コメディ・ライト小説(新)
- Re: 下書きだらけ ( No.166 )
- 日時: 2018/07/29 07:58
- 名前: モズ ◆hI.72Tk6FQ (ID: w4lZuq26)
『向日葵みたい』
一度きりの夏は戻ってこない。あの君が居たあの夏は記憶の中にしか存在しない。
言葉、その言葉だけが僕を生き続けさせる活力で、パワーで、光で。
何があってもその言葉があるから僕は生きてられる。それにすがりながら生きている。
ある夏、君が燃えた。それからも僕の、君への思いは募るばかり。
向日葵が満開に咲いて太陽を見る人のように生き生きとしていた季節。
折角、花火大会にも二人きりで行けたのに。ベビーカステラを二人でシェアしたり、
かき氷を食べてキーンとする僕を笑う君がいたり、金魚だって採ったじゃないか。
スーパーボールを何に使うんだ、って思っててもお祭り気分には逆らえない。
楽しみながら使い道のない、育てようの無いものを採っていく。
花火を見たことだって忘れちゃいない。人混みから避けるように君が連れていってくれたあの場所。
君のお祖父様の家、敷地内にある大きな木の上、枝の上。
不安定な座席に二人して座ったこと、他愛ない話をして花火を待った時間、
距離の近さに匂う君の髪の匂い、たまに触れる手の温度。
気持ち悪い話に思えるだろうが、何一つ欠けることなく思い出せる。
花火が上がって見ているものは毎年其ほど変わらない筈なのに、
君と居るだけで、傍に居ると感じられるだけでこんなにも違うのか。
花火を観てばいばい、をして。これが最後のばいばいになるなんて、誰が思う。
暗がりの中でも君の笑顔は明るく、輝いているように見えた。
何を思ったのかは知らないが、君はある言葉を呟いた。
君が僕に残した、最初で最後の言葉。僕の大切な言葉。
こんな日が永遠に続けば良いのに、と、どれ程思ったことか。
その翌日、起きて暫くすると母親がどたばたと階段を駆け上る音がして
ばっ、と、部屋のドアが開けられて息絶え絶えながらに言葉を溢す姿があった。
君と、その家族丸ごとで火事に遭っていて今も尚、助け出されていないと。
その言葉の重大さを理解すると母親の声に振り向くことなく、
母親のようにまたもどたばたと階段を下りることになった。
辺りは消防隊、近所の人、若年層の野次馬などがはびこっていた。
まだ火の勢いは止まらないらしく、救助もろくに出来てないという。
周りに大まかな話を聞いてみると、火事が起こったのは30分も前のこと。
原因は不明だが一人の少年の証言によるととある大学生グループが煙草をポイ捨て、
その場所が君の家、庭だった。それから燃え移っていって今に至ること。
誰も出てこないのに、時間は無情に経っていく。
正義感を出したかった訳じゃない、君だけでも助け出したい。
それも無理なら君が大好きな弟を、せめて。そんな情に駆られた。
それからは早かった。人々に見つからないよう、僕と、一部の人しか知らない裏口から侵入した。
一階は既に火で埋め尽くされそうな状態だった。
とはいえ、そんな風に冷静で居られるほどの状況では無かった。
服に火の粉が飛び、暑さだけでどうにかなってしまいそうで。
たまに肌を煽られるように火が掠り、何とも言えぬ苦しみが通る。
一階には、リビングには倒れ混む君の両親の姿があった。
父親の方は肉まで焼かれはじめて、もうさすがに死んでいた。
母親の方は倒れて動けずにいた。だから無視をした。
一酸化中毒、そんな言葉なんて知らなかったからどちらにせよ無視するのが良かったのかもしれない。
二階、幼い子供の声が聞こえた。炎天下の下、晒されたコンクリートのように熱い階段を駆け上る。
声のする部屋を開けてーー。
僕の見立ては間違っていなかったのか、両親は完全に死んでいた。
君、そして君の弟は何とか助かったという。弟の方は火がトラウマなくらい。
問題なのは君、完全に心を閉ざした、というより無くしてしまったのかもしれない。
弟にだけ優しく接して他は敵と見なした。他人として関り始めた。
二人が残された環境は最悪だ、一番に愛してくれる人が燃えたんだから。
それに対する周りの人たちの反応は最初は優しかったものの、
一切心を見せずに警戒心丸出しで居続ける彼女に痺れを切らしたのか、
優しくするような人も一人、また一人と消えていった。
君は悪くない、周りの人達も事情は分かっていても辛いのだろう、分かる。
あの夏はもう燃えて焼き果てて、僕の大好きだった君はあの日を境に灰になった。
最後に残した『向日葵みたい』というその言葉は忘れない。
僕の大好きだった君が残してくれた、最初で最後の言葉だから。
今も傍に居て世話をさせてもらっているが、僕のことは思い出せないみたいだ。
あの夏から何年絶っても君は相も変わらず綺麗で、可愛くて。
そんな君が不意に見せる笑顔を見てしまう度、君に何度でも恋をする。
思いは未だ募るばかり、僕をまだ他人と見なす君の何気ない言葉に悲しむこともある。
だけど、その言葉だけが僕をそうさせる活力になっている。
《制作途中か終わり掛けに書いた》
ヒマワリ、を最初に書いてここまで来たんだなと思います。
あれが一番多くのコメントを頂けて嬉しかったです。
向日葵、とあるドラマで観たのですが崇拝、近くに居る、という意味があるようで。
細かい意味までは覚えてませんが後者であれば素敵な花だと思います。
タイトルだけ決めてそれ以外一切決めずに書いてみましたが、どうでしょう。
やはり恋の話とかを書かねばならんのでしょうかね。
コメライさんやと恋、それが人気な、ポピュラーな印象なんですよね。
皆様もどうか素敵な夏をお過ごし下され、暑中見舞いと受け取りください。
それにしても好きな作者さんが片手に収まる程度になってしまったし、
そもそも読むことが億劫になってるしなぁ。
書き途中に書きましたが、気分じゃないと書けない。