コメディ・ライト小説(新)
- Re: 恋愛とかなんかさらっと書くコーナー ( No.18 )
- 日時: 2017/05/08 01:45
- 名前: モズ (ID: w4lZuq26)
「デッサン」(男視点のはず)
篠宮李空(しのみやりく)
立川優蘭(たちかわゆら)
いつも、いつもその時間を楽しみにしていた。
その時間が待ち遠しかった。
部活なんて休んでいいと思った。
それくらい、優蘭といるのが楽しくて幸せで……
きっと、俺は優蘭のことが……好きなんだと思う。
この思いはまだ、伝えられる勇気が出ない……
優蘭のことをそう思ったのは、
わからない、去年からか?
あんまり覚えていない。
新学期を迎えて
結局いつものメンツで話していた。
けど、
「ふふっ、また一緒っ。よろしく、李空!」
「………っあ、よろしく。優蘭」
「李空、今年もよろしくね」
「うん、よろしく」
「ふふっ、本当によろしくっ!」
笑いながら優蘭は友達の元へ歩いていった。
立川優蘭は優しくて親切。
兼ねて可愛い系美人と言われている……
男子からの人気も高い。
「あ、忘れてた、李空!」
なんだろう、俺になんか用が?
「美術部に入っているんだけどね、
展覧会に作品を出したいなって思ってて、
李空を描きたいなぁって思ってて……
いい、かなぁ?」
モデルってこと?
嬉しい、嬉しいけどなんで異性の俺に?
「あっ、別にね、変な意味はないんだよ?
えっと、ただね……まぁ、お願いっ!」
めっちゃ焦ってる……。
どうして?俺といるのが恥ずかしい?
早く答えないとか、これ?
「っ、わ、わかったから、優蘭!」
「へっ、ありがとう……。
本当に、ありがとう」
一瞬驚いてパァっと笑顔になった、優蘭。
「……可愛い……」
思わず本人目の前にそう、口走っていた。
気まずい、慣れないこの状況……。
去年なら俺は平気だったはずだけどな。
その本人、つまり優蘭はしばらくポカーンと
していたが、だんだん顔が赤くなって
「まっ、まぁ、よろしくっ」
逃げていった。
正直、俺も恥ずかしかった。
俺、絶対優蘭に嫌われただろうな。
そして放課後が来た。
「……なぁ、優蘭。俺はどうすればいいんだ?」
「李空の席で座っててよ。
私はそれをデッサンするの。
ただ、それだけだよ?」
そうして俺の前の席に着いて
スケッチブックを構えた。
「……ずっと、このまま?」
既に書き始めていた、優蘭。
仕方ないことだけど、
自然と目があってしまう。
……恥ずかしい。
でも嬉しい。
「そうだよ?大変だし動画観ててもいーよ」
でも真剣な目をした優蘭を見て
それはやめた。けど、
……デッサンのモデル、大変だな。
本当にツライ。
サッサッと鉛筆が紙を滑る音が
無音の教室で響いている。
サッと優蘭を見るとまた、目があった。
一時は真剣な顔だったけど
恥ずかしそうに顔を背けた
……本当に可愛い……
って俺は何を考えているんだっ!
どうせ、優蘭はモテるんだ。
デッサンのモデルだって、
たまたまなっただけだし。
俺と優蘭は釣り合う訳がない。
そんなの、わかりきっているのに。
「あのさ、李空は……えっと、さぁ」
「俺がどうかしたのか?」
「えっ、いや。好きな……人とかいるの?」
恥ずかしそうにスケッチブックに
顔を隠してほんの少しだけ俺を覗き見る。
「……いる。けど、叶わないと思う」
優蘭のこと好きなのに……言えない。
ずっと、言えないままかもしれない。
俺なら、あり得るな。
「……ふーん。そうなんだ」
どこか安堵しているように見えた。
気のせいだろう。
スーッと優蘭はため息をついた。
「で、優蘭は誰かいるのか?」
「……まぁ、いるけど。
さすがに言えないよ」
恥ずかしそうに少しだけ出していた顔を
完全に隠した。
やっぱり、俺には無理なんだ。
優蘭に好きな人がいる。
優蘭は学年でも女神とも吟われている。
高嶺の華。
優蘭に告白されたら
どんな男もきっと……
「頑張れよ、その恋。
応援するから」
俺なりの爽やかな笑顔で返したつもりだった。
けど、そんな笑顔本物とは言えなかった。
でも優蘭が笑顔でいれるなら
その恋を応援したい。
俺なんかが恋しちゃいけなかったんだ。
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(優蘭視点)
「……あ、うん。頑張る、よ」
……言えない。
言える訳がないよ。
私が李空のこと好きだなんて。
それもあの頃から好きだなんて。
「優蘭ー、リレー頑張ってよー!」
「うん、頑張るよっ!」
体育祭の練習。
私はリレー選手に選ばれた。
そして陸上部の李空も。
幸運なことに
私→李空でバトンを繋げるのです!
