コメディ・ライト小説(新)

Re: 狐に嫁入り ( No.13 )
日時: 2017/08/18 18:34
名前: 一匹羊。 (ID: UJ4pjK4/)

7話

「じゃあ御狐ちゃんでいいですか?」
「フラットだなおい」

御狐様と呼べど、ここでそう呼ばれ祀られている神様が狐と言う訳ではない。……と言うか、実際のところは何を信仰しているのかは分からないらしい。だからこそカガリ=御狐様に結びつかなかったわけだが。御狐様って信仰されてる内にマジで狐になったのかも。
「その仮説は非常にグッドですよ高坂さん」
「黙って聞いててカガリ」
「あれ、僕=御狐様ですよね……? 好感度低くないですか?」
「不審者だからじゃねぇ?」
「蒼馬さんまで冷たくなってる……」
蒼馬は元から冷たかったよ。
昔からここらは妖怪の話が多かった。中でも実しやかに語られていたのが、いや、実際に人々が被害を受けていたのが旧鼠。長く生きた鼠の妖怪だ。多くの猫が噛み殺され、遂には子供達まで被害を受けるようになり、当時の人は神頼みに走ったと言う。それが、狐の天敵である狐を遣いに持つ稲荷神だった。
その後すぐ噛み殺された巨大な鼠の死体が何体と出て来たことで、狐信仰が始まった。
「まだ言われてるんですか、照れますねえ。あいつらは悪かったです」
「ほんと夢が壊れる……」
「夢見てくれてたんですか⁉︎ 僕を夢に見る高坂さんも中々に愛らしいですね、ねえ夢見たんですか、高坂さ」
はじめは勿論お稲荷様にお礼を言っていたのだけど、いつの間にか言い伝えられている内の妖怪のおかげと言い換えられ、それから、神の使いの狐が助けてくれたのだと言う派閥と妖怪が助けてくれたのだと言う派閥に分かれ、ややこしいので御狐様に統一された。正体はわからない、でも旧鼠を殺してくれたらしい、『御狐様』を崇める内に当時の領地にはいいことが増えたらしく、そのまま祠が作られ、遂には神社が出来た。
「サクセスストーリーだったんですねぇ土地神様」
「こんな奴に様付けしなくていいんだよ舞花」
私が素早く突っ込むと、カガリはほけほけと笑ってでもまあ確かに、守るべき人の子に一線置かれるのは寂しいですねと言った。そこで首を傾げた舞花がこうだ。
「じゃあ御狐ちゃんでいいですか?」
「もちろんいいですよ」
「フラットだなおい」
「あれ、蒼馬さん僕のことなんて」
「狐」
妖は調伏するもの、と踏ん反り返る蒼馬。それでいいのか陰陽師の末裔……。なあなあ、と修斗が手をあげる。
「結局、その——土地神様はなんの妖怪だったんだ? 地元じゃない俺たちも守っているのか」
「ううむ、それは大いなる謎ですね。僕自身よく分かっていませんがしかしそれでいいんです。それで人を守れるなら……」
カッコよくまとめたけど要するにはぐらかしたよね?
「あ、後この地に一度でも降り立った人は全てが守護対象ですよ。修斗さんや舞花さんは特にね……どうやら話が長くなりそうだ。続きは廊下ではなく室内でしませんか? 今日この時間見廻りはいませんし、クッキーもご馳走します」
「我が物顔のところ悪いけどここ一応人が経営してる学校だからね?」
「段々気持ちよくなってきました」
「変態の道を歩み始めてしまった」
大事な御狐様(らしきもの)を変態にまで蹴落としてしまったことに関して懊悩していると、スマホのバイブレーションに気付いた。
「あー、明日美今からくるって。……てか今いるって、ええ!?」
そして開いている窓から侵入していた明日美は、カガリを見て叫んだのだ。

「理事長!?」