コメディ・ライト小説(新)

遅くなりました。言い訳させて下s……。三話です。 ( No.5 )
日時: 2017/04/22 20:14
名前: ラッテ (ID: KE0ZVzN7)

第三話 終わり、そして始まり

外は今までに無いほど激しい雨だった。

どうやら、そろそろ梅雨の時期が再来したらしい。

五月十九日。普段より一足早い梅雨に、更にテスト結果発表という嫌なイベントが重なり、学校の雰囲気はいつもより暗かった。

テスト結果発表は、昼休みにやる予定だ。

私は、かなり手応えがあったと思う。自己採点では、おそらくだが四百点は絶対に行っているという自信がある。

やよいちゃんも中々自信があるらしいが、四百点を取れなければ外出禁止というルールのせいで今日はやけにおとなしい。

いつもとは違う学校の雰囲気のせいか、今日は何だか何かが起こる様な気がしてならなかった。

その予感は、あながち間違いでは無かったのかもしれない。




三時間目の授業の終わりを告げる音楽が、いつもとは違う音に聞こえた。

相当緊張しているのかもしれない。それも当然だ。

私は中学校一年の時に不登校になったから、テストというのは実に二年半ぶり。当然、結果発表も二年半ぶりなのだ。

中学にまだ通っていた頃、一回だけ結果発表を経験した事がある。

前期中間テスト。中学始まって初のテストという事で、気合いを入れて臨んだテスト。

結果発表の紙が貼り出される直前のあの緊張は、今でも忘れない。

あの時は確か、友達と一緒に結果発表の場所まで行ったはずだ。

中学時代の、友達。一人だけ、友達と呼べる人がいた。

もう、友達とは呼べないし、呼びたく無いけれど。

その結果発表から二週間後、私は不登校へと陥った。

あの事件以来……。

もう二度と思い返さない、って決めていたはずなのに、また思い出してしまった。

だけど、不思議と嫌な気持ちでは無い。

今の私には、本当の友達がいる。

やよいちゃん。それに、竜胆さんとか一応須原だって、結構仲が良い。

やよいちゃん達がいてくれている限り、私は強くいられる。

大丈夫。私には、友達がいるんだから。




「ほんじゃ、行くぞー」

主任の先生が勢いよく折りたたんであった紙を広げ、廊下の壁に貼った。

雨は一層強くなっており、かなりうるさかったのだが、それを掻き消すほどの大声でみんなは騒ぎまくった。

紙には、成績上位十名までの名前と点数が大きく書かれており、あとはその下に小さく細かく名前と点数が記されている。

紙の前には特に男子が群がり、混雑していたため私は少し離れた所からやよいちゃんと一緒に紙を見ていた。

自分の名前を探す。水原さぐり……水原……水……。

あった。

順位は、四百三十二人中二十四位。点数は、四百三十六点だった。

「やった……!」

思っていたよりも点数が高く、思わず喜びの声を口に出してしまった。

今まで身体中を支配していた緊張感が、一気にどこかへ飛んで行った様な気がした。

しかし、まだ油断はできない。

やよいちゃんがまだ自分の名前を発見できていないらしい。

私は一緒にやよいちゃんの名前を探した。

必死になって探している間に、群がっていた人達は少しずつ少なくなって行った。

やよいちゃんの名前を発見できた時には、殆どの人がいなくなっていた。

やよいちゃんの結果は、四百三十二人中百三十位、三百九十二点だった。

その点数を目の当たりにした時、やよいちゃんの顔は今まで見た事がないほど絶望していた顔になっていた。

私はやよいちゃんにかける言葉が見当たらず、結局その状態のまま昼休みは終了してしまった。

何とかして教室へとやよいちゃんを返して、私は自分の教室へ向かい、自分の席に座った。

教室中は、テストの話題でもちきりだった。

話の内容のほとんどが、成績上位者の話だった。

その話の中には、須原、という単語も出てきていた。

あいつはやはり、かなり良い点数を取ったのだろう。

負けてしまった、という事になる。

悔しかった。悔しかったが、それ以上にやよいちゃんの事が気になって仕方がなかった。

