コメディ・ライト小説(新)
- 第六話 ( No.23 )
- 日時: 2017/06/06 19:01
- 名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM (ID: IxtPF2j4)
いよいよ明日は修学旅行――。まだそんな実感がないけれど、今日はちょうど部活がないから早く帰ろうと急いで教室を出て靴を履き校門の前に来たとき。
「碧波ー」
背後から私を呼ぶ声が聞こえた。
聞き慣れたその声に、私は嬉しさで直ぐに振り返って口を開いた。声の主は啓で、チョコレート色の髪を靡かせながら私に近付いてくる。
「お前歩くの遅いな。明日は早く歩けよ?」
「悪かったね。もちろん、明日は今日よりは早く歩くよ」
そうだ、明日は修学旅行。先生が何度も言っていたように駅や観光場所では人が多い。班の人とはぐれないように、こんなにゆっくり歩いてては駄目だ。
自然と啓は私の横に来ていて、今日あった面白いこと、明日の集合時間、など話しているとあっという間に別れ道になった。
久しぶりに啓と帰れて、嬉しかった――けど、ここで別れなくてはならない。私の家は啓の方向からでも帰れるけど――。
少し残念だな、と思う気持ちを胸に私は左の道に曲がる啓と「じゃあね」「ばいばーい」と挨拶を交わす。久しぶりのこの感覚――。いつもの帰り道なのに、とても楽しい時間だったな。
*
――家に帰れば部屋に置いてある少女漫画の棚を見て、私はふと思う。こんな漫画のような恋ができたらどんなに幸せだろう、と。
小学生のときできた好きな人は、全然接点がなかったので自然と「好き」という気持ちも消えていった。だけど、啓は、啓だけは、クラスが離れ話すことすらなくなった去年から今までずっと、好きなまま。
席が隣だからよく話すし。共通の話題もあるし。たまにだけど一緒に帰れることもあるし。それだけで私は幸せなのだけど。それでも、「好き」という気持ちは大きくなるばかり。
「……はぁ」
ベッドの上、キャンディの形をしたお気に入りのクッションを抱き抱えながらため息をつく。――啓は私のことどう思ってるんだろう。最近はそればっかり考えてしまう。
小さなことでも話し掛けてくれたり。勉強がわからない私に優しく教えてくれたり。一緒に帰っても嫌がらないで。いつも笑わせてくれて。――修学旅行が終わると席替えするのかな。先生はマイペースだから忘れてそうだけど。席替えしたくない。少しでも、授業中だけでも啓の隣にいたい。席が離れたらきっと――話すことはなくなってしまう。
そのためにも修学旅行でたくさん思い出を作らなきゃ。一生残り続ける、最高の思い出を。
私はベッドから身を起こし、リュックサックを手に取ると準備が間違ってないか念入りにチェックをした。
***
*雑談
実は私も明日から9日まで京都奈良への修学旅行へ行ってきます~!!(誰も聞いてない)
ということで3日間更新できません。いや、いつものことだけど。いつもはちゃんとスマホのメモ機能に少しずつ書いてるからね!!
帰ってきたら修学旅行の話も更新したいと思ってます。最初にも書きましたがこれは実話がもとなので…。
どこからどこまでほんとなのかはご想像にお任せします(笑)
それでは、これからも「いちみる」をよろしくお願いします!
