コメディ・ライト小説(新)

Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.58 )
日時: 2019/07/13 22:12
名前: Aika (ID: l.rgOv2I)

Episode45:時の流れは、 瞬く間に。






この時間がずっとずっと…続けばいいのに――――。

この時のわたしは、 無邪気にそんなことを考えていたんだ――――――。



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気がつけば、 日は暮れていて―――――。
すっかり夕方になっていた。

「もうほとんどのアトラクション乗りつくしたなー」
「うん、 そうだねー」

裕樹さんの隣を歩きながら改めて1日が早かったことを実感する。
裕樹さんと一緒にいると…時間が早く感じるのはなんでだろ―――――。

ボーッとそんなことを考えていると。
不意に裕樹さんがわたしの手をとって、走り出す。

「えっ…」

ビックリして…力なくそんな声を出すと。
裕樹さんが、観覧車を指差して笑顔で言う。

「最後…あれ乗って帰ろうぜ!」

その言葉にわたしは、笑顔で大きく頷いて。
握ってくる、温かい裕樹さんの手を…力強く握り返した。



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観覧車に乗る頃にはすっかり、辺りは暗くなっていて。

「うわー…きれー…」

街灯やビルの明かり…車のライトなどが夜の暗闇の中で輝いていて…観覧車から見る景色はすっかり夜景になっていた――――――。

「だな!なんか、夜の観覧車ってワクワクするよなー」
「何それ…裕樹さん、子供みたい」
「うるせー…男ってのは幾つになっても子供みたいなものなのー」
「へぇー」

何気ない会話のやりとりの、ひとつひとつが楽しく感じてしまう。

このまま…時が止まってしまえばいいのに。


そんな風に思えるぐらい…先生との時間は楽しくて一緒にいる日々を重ねる度に、かけがえのないものへとなってきている。


「――――今日…楽しかったか?」


脈絡もなく、突然そんなことを聞かれて。
わたしは、一瞬唖然とする。
ポカーンとしていると。裕樹さんが言葉をさらに重ねる。


「いや…あのさ、桜の好きなことっていまいちよく分からなくて…とりあえず、遊園地にしちまったんだけど…楽しんでもらえたか本音を言うと心配でさ…それで気になって聞いたんだけど――――」

必死になっている、裕樹さんが可愛くて。
わたしは、クスッと笑ってから答える。

「―――――わたしは…隣に裕樹さんがいてくれるなら、どこでも楽しいよ」

そっか。
この瞬間…なんで、裕樹さんと一緒にいると時間が早く感じるのか…わかった。


簡単なことだった―――。
好きな人と一緒にいると、楽しくって…時間が経つのを忘れてしまうから、 なんだね―――――。




「桜」



耳元で…そっと、裕樹さんがわたしの名を呼ぶ。
そして、ぎゅっとわたしの手を握って。
口を開いた。



「好きだよ。 ずっと、一緒にいような」



その言葉にわたしは、迷いもなく答えた―――。



「うん、 わたしも…大好きだよ」



それから、観覧車のゴンドラが頂上にちょうど差し掛かる頃――――。




二つの影が重なって…わたしたちの唇が触れ合った。





この瞬間… わたしは、 一番幸せだと
そう思っていた――――――。