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コメディ・ライト小説(新)
- 千年の樹 ( No.1 )
- 日時: 2017/07/13 01:02
- 名前: ひなた ◆NsLg9LxcnY (ID: U7ARsfaj)
千年の樹
まっすぐにみぎうでを伸ばし、ゆびさきでそっと木の幹にふれる。ひんやりと、つめたい。ずっと、待っていたのだろうか。訪れ人を……わたし、を。
おおきく風がふいて、わたしは髪をおさえつつ空をふりあおいだ。視界をおおうほどの、あおあおとした葉が、ごうかいな音をたててゆれていた。ゆびさきでふれている幹も、わたしふたり分のうででも抱きとめられないほどりっぱだが、この青葉の海といったらなんだ。思考を、奪われてしまうほどだ。
かぜがやみ、ひらりひらりと楕円の葉がちっていく。それをみて、ほぅと息をつくと、わたしはじぶんのゆびさきに視線をもどす。かたく、ぶあつい樹皮。でも、つたわってくる温度はさみしくて、わたしはやさしくそれをなでた。ねぇ、ひとりなの? わたしもだよ。
す…っとゆびさきのかたい感触がなくなる。めのまえにはおおきなひかりの穴。しろく、やわらかい、ひかり。
みせてくれるの?
青葉をみあげて、おもわずほほえむ。こわくはない。
正面のひかりに目をもどし、一歩をふみだす。
みせて。あなたがみてきたものを。
あたたかなひかりにつつまれて、わたしはゆっくりと目をとじた。
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