コメディ・ライト小説(新)
- Re: 彼女+僕=珈琲牛乳。 ~bitter&sweet~ ( No.9 )
- 日時: 2017/05/31 22:29
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://From iPad@
■:第1話 「自己紹介」
「新羅壮馬です」
小学校や中学校のように、みんながわぁっと歓声をあげて僕を向かい入れるわけこともなければ、普通に僕の口から発せられた名前を聞いてなにか反応をするわけでもない。
……よろしくお願いします、という僕の言葉とともにそこそこ大きめの拍手が向かい入れてくれた。
拍手の音を聞く限り、今のところ特に誰も僕に反感を抱いている者はいなさそうだった。
*
──とりあえず慣れるまではこの席で、と先生に言われた席は教卓の真ん前だった。
密かに、よくあるパターンの一番後ろの窓際を期待していた僕にはかなりダメージが大きかった。
「えっと、佐久間です。このクラスの一応学級委員だからなにかあれば聞いて」
さっぱりとした口調に圧倒されていると、後ろから男子の声が聞こえた。
「蒼は誰にもこんな感じだから気にすることないよ! あっ、俺は日向光輝っていって、こんな見た目だけど一応蒼と学級委員やってる! ちなみに蒼とは中学校から一緒だ!」
こんな見た目、という言葉に引っかかり改めて日向という男子の容姿を見てみると確かに所謂「学級委員タイプ」というのとはかけ離れている気がした。
──というか、最初から気になっていたことだけれどこの学校は僕は通っていた高校より校則が緩い気がする。
女子も結構派手だし、男子も制服を着崩している奴ばっかりだ。
佐久間さんはそうでもないけど、その他の女子はかなり派手。
前に僕がいた学校は俗にいう都会の高校だったけど、ここもなかなか劣らない派手さで、あまり前と変化が少なくて不思議な感覚だ。
これから過ごすこのクラス内を見回してみる……──と、一つ席がポツンと空いていた。
俺が座りたいなと思っていた、一番後ろの窓際……。
「なぁ!」
俺は後ろにいた日向に声をかけた。
「あの窓際んとこの席って、誰の席?」
「──ん? あぁ、あの席は今入院してるけど、環っていう女子の席だ。退院して学校来ててもあまり授業を受けない奴でよく屋上にいるから、興味あるなら行ってみたらどーだ?」
ちょっと思っていたことだけど、日向は俺が聞いたことに加えて俺がこれから質問するであろうことも予め一緒にまとめて話してくれる。
人は見た目によらないのかもしれない。
「屋上……」
学校の屋上なんて、気になる要素が詰まっている──。
……もうすぐで、僕と彼女が出会う。
**
- Re: 彼女+僕=珈琲牛乳。 ~bitter&sweet~ ( No.10 )
- 日時: 2017/06/02 16:15
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://From iPad@
■:第2話 「出会い」
昼休み、早速日向に言われた屋上に行くことにした。
──流石に今日はいないよな、と冗談っぽく日向に尋ねると「そうでもないかもよ」というなんとも曖昧な返事が返ってきた。
要するに、誰もその女子のことを知らないわけだ。
……正直どんな人なのか想像も出来ないなぁ。
教室を出て、階段を駆け上がる。
屋上の高さの階段はあまり掃除がされていないのか、ホコリっぽく……これから屋上に行く時にここを通るのかと思うと少し重い気持ちになった。
キキィーっという、建付けの悪そうな音をあげながら、屋上へのドアを開くと遠く離れた先に1人の少女が立っていた。
想像も出来なかったのに、僕は一瞬でその人がきっと日向の言っていた窓際の席の人だと確信した。
「あの……」
後ろからそっと声をかける。
ピクッと体を震わせてから、その人──彼女はこちらを向いた。
僕と彼女との間を風が勢いよく通っていった──……。
「私は珈琲牛乳が好き。君はどう?」
なにかの呪文のように聞こえたその言葉が、彼女の口から発せられたものだと気づくのに時間を使ってしまった。
「僕も、好きだよ……珈琲牛乳」
なんだろう、このやり取り。
「多分私は珈琲牛乳から出来てると思うの」
謎多き彼女は、僕の言葉をちゃんと聞いたのだろうか。
まるで会話が成り立っていない。
……こうなったら、僕の方から話題提供をしよう。
「君は、何ていうの?」
「何ていうの、ってどういうこと?」
「んー……だから、名前だよ」
「あぁ、環。城本環です」
少しきつい言い方になってしまったかな、と思っていたら普通のテンションで彼女からの返事が来たので安心した。
やっぱり彼女が例の「授業を受けないで、屋上にいる生徒」だ。
話してたら、そんなに感じなかったけど入院したりするって言ってたよな日向。
──なにか病気でもあるのか?……いやいきなり聞いたら、馴れ馴れしいよなぁ……。
そうこう考えていると、お互い沈黙が生まれてしまいなかなか気まずくなってしまった。
「君は?……名前」
城本さんから、僕に話しかけてきた。
「えっと、新羅壮馬です」
なんだか先生や先輩に話すような口調になっちゃったな──変に思われてないといいけど。
「そっか! 私達は同じクラスなの?」
「あぁ」
「ふーん。どうやってここの場所知った?」
「日向から聞いた」
「やっぱり光輝か。ちょっとそうかなって思ってた」
「城本さんは、教室行かないの?」
「うん。……まぁ単純にここの居心地の良さに目覚めちゃったんだけどね」
そう言って笑った顔は、初めてみた笑顔だったけど無理してる感じがした。
──多分、だけど。
「あと、普通に環でいいよ。なんだか城本さんって長いでしょ?」
「ありがとう。じゃあそうする。……僕のことも──」
壮馬でいいよ、と言いかけた時には環は手に持っていた珈琲牛乳のパックの一つを僕に差し出してきた。
「これあげる」
「好きなものなんでしょ? もらっちゃっていいの?」
「一人より二人の方が美味しいから」
もう一度環が笑った。
きっと今の笑顔が彼女の心から笑った笑顔なのだろう。
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