「優蘭、バトン練しよーぜ?」
「うん、そうだね、李空!」
私は李空から少し離れて
合図をした。
そして走り出す。
だんだんと近づいてくる。
そろそろっ!
「李空、はいっ!」
なんとか、バトンを繋げられた。
走り終わった李空が私に近づいてくる。
「はぁー、疲れたぁー。
あ、バトンパス良かったよな?」
「うんっ!私もそう思うよ」
「本当、お前凄いよな?
美術部なのにリレ選とかさ」
ポンポン
「ご褒美だって、なんてな?
明日の本番、頑張ろーぜっ?」
「……うん、頑張るよ!」
……頭ポンポンとか、恥ずかしいし。
めっちゃ照れるし。
李空、カッコ良すぎだし……。
そんな気持ちで本番を迎えた。
グラウンドはみんなの歓声で盛り上がって
最後の競技、団対抗リレー。
クラスでは私と李空以外に二人ずつ出場。
でもかなり前半の方で練習しなかった。
選手移動が本部からかかって
私は李空に言った。
「頑張ろ、李空っ!」
最大限の笑顔で言ったはず。
なのに
「……あ、うん。頑張ろーな!」
どこか歯切れが悪い。
目を逸らしていたし。
どうしてなの?
そんなモヤモヤを断ち切るように
パンッ!として
競技が始まっていた。
私の前までは私たちの団がトップ。
プレッシャーに押し潰されそうだった。
レーンに出るとそれはもっと大きくなった。
大きく息を吸い、吐いて。
それを繰り返して何とかしていた。
先輩が近づいてくるっ、
嫌、恐い、無理、駄目だ、無理っ!
「ハイッ!」
ギリギリで受け取った。
だからか思うように走れない。
他の団の人が近づいてくるっ、
来るな、来ないでっ!
全力で走っているのに
どうして近づいてくるのっ。
どんどんどんどんどんどんどんどん、
近づいてきて
「あっ……」
抜かされた。
それも二人に。
もう、穴があったら入りたい。
こんなの、信じたくない……やだ。
「おいっ、優蘭ぁーー!
俺にバトンを繋げぇーー!!」
「……うんっ」
その言葉でなんとか走りきった。
その言葉に突き動かされた。
その後はぼんやりと走る姿を眺めるだけ。
それで結果は二位。
私が順位を落としたあと、
大きくあった差をどんどん小さくして
一人を抜いた。
でも駄目だった。
完全に私のせいだ。
私のせいで負けたんだ。
そう、私のせいで。
「落ち込むなよ、優蘭」
気づけば李空がいた。
- Re: 恋愛とかなんかさらっと書くコーナー ( No.19 )
- 日時: 2017/05/08 20:54
- 名前: モズ (ID: w32H.V4h)
反応する気にもなれなかった。
それほど酷く落ち込んでいた。
「なぁ、優蘭。落ち込むな。
誰も優蘭のことを責めてない」
心のなかではそんなこと、思っていない。
あいつのせいで負けたって思っている。
先輩たちもクラスのみんなも
それに……李空も。
「体育祭終わったら一緒に帰ろう。
そうしよう、優蘭」
そしてそのまま二人で、無言で
クラスのテントに戻っていった。
ぼんやりとしていて
気づけばもう、放課後。
友達が魂の抜けた私を励まそうとしている。
けど反応できなかった。
あぁ、私はそんな人なんだ。
人の恩をそんな風にして……
駄目な人間だ。
「優蘭、委員会で片付けないだろ?