- 第七話 ( No.24 )
- 日時: 2017/06/15 20:39
- 名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM (ID: AxfLwmKD)
「布団そっちひいてー」
「了解! 私ここでいい?」
「いいよ~」
――午後8時半。私たちは、京都のホテルに来ていた。
雨が降ってしまったので濡れてしまった体をお風呂でよく洗い、さっぱりしたこの時間。部屋のメンバー6人で積み重なってる布団を敷いていく。
メンバーは同じクラスの未菜ちゃん、澪、あゆな――通称「あゆ」と梨花ちゃん、マリンと私。クラスでもわりと話す方だし、未菜ちゃん、梨花ちゃんとは去年も同じクラスだしとても安心。あゆは去年転校してきて今年初めて同じクラスになったけど澪を通して仲良くなることができた。
布団を六人全員が向き合えるような位置に敷くと、あゆがバッグからトランプを取り出した。新幹線の中、お風呂の前もずっとカードゲームをしていたけれど飽きることはない。
「それでさー、こはるの好きな人って誰なの?」
――マリンの手持ちのカードをとるとき、彼女はにやけながら口を開いた。思わず手が止まってしまい何も言えなくなる。
「じゃあさ、あたしが当てるね」
「えっ」
何とかカードを取ると、正面にいた澪が口を開く。驚き固まると、彼女はふふっと笑いながら考えるポーズを取った。何かと鋭い澪なら当ててしまえるんじゃないか――何て思いながら、表情が分からないように私は顔を下に向ける。
「未菜も言うから。このクラス?」
「う、うん……」
澪や梨花ちゃん、マリンには好きな人がいないらしく未菜ちゃんが好きな人を言うらしい。その言葉に思わず頷いてしまう。
「だいたいしぼれてきたかなー」
「早くない!?」
カードを引き抜きながらそういう澪に、思わず驚きの声を漏らす。彼女によると「私の最近の行動」から相手は3人に絞れたらしい。最近の行動――なんか特徴的なのあったっけ。男子なんて、班の人ぐらいしか話してないしなぁ。
「太一か、啓か、一条の誰か」
「……」
上がり!――最後にそう告げて、澪は手持ちのカードを全て机上に出した。「みーちゃんはや!」と、梨花ちゃんの声が聞こえるけど私はそんなの思っていない。――澪、私の最近の行動からどうして好きな人が分かったんだろう。啓の名前、バッチリはいってるよ。
「……この中にいる」
「やっぱり? 最近こはるちゃんこの三人と仲良いなーって思って」
えー、誰だろー、何て声が聞こえるから、私は思わず再び顔を下に向けた。赤くなってるのか分からないけど、これはもう少して当てられちゃうパターンなんじゃないかな――。
「……啓?」
澪の言葉に、私は小さく頷いた。
思わず横にいたマリンの袖を引っ張ってしまう。――同じ班じゃん!明日班行動あるじゃん!――そんな言葉を聞きながら、私は啓のことを考えていた。男子も恋バナするのかな。啓は今、誰のことを考えているんだろう。
- 第八話 ( No.25 )
- 日時: 2017/06/24 13:27
- 名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM (ID: u/mfVk0T)
「こはるちゃん、楽しんできてね!」
「うん!」
――昨日、私の好きな人が部屋のメンバーにバレた後。夜は当然直ぐには眠れなくて、未菜ちゃんの彼氏の話や私の恋バナなんかをしてたんだけど私と啓は同じ班で、今日は班別で京都を回るので当然皆には「楽しんできてね」と言われる。
啓と同じ班で、同じ思い出が作れるのは嬉しい。けれど、緊張してあまり話せないかもしれない――。男子としては結構話せる方だし、目を合わせて話せるけど、啓は私のことをまず友達として見てくれてるのかな――何て思うとなかなか話すことはできなかった。
啓はよく「俺は誰とでも仲良くできるよ」って言うけれどそれは本当のことで。男女問わず誰とでもよく話す。でも「女子は苦手な人が多い」って言うことを言ってるのも聞いたことがあるから、私がその苦手の範囲に入ってるんじゃないか――何て言う被害妄想が膨らんでしまう。――ダメだダメだ。折角の修学旅行、暗い顔なんかしてないでたくさん思い出作らなきゃ。