友達だからこそ、その悲しみ・辛さがよく分かる。

帰る時、どんな言葉をかけてあげれば良いんだろう……。

そんなことを考えている時だった。

後ろから急に自分の名前を呼ばれ、返事をする暇もなく強引に椅子から引きずり離され、首元を掴まれてしまった。

急いで後ろを振り返ると、須原が私の制服の襟を掴んでいた。

「なに?伸びるから離してほしいんだけど……」

私の言葉を聞く耳を持たず、須原はそのまま歩き出した。

苦しかったので須原の手を引き離して、そしてそのまま須原について行った。

今までに無いほど、須原の顔は真面目で、深刻そうな顔をしていた。

一体何があったのだろうか。

その内容は、思ってもいなかった事だった。




「雛川ももが、一ヶ月後にこの学校に転校してくるよ」

声の主は、姫川サクヤだった。

須原に連れてこさせられたのは、今は使われていない旧音楽室だった。

不気味な雰囲気だったが、姫川の言葉がさらにその不気味さを増幅させ、恐怖を感じるレベルまでとなった。

今、この男は何を……。

「そんな訳ねえ。あいつは確かに中学時代に転校した。だろ?水原」

雛川もも。その名を、もう一読聞くことは無いと思っていた。その名を、なぜこの男が……。

一体何が起こっているのか、検討がさっぱりつかなかった。

「う、うん……。確か、七月に……、沖縄へ」

「ほらな。冗談は程々にしやがれ。ったく」

須原がそう言うと、姫川はクスッと笑ってこう返した。

「だから、言ってるじゃないか。たまたま先生たちが話しているのを聞いたって。一応学級委員の君達に伝えておこうと思って、呼んだのさ。水原さんは、レイ経由だけどね」

どうやらこの男が雛川ももの事を知っているわけでは無いらしい。

少しホッとした。しかし、須原は気を張りつめたまま、姫川に追求した。

「何でわざわざ報告した?学級委員だからって、知る必要は無いはずだ」

「学級委員はみんなのリーダーだろう?転校生の事は、知っておかなくちゃ」

姫川にそう言われ、須原は返す言葉が見当たらず黙ってしまった。

須原の発言の意図は、私には理解できた。

さっき少しホッとしたが、今は全然安心できない。

恐らく知っている。この男は。

『あの事件』を。




「まあまあ、レイ。僕にテストで負けたからって、そんなに怒るなよ」

この言葉には、素直に驚いた。

須原が負けた、ということもそうだが何より姫川が勉強できる、という事にだ。

須原も姫川も、テスト中は全然本気には見えなかった。

天才とは、こういう奴らのことを言うのか……。

「俺は四百九十で、お前が四百九十二。たった二点差だろうが!」

「二点でも勝ちは勝ち、負けは負けだよ」

「グッ……」

あの須原が押し負けるとは、この男、色々な意味で只者では無いな。

雛川もも。彼女が、この学校に一ヶ月後やってくる。

あの女が、この学校に。

少し、信じられない。彼女は確かに、いなくなったはず……。

旧音楽室から出ようとした姫川が、去り際に放った言葉。

その言葉が、新たな波乱、そして壁を生み出した。




「まあ、明日からの沖縄行き宿泊研修でハッキリするさ。楽しみだね、宿泊研修」




第一章 終わり




『次章予告』

さあさあ、始まりました!今作から始まった次章予告!

今回の担当はこの私、七原やよいが務めさせてもらいます!

今回の話ではションボリしていた私ですが、次章はバリバリ暴れますよ〜!

え?さぐりんと違うクラスだから出番は少ない?そ、そんな!

二泊三日もあるのに、私全然出てこないんですか!?

嫌です!ちょっと、作者さん!私の出番増やしてください!

次章予告?そんなの知りません!出番ですよ、出番!

え?予告したら出番増えるかも!?

次章の舞台は遂に宿泊研修!沖縄を舞台にさぐりん達が様々な試練に立ち向かっていきますよ!

姫川君の発言がどの様に物語に絡んでくるのか……。

次章!『波乱の宿泊研修』お楽しみに!

これで私の出番増えるん……(強制終了)