が羨ましいって感じる時もあったけどさ…その前にあたしは桜のことも大好きだから!」
ね?
そう言いながら見せる志穂の顔はとっても優しくって…。
わたしは、また涙がひとつ、こぼれた―――。
神様は意地悪だ―――。
みんながみんな、幸せになれればいいのに。
それなのに。
この世のなかには、想いを寄せる相手に報われずに涙する人もいて―――。
恋というものは、時には残酷で儚いものだとあらためて実感した―――――。
わたしと、裕樹さんはこのさき…一緒にいられる未来が存在しているのかな―――?
裕樹さんは教師でわたしは生徒だから
今の関係がずっと続く自信なんか微塵もない。
だけど―――。
今だけは…この先もずっと隣にいるのは裕樹さんであってほしい―――。
そうやってわたしは…固く信じていた―――。