コメディ・ライト小説(新)
- Re: 下書きだらけ ( No.167 )
- 日時: 2018/07/25 08:57
- 名前: モズ ◆hI.72Tk6FQ (ID: lQjP23yG)
『ピンクソーダ』
大丈夫、そう自分に言い聞かせて手元の鏡を見る。
私はどんな風に見えているだろうか、可愛いかな、綺麗に見えるかな。
いつもと違うイメージで髪型もお祭りらしく、それでいて爽やかにしたくて上げてみて。
メイクもしっかりと考えてほんのりめでやってみたけど、どうかな。
私が見ても分からないし、再度大丈夫と自分に言い聞かせる。
着てみてよ、と頼まれて一緒に選んだ浴衣を見つめる。
白い生地に水色のグラデーションが流れるように描かれて、その鮮やかな花が流れて。
帯は大人っぽく紺なんてどう? と言われて紺にして。
浴衣なんて普段は着ないから友達に帯を締めてもらいに来てもらうし。
うぅ、色々考えていたら不安になってくる。
少しでも気に入って貰えるように、可愛いって思ってもらえるように。
そう、笑顔が大事。鏡に向かって精一杯の笑顔、どこか無理矢理な感じがした。
「キツく締めるから、容赦しないわよ?」
「うぅぁ、苦しい……屋台のも何にも食べられないんじゃ」
「綺麗のため、妥協は要らないの。それと帯で胃が膨らまないから仕方ないでしょ。
沢山食べたかったら今度私とお祭りに行けば良いでしょ」
「あ、お願いします!」
友人に帯を締めてもらって、メイクや髪型のチェックをしてもらう。
友人こと李真、本当に優しくてお姉さんみたいに頼れる人。
ツンデレっぽい所もあって美人さんだから男に困ることはない、人。
本人は別にそういうのを気にしてないけど、それも李真らしくて好き。
今日のために李真に沢山相談したこともあるから……有り難いな。
「ふぅ、良いんじゃない? 千紗も可愛いんだから笑顔を意識しなさいよ!」
「李真は美人だから羨ましいけど……」
「笑顔を意識しなさいよ! 分かった?」
「は、はい……」
こういうお節介な所もあるけどこういう友人が居るのはとても幸せだし、
私には好きな人もいて……それが叶うとは限らないけどそれまでの高鳴る気持ちは楽しいかも。
いつもじゃ意識しない笑顔とか制服のよれとか、肌のこととか。
より女子らしく、可愛くいようとしている自分がいるんだとふと思ってしまう。
本来ならもっと普段から気にするべきことだろうけど、そこは気にしない、気にしない。
ほら、頑張りなさいよ。とまるで保護者のように私を途中まで送ってくれた李真。
ヒールではない、普通のサンダル。夏の花に彩られている、サンダル。
皆もお祭りに行くみたいで歩いている途中にはラフな格好の人や、家族連れ。
浴衣を着た彼氏と彼女がいたり。羨ましいな、と思ってしまう。
彼は良い意味で馬鹿というか、鈍感なのだ。私の好き、に中々気付いてくれない。
お祭りに誘った時もただ笑顔でうん、行こう! と返されて。
浴衣を見に行こうと誘っても動揺せず、友達としてだろうか、直ぐ様に肯定して。
私なりに頑張ったつもりでも鈍感には敵わないみたい。
好きだから、好きだし、好きでしかなくて、傍にいれるだけで嬉しいけど。
その笑顔が、優しさが、その鈍感なところも。いつか誰かに取られてしまう。
むしろ彼も鈍感故に今は彼女が居ないと聞くが、そんな彼を好む女子も居る。
こんなことを考えてしまうと顔が暑くて真っ赤になってしまう。平静でいないと。
今だけの高鳴り、この泡はいつまで生まれていくのかな。
目の前に彼が見えた瞬間、私の胸は更に鼓動を早く、大きくしていく。
胸だけがソーダになったような気分だ。
恋をするってこういうことなのか、私にはまだ分からない。