コメディ・ライト小説(新)
- ようやく1話。 ( No.3 )
- 日時: 2017/04/12 21:34
- 名前: ラッテ (ID: KE0ZVzN7)
第一章 地獄のテスト
第一話 始まり
まだ五月だというのに、今日はやけに暑い。今朝学校を出る前に見たニュースによると、最高気温は三十度を上回るらしい。何故今日に限って、このようなコンディションになってしまったのだろうか。神様はとても意地悪だ。
今日は、五月五日。何をトチ狂ったか、この学校はこの日を最初のテストの日にしている。
さて、一つ疑問が出てきた。
『五月五日ってゴールデンウィークじゃないの?』
正解は、イエス。今日はゴールデンウィークの筈だ。
なのにだ。この学校は貴重な三連休を潰す方針なのだ。
この学校の名物の一つ、休日キラーがここにも活かされている。
そんな訳で、本来であれば友達と遊んでいたはずのゴールデンウィーク最終日は、学生が最も嫌うであろうテストの日となってしまった。
「あー、緊張します……」
学校に向かっている途中で、やよいちゃんはそう呟いた。
いつも元気なやよいちゃんが弱音を吐く事など滅多に無いので私は少し驚いたが、その意味をすぐに理解した。
やよいちゃんは今、テストでいい点数を取れなければ外出禁止という約束を親としている。
今回のテストで四百点を超えなければいけないのだ。
更にやよいちゃんは勉強ができない。想像もつかないほど。
そんな訳で、学校に向かう途中ずっと弱音を吐いていたやよいちゃんを慰めながら、私水原さぐりは歩いていた。
私も当然緊張する。が、不登校だった間の時間を利用して勉強していたため、人一倍勉強には自信がある。方だ。
そんな私の学力を遥かに超える、男がいる。
学校に着いた私達に最初に声をかけてきた男。そいつこそが、その男だ。
「よ、水原にやよい。テストの方自信はあるか?」
ヘラヘラしながらその男は話しかけてきた。
名を須原レイという。彼は、入学式の日、教室が分からずに迷っていた私を見つけ出し、教室まで連れていってくれた。中学一年、まだ不登校になる前にいたクラスの同級生だ。
あいつは普段の言動から勉強はできないはずだ、と私は考えていたのだが、現実は残酷だった。
こんな男が、私よりも遥かに良いテストの点数を取り、それでいて人並みに勉強をしていないというのだ。
これ以上腹立たしい事があるだろうか。いや、無い。
私がそんな事を考えている最中、須原とやよいちゃんは短い会話を交わしていた。
「全然ダメです〜……。不安です……」
「大丈夫だ、水原を信じろ!今までお前に勉強を教えてきた、水原を信じろ!」
何を他人事のように、と須原に対する不満をまた抱き、やよいちゃんを引っ張って校舎の中に入っていった。
その途中、私は須原に対して宣戦布告をした。
「言っとくけど、自分の心配もしなさいよ!私の方がいい点数を取ってやるんだから!」
大声で言ったため、周りにいた人々が注目した。
一気に恥ずかしくなり、急いで校舎の中へと逃げ隠れていった。
チラッと振り返って須原の顔を見たが、動揺している様子はなく相変わらずヘラヘラしていた。
……絶対あいつより点数取ってやる!
そう誓った。
緊張で今にも倒れそうなやよいちゃんを何とか教室まで連れて行き、私は自分の教室へと向かった。
と言っても、すぐ隣なのだが。
教室のドアを開けて、小さい声でおはよう、と言った。
自分の席に座ろうとして歩き出した瞬間、目の前に人が現れた。
「水原さん、聞いて聞いて!シロウさんの新刊本、発売だって!!しかも、シリーズ作品なんだって!!ああ、ワクワクするなぁ!!」
テスト前の静寂な雰囲気に包まれていた教室の雰囲気を一変させた。
そんな事も知らないだろうこの生徒は、竜胆たつき。
読書が大好きなうるさい人で、特に南川シロウという作家が書いた本が大好きだ。
今日もいきなり南川シロウの話題から始まった。
「いやー、シリーズ作品なんていつぶりだろう!?「『攻略不能の鉄壁彼女』以来じゃ無いかな〜!?いやー、もうあの作品も連載終了してから約一年が経つのか〜。時は経ったが、シロウさんへの愛は変わらん!南川シロウ、万歳!!」
周りの視線を気にせずこうも自分の趣味を堂々と語る事ができる竜胆さんを、私は少し尊敬する。
だからと言って、これはうるさすぎるが。
いつもなら放っておいて鞄を片ずけに机へ直行するだろう。
しかし、何故だか私はこの読書廃人がしっかりとテストで点を取れるのだろうか、と心配になってしまい、その勢いで質問した。
「あの、竜胆さん?テストの方は大丈夫なの?」
そう言うと、竜胆さんは自信満々で答えた。
「ふっふーん。今回は自信があるの、水原さん!見ててね、みんなの目ん玉が飛び出ちゃうくらいの点数取って見せるから!」
アハハ、と微笑。いや、苦笑といった方が良いだろうか。
とりあえず、自信がありそうでよかった。私も、頑張ろう。
テスト開始、十分前。
みんな、教科書とにらめっこをしている。本番前に詰め込んだって意味は無いと私は思うのだが、共感してくれる人はいるだろうか?
私は参考書などを見る気にもならず、周りを見渡していた。
誰もが集中している。恐らく、こんなにも余裕をかましているのは私と須原くらいだろう。
案の定、須原は寝ていた。隣の席に座っているメガネを掛けた真面目そうな女子は、嫌そうな目で須原を見ていた。
そりゃ、テストの前に寝ていたら周りから良い目では見られないだろう、と思いながら再び教室中を見渡した。
その時、前の方の席に座っている姫川サクヤと目が合った。
サクヤもどうやら余裕をかましているらしい。
私と目が合ったのに気がついたのか、サクヤは軽く手を振った。
その時、何故か私は急いで視線を逸らしてしまった。
自分でもどうしてかは分からなかったが、何故か逸らしてしまったのだ。
もう一度サクヤの方に目を受けようとした時、教師が教室に入ってきた。
片手に持っているのは、全学生の憎むべき敵が詰まった紙袋だ。
遂に、始まる。
「教科書等はしまえー。テスト始めるぞー」
学校が開始してから初めてのテストが、開幕した。