コメディ・ライト小説(新)

Re: 彼女+僕=珈琲牛乳。 ~bitter&sweet~ ( No.13 )
日時: 2017/06/11 20:13
名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
参照: http://From iPad@

■:第3話 「昼休み」

それからというもの、僕は度々屋上へ行くようになった。
……もちろん、昼休みに屋上に行くと誰もいない──なんていうこともしばしばあるのだけれど。

一人でも僕は屋上で昼休みを過ごすことが大体だ。環の言っていた通りで、ここは何だか居心地が良いのだ。

「一人だから寂しい」とか、そういう感覚がまるで消えてしまうほどに。


……今日はいるだろうか、と屋上への階段を上がりながら僕は考えた。
本当に環がいる時といない時は不定期すぎて、予測もつかないのだ。

ドアノブに手を乗せて、今日はきっといる……と信じてからドアを開いた。

視界には雲と青い空の割合が5:5くらいの空、そして下には……環が立っていた──後ろ姿を見つけて、僕は小走りでそっちへ行く。

「ん、やっぱり来た。毎日君はここに来ているの?」
環はなぜか僕のことをずっと「君」と呼ぶ。
─なんてきっと環のことだから、特に深い意味はないのだろうと思い、わざわざ聞くこともしない。

「まぁね。昼休み暇だし、僕もここ好きだから」
「そうなんだ。良さ分かってくれる人がいて嬉しいな」
珈琲牛乳を飲みながら、いつもの笑顔で環は笑った。
そんな環を見ながら、僕はずっと言いたかったことを頭の中で整理しながら口にし始める。

「環さ、俺がこの学校に来てから1回も教室来てなくない? 今度1回教室来いよ」
「そうだなぁ。まぁ君がそう言うならば、仕方がない」
「じゃあ明日!」
「明日!?」
そんな……まだ心の準備ができてない、と環が珍しく僕に焦った表情を見せてきた。

「……明日教室来れば、珈琲牛乳買ってあげる」
ふと思い浮かんだ言葉。環に向かってそう行ってみる。

「分かった! じゃあ行く……もう珈琲牛乳買うお金の準備しておいてね」
結構簡単かもしれない。


そうこうしているうちに、昼休みの終了まであと少しだ。ボチボチ教室へ戻ろうかな、とドアへ向かおうとしたら……

「あとさ、明日教室に私が行った時はあんまり話しかけないで?……嫌とかじゃなくて、何だか君とは屋上の仲間、でありたいから。私と君はそれ以下でもそれ以上でもないから」

多分ね、と環は言葉の最後にそう付けたけれど何だか少しだけ切ない気持ちになった。
きゅっと胸が締め付けられるような感じで……。

「分かった。じゃあ明日は、教室でな。もちろん待ち合わせは屋上で」

強く頷いた環の顔はもう、いつも通りの表情だった。
──けれどさっきのは、若干突き放されたような気持ちになった。

それでもまずは明日、環が学校の屋上以外で過ごす部分が見られるかもしれないチャンスかもしれないのだ。
──珈琲牛乳、準備しなきゃな。


**

Re: 彼女+僕=珈琲牛乳。 ~bitter&sweet~ ( No.14 )
日時: 2017/07/28 01:00
名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
参照: http://From iPad@

■:第4話 「教室で」

次の日、僕はいつも通りの日々をいつも通り「ではない」心境で送っていた。
少し意味が複雑に聞こえるかもしれないけれど、要するに「普通に見えて普通じゃない」──ということだ。

僕が引っ越してきてから、初めて環が教室に入る……予定の日なのだ。

他の生徒にすれば当たり前のことなのだが、環のことになると途端に特別感が増す。


あくまでもいつも通りを装って、学校までの道を僕は歩いた。


*

「あ」
教室には、誰もいない。
……流石にちょっと早く着きすぎたかもしれない。

数学で出された課題でもやって時間を潰そうかとノートを開いて、シャーペンを取り出そうとすると教室のドアが開いた。

「おはようございます……新羅くん、今日は早いんですね」
委員長が入ってきた。

「ま、まぁね。早起きしすぎちゃって……」
どんな言い訳だよ、と自分に心の中でツッコミを入れてため息をついた。
環が授業を受ける──ということをこんなにも変にごまかす必要があるのだろうか。

そのうち、委員長にも伝わることだというのに……。



そのあと僕らが言葉を交わすことはなく、僕も数学の課題に集中することができた。

……しばらくすると、部活の朝練が終わってやってくる生徒が増えてきた。
朝のサッパリとした空気が、一気にモワッとした空気に変わってしまった。

ノートから顔をあげて、後ろの窓際席──環の席に視線をやるが、まだいない。

「やっぱりいきなりは無理だったか……」
「ん? 壮馬、なんか言った?」
「え!? いや、ごめん。気にしないで」
やばい、心の中で思ってたことふが口に出てしまっていた。

「おう」と日向は笑顔を俺に向けてきた。
何だか変に誤魔化してしまったのが申し訳なくなって来る。


*

残り2分でチャイムが鳴ってしまう。
──やっぱり来ないのだろうか……そう諦めかけた時だった。

机に開いたノートを閉じていた最中、ガラっと勢いよく扉の開く音がした。


僕も含め、クラス全員でそこへ一斉に視線をやると──いつもより寝癖が多いような気がする、制服を身にまとった環がいた。

思わず声を出して立ち上がりそうになったが、慌ててこらえ昨日環から言われた言葉を思い返していた。

屋上の仲間であって、それ以上でも以下でもない──。
すごく引っかかっている。

「どういう意味なの?」って屋上でいつも通りを装えば、普通に答えてくれるかもしれない。
でも何故か、今の僕にはそれに対しての躊躇ちゅうちょが大きいのだ。

「環じゃん! 珍しい!!」
日向が大声を出す。その言葉には歓迎が込められてるようだと聞いているだけの僕も感じた。
少し照れたような表情を浮かべた環が一瞬こっちに視線をやった気がするのは僕の自意識が過剰なだけだろうか……。


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