コメディ・ライト小説(新)

ぼくは ( No.15 )
日時: 2020/03/02 23:52
名前: ひなた ◆NsLg9LxcnY (ID: E616B4Au)

ぼくは



 ぼくは、無数にいのちを吹き込まれる。

 ぼくは、たくさんいる。青いぼくもいれば、赤いぼくもいる。まあるいぼくもいれば、耳がはえてるぼくもいる。
 ぼくはたくさんいて、たいていみんないっしょにぷかぷか浮いている。

 ときどきぼくは、愛される。満面の笑みがぼくを見て、甲高い声がぼくをつらぬく。
 ああ、そんなに揺らしたら。
 いのちが少しずつ溶けていく。でもぼくは、とてもしあわせ。

 ときどきぼくは、自由になる。いちめんの青にほうりだされることもあれば、まばゆいだいだいにたたずむこともある。うすむらさきのつめたい空気になげだされることも、まあ、たまにある。けど、あんまりない。

 自由になったぼくは、思いをはせる。
 いまごろぼくは、愛されているかな。
 ぼくも、ぼくも、ぼくも、みいんないっしょに、愛されたらいいのに。

 ぼくには、天敵がいる。からすと、あと、かぜ。
 自由なぼくは、だけど自由ではないから、かぜに吹かれでもしたらさあ大変。ぼくのいのちを、ぼくが守れたらいいのにね。

 ああ、あと、もうひとつ。
 ぼくの天敵は、ぼくを愛する存在だ。
 あの可愛い笑顔はどこへやら。
 そんなにぶつけたら、ぼくは痛いよ。ぽいっと手を離されたら、ぼくだってさみしいよ。


 ぼくは、無数にいのちを吹き込まれる。
 ときどきぼくは、愛される。
 いのちがなくなるそのときまで、愛されることを夢みてる。