「次どこだっけ?」
揺られるバスの中、私は後ろに立っている啓に声をかけた。本当は次に行く場所くらい覚えてる。だけど、それでも、少しでも啓と話がしたかった。折角後ろに立っているんだから。
「んー、伏見稲荷じゃね? で、多分その次がお昼」
腕時計を見ながら、啓はそう答える。次どこかに行くなんて班員全員が把握してなくちゃいけないのに、こんな質問にもちゃんと答えてくれるなんて――やっぱり優しいな、何て思いながら私も腕時計に目を向けた。
その時、ちょうど次は伏見稲荷の近くに停まるというアナウンスがバスの中に響き渡る。窓の外に見える真っ赤な鳥居は大きくて、とても綺麗だった。
*
「「いただきまーす!」」
伏見稲荷を見学し終えた私たちは、ガイドさんに連れられてうどんやそばを扱っているレストランへと足を運んだ。私たちの班のガイド――野々倉さんは、とても綺麗で上品で、優しい人。こんな風に働く女性もかっこいいなぁ。
いつもと環境が変わるとあまりお腹の空かない私は結愛ちゃんとうどんを半分ずつに分けて、それに加えてメロンソーダフロートを注文した。うどんは特別な味がついているとかそういうわけでもないので値段も安く、半分払うことになるのでフロートよりも安い――何てことになったけれど味はとっても美味しかった。
「碧波、一口貰って良い?」
隣に座っている啓の声に、私はうどんを口に含んでいたので返事ができないままフロートを啓の方に動かす。フロートは冷たくてとっても美味しくて、バニラアイスが溶けてきてそれもまた美味しかった。
「良いよ」
うどんを飲み込んだときにはもうフロートは啓の手元にあった。間接キス――とかそういうのじゃない。私が使っていてささりっぱなしのストローをよけて啓はフロートを飲み込んだ。
美味しい、と一言言ったあとにバニラアイスも口に含む。
「めっちゃ旨いわ。サンキュ」
――そうやって、微笑む姿にいちいちドキッとしてしまう自分がいる。
今こうして隣に座っていられるのも偶然なんだけど。本当に、啓と同じ班で良かった。
同じ最高の思い出が作れるように、午後も楽しめたらいいな。
*****
修学旅行から帰ってきて、大分日が経ってしまいました……。
楽しい思い出になったけど、書けるところまで詳しくは覚えていないという((
実際にお昼食べたのは伏見稲荷の近くじゃなかった気もする……((((
(作者は『話が思い浮かばないなら実話をもとにすればいい』という考えの人)
そんなこんなでグダグダですが、これからも『いちみる』をよろしくお願いします!
参照300突破ありがとうございました!!!
- 第9話 ( No.26 )
- 日時: 2017/06/26 20:21
- 名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM (ID: xbduus1y)
「準備はいい? それじゃあ行くわよ!」
ノリノリな野々倉さんに続いて、私たちは目を瞑った。そして、前にいる人――結愛ちゃんのリュックをつかむ。
どうしてこんなことをしているのかというと、事の発端は5分前。『縁結びの神さま』として有名な地主神社に来た私たちは、『恋占いの石』をやることにしたから。
恋占いの石は、石から目を瞑って歩き、反対側の石に無事たどり着けたら恋が成就する――というもの。人にアドバイスを貰ったら、人からアドバイスを受けることにより成就するらしい。
修学旅行に来る前から、やってみたいという気持ちかあったしこういう縁結びとか、おまじない的なのは好きだから結構嬉しい。転ばないように、ゆっくりとゆっくりと私は足を進めた。
「はい、終了!」
野々倉さんの声で私はそっと目を開けた。朝日が眩しく、足元にはちゃんとさっきとは反対側の恋占いの石が置いてある。
――良かった。無事たどり着けた。
ホッとしたのも束の間、男子3人は全員誰の手も借りず一人で来ようとしているので、まだ石にはたどり着いていなかった。