一緒に帰ろうぜ」
女子がいるなかで
わざわざそんなことを言った。
……でも、嬉しい。
何も言わずにリュックを持って
李空に着いて行った。
「落ち込んでるか、まだ」
何もしたくない。
帰りたい、でも着いてきてしまった。
「……なんか、用なの。
もう、帰りたい……」
私のせいで負けた。
暴言吐くならとっととして欲しい。
それか、帰らせ……て?
「大丈夫、俺でよければ話聞く。
殴っても良い、蹴ってもいい」
セリフは馬鹿にしか思えなかったけど、
李空に優しく包まれて涙が出てきた。
嗚咽が聞こえないようにしてたのに
駄目、どんどん大きくなっていった。
「泣いてていいよ、ずっと」
……泣きまくった。
大したことじゃないのに……。
李空にしがみついて泣き続けた。
李空がとっても温かくて安心した。
今でも忘れない。
忘れたくない。
その温もりは今でも覚えてる。
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そうしてなんとか書き終えた。
書き始めたときには何も話せなかった。
けど、今は話しながら楽しく描いている。
李空が時々見せる笑顔に私の心が
苦しくなりそうで、でも李空の笑顔は好き。
いつか李空に対する思いが溢れてしまったら
こうして楽しく話せなくなる。
それは嫌。
だけど、だけど……。
デッサン、これは本当にするべきこと。
でもこの機会に言えたらいいな。
でも、李空はそんなこと覚えてるのかな?
それにイケメンだから私なんて……
興味がないんだろうな。
今回だって、人が良いから引き受けてくれた。
きっとこの思い、届かないだろうけど、
それでも私は李空が好きだよ。
「ようやく、描けたよ。
今までありがとう。私なんかのために」
もう、ただの友達として
李空への思いは捨ててしまおう。
その方がいいんだ、きっと、きっと。
この思い、きっと君には届かないんだ。
「ちょっと耳貸してくれないか?」
でも俺は後悔したくない。
言うなら今しか……ない。
「あ、うん。どうしたの?」
そう言って優蘭と近づくと
やっぱり恥ずかしい。
たくさん話しても慣れないことは慣れない。
けど、言わなきゃダメなんだ。
言わなきゃ絶対後悔する。
そんなの、わかりきっているから。
新学期に好きになったと理解したのは
優蘭に告白するのを諦めたから。
告白して絶対に振られるのはわかっている。
だからその後に自分が苦しくならないように。
悲しくならないように。
本当はずっと、好きだったんだ。
体育祭の時からずっと、好きだったんだ。
あの、体育祭からずっと、ずっと……
心のモヤモヤとして俺のなかで
大きくなっていったんだ。
……優蘭への思いが。
「俺、ずっと前から……お前のことが
好きなんだ。どうせ俺を振るのはわかってる。
わかってたけど、思いだけは伝えたくて、
だから、今までありがとう。
これからはただの友達としてよろしく」
そういうと優蘭は泣き出していた。
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「…………」
何も言えずにただ、泣く。
それしか出来なかった。
あの、体育祭の時みたいに……。
嬉しい、嬉しい。
それはわかっていたけど、
私が思いを伝えないと李空とは
ただの友達になっちゃう。
そんなの、嫌。
「えっ、優……蘭?」
李空はポカーンとしていた。
私がいきなり泣いたまんま、抱きついたから。
頭から覆い被さるように抱きついた。
「……私も李空のこと、好きだから。
ただの友達なんて、嫌だから」
ボロボロと涙が出て視界がぼやける。
それと、私以外の嗚咽が聞こえた。
「っ、優……蘭っ」
泣き声で名前を呼ばれて
そして懐かしい温もりを感じた。
李空の温かさ、大好き。
「李空、これからは私を……
よろしく。彼氏として」
「わかってるよ、優蘭……」
馬鹿馬鹿しくて笑えた。
けど、本心から二人で笑った。
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あの日から私たちは楽しい。
恋人が出来た、からじゃない。
「本当の気持ち」をようやく伝えられたから。
これからも本心を大切にしたい。
そして今日もデッサンをする。
モデルは李空。
本当に大好きな李空を描ける。
そんな私はとても幸せ者だね。
「デッサン」END
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しっかり書けたとは思えませんが、
読んでいただき、ありがとうです。