コメディ・ライト小説(新)
- Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.6 )
- 日時: 2018/04/03 01:50
- 名前: Aika (ID: tcaX5Vvk)
Episode3:あの日、 伝えられなかったこと。
あの日、 もしも貴方に告白してたら?
わたしたちの関係は、何か変わったのかな―――。
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―――中学の卒業式。
同じクラスの友達の坂下志穂は、中1の時からずっと好きだった男の子に告白するって騒いでた。
それを聞いて
自分とは違う積極的な彼女を少しだけ羨ましく思ってしまった。
「桜は好きな人に告らないの?」
明るく聞く彼女に。
わたしは、困ったように笑いながら答える。
「わたしの場合…告白したら絶対にフラれるから最初から言わないって決めてるんだ」
裕樹さんは絶対にわたしのことなんか、一人の女の子として見てない。
たぶん、彼からしたらわたしは、妹みたいな存在なんじゃないかと思う。
―――そんな彼にもしわたしが告白して駄目だったら…きっと前みたいに自然に話せるようになるまで絶対に時間がかかるし。
今の関係を壊したくない。
だから、 わたしはこの気持ちは一生、しまっておく。
あの頃から…裕樹さんを好きになったあの日からそう決めていた。
「後悔、 しない?」
わたしの心を見透かすような、そんな瞳で志穂に聞かれた。心が少しだけ…揺れてしまいそうになった。わたしは大きく頷いて笑顔で言う。
「うん。…しないよ」
嘘だ。…ほんとは、もうおさえることが苦しいぐらいに裕樹さんのことを好きになってる。
『好き』その一言を伝えたい。
けど、それは出来ない。
そのもどかしさが、わたしにとってひどく辛い。
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卒業してから数日後。
志穂からLINEがきて。
『告白上手くいった!高校は別だけど付き合うことになりました~(^^)』
そんな知らせに。わたしは。
『よかったじゃん!志穂、がんばったもんね。おめでとう!』
友達の恋が成就した。志穂はわたしとは違って可愛くって…女の子らしくって。そのうえ、好きな相手にはとことん積極的に攻める性格だ。
彼氏ができても、当たり前だと思う。
それに比べて…わたしは―――。
何もしてない。
「―――わたしも…裕樹さんに」
―――告白、 してみようかな。
関係が壊れるのはたしかに怖いけど。
でも、フラれたとしても
告白したら…少しはわたしのことを気にしてくれるかもしれない。
妹として、だけではなく…一人の女の子として意識してくれるかもしれない。
今は無理でも…いつかは、わたしと付き合ってくれる日が来るかもしれない。
わたしは、スマホのLINEを開いて。
裕樹さんに向けてメッセージをうつ。
『少しだけ…話がしたいので今から会えませんか?』
すぐに既読の文字がついて。
返事が帰って来た。
『俺もちょうど、桜に話したいことがあったから今から駅前のカフェで会おうか』
え?…話したいことって、 何?
もしかして。裕樹さんも…わたしのことを―――。
わずかな期待を胸にわたしは勢いよく鞄を持って家を飛び出していった。
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――カラン、カラン。
息を切らしながら、 カフェに入っていくと。
すでに裕樹さんは席に座っていた。
「すみません…わたしから呼び出したのにお待たせしちゃって」
彼のもとへかけていって、正面に腰かける。
謝ると彼は笑いながら答える。
「いいよ、別に。それで話したいことって?」
四月から社会人なだけあって、大人な雰囲気のある裕樹さんにまた、ドキドキしてしまった。
かすかに香る煙草の匂いに年の差を感じる。
「わたしのは、大した話じゃないし…裕樹さんから言っていいよ」
駄目だ、わたし。
裕樹さんを前にすると何も言えない。
こんなはずじゃなかったのに。
「そう?じゃあ、俺から言うか」
裕樹さんは、コーヒーを口にしながら静かに口を開いた。
「―――実はさ…俺の四月からの勤務先がお前と同じ高校になったんだ!すごくね?」
―――瞬間。
凍りついたかのように体が固まった。
同時に、 その話を笑顔で話す裕樹さんを見てわたしのことなんか眼中にない。瞳に写ってないことを重い知らされた感じがした。
その事については初めから分かっていたんだ。
ただ―――。
同じ高校になるんだったら、告白なんかしたら…裕樹さん、いや。
―――先生を困らせてしまう。
「――そっか。よろしくね、先生」
やっぱり、言っちゃいけないんだ。
わたしのこの想いは。
「うん、よろしくな。…それで、お前の話ってなんだよ?」
「えっ!…高校受かったしどっか遊びにいかない?」
とっさの言い訳が思い浮かばなくてそんなことを口走っていた。
「んだよ、そんなことかよ。わざわざ呼び出さなくてもLINEで良かったんじゃねーの?」
「いいじゃーん!ここのココアめっちゃ美味しいし」
「お前なぁ…まぁ、いっか。考えといてやるよ」
そう言って。わたしの髪にふれて。
くしゃくしゃっと、なでる。
その大きな暖かい手が心地よくて…。
やっぱり、 好きだなって思ってしまう。
―――先生。
諦められるその時が来るまで。
あなたを好きでいても、 良いですか?