「もうちょっと右! その辺!」
他の参拝者の人に迷惑が掛からないよう、私たち女子がアドバイスを出していく。3人は無事にたどり着くことができて、最後に記念写真を撮影した。
*
「さっきのおみくじ見せてー」
次の目的地――産寧坂(通称、三年坂)に向かうために私たちは再びバスに揺られていた。今度は座ることができたので、私の隣に結愛ちゃんが、後ろの席に海貴と啓が、その後ろに太一と野々倉さんが座る形になった。
「はい、どうぞ」
啓が見せてと言ったのはさっきお昼を食べた場所で引いた『世界一当たる恋みくじ』のこと。家の周りとかに合ったら怪しくて引かないだろうけど、一回100円だし筒状になっていて着物を着た女性みたいになっているのが可愛かったし、何より思い出になるから私と結愛ちゃんで引いてみたやつ。
「青って……誰」
おみくじには普通の恋みくじに書かれているようなことと、『ラッキーカラー』と『ラッキーアイテム』が書かれていた。私のラッキーカラーは青色。啓の言うように今ここに青色の物を身に付けている男子は誰もいない。
結愛ちゃんのラッキーカラーは黒色らしく、黒色のリュックを背負った太一が冷やかされていた――けど、太一は寝ているらしくて海貴は諦めたようになっていた。
「えー碧波の好きな人って誰なの?」
「それな! めっちゃ気になる」
「えぇ~絶対言わないから」
啓と結愛ちゃんの声に私はそう返事をして、おみくじをリュックの中にしまった。おみくじには何事も頑張るのが良い、みたいなこと書いてあったから何かしら頑張ってみようかな、何て思っていたらあっという間に三年坂にたどり着いた。
- 第10話 ( No.27 )
- 日時: 2017/06/27 20:17
- 名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM (ID: /cDu3FaZ)
「抹茶味ひとつください」
「はいよ、修学旅行生は30円引きだよ」
――三年坂付近にある、ソフトクリームを売ってる小さなお店。『修学旅行生は30円引き』と書かれたポスターを見かけて、私たちは直ぐにここで食べよう――と決めた。一番の理由は、結愛ちゃんと私が「アイス食べたい」と午前中からずっと言ってたからなんだけど。
お店の人にお金を渡し、代わりにソフトクリームを受けとる。ソフトクリームはコンビニぐらいでしか変えないし、やっぱり京都に来たから抹茶食べたいという一心で、私は抹茶味を選んだ。
班員に遅れを取らないよう、食べ歩きはせずみんなでまとまってソフトクリームを口に含む。
「おいしい……!!」
少し気温が上がってきて、ずっと歩きっぱなしだったから余計に冷たく、美味しく感じる。
見ると太一以外は全員抹茶味を選んでいた。太一は抹茶が苦手ならしく、水色のラムネ味のソフトクリームを食べている。――私が抹茶味と迷ったそれは、見るからに爽やかで、少しだけラムネにすれば良かったな……何て後悔もしてる。
「みんな食べ終わった? 行くぞ」
班長の海貴よりも仕切ってる啓が口を開いて、私たちの班は再び歩き出した。
熱いコンクリートの上で焼かれながら、私たちは学年の集合場所である京都駅に向かい始める。地主神社、清水寺、三年坂、伏見稲荷大社、三十三間堂、銀閣寺――初めての京都で、行きたかったこの6つの場所に行けて、何より啓と過ごせて本当に楽しかったな――。修学旅行はまだ明日もあるけど、この時間が終わってしまうのは本当に寂しい。
バスに乗り込み、時間通りに京都駅に着いて野々倉さんと別れて――本当にあっという間だったな。集合場所へ行くともうだいたいの人は集まっていて、中には狐のお面を買っている人もいた。写真を見せ合う人、お土産を見る人、そんな人たちに紛れながらも私は自分の場所へと移動していく。
「こはるちゃん! 楽しかった?」
「もちろん! とっても楽しかったよ…!!」
――多分、澪が聞いたのは『啓と何かあった?』的なのだと思うけどそこには触れずに、私は返事をする。でもやっぱりふふっと笑いながら腕を掴む澪には勝てなくて――『あとで話す』と言ってその場をあとにした。