コメディ・ライト小説(新)
- Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ募集中』 ( No.102 )
- 日時: 2017/09/02 22:47
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
35.あなたにとって今この場所は。
ショッピングモール、2階の浴衣売り場にて――実際に買うのは2人だが、4人がわいわい騒ぎながら浴衣を選んでいた。
もうかれこれ1時間は経つが、まだ意味もなく色々探し回ったりしている。
「もうええわ…もう疲れた……」
「そうよ、次から次へと持って来すぎよ。私、あの紺色のにしようと思うんだけど――」
「駄目だよー、そんな適当に決めたら!沙彩ちゃん、夏祭りなんだと思ってるのー!?」
「またこの妙に情熱的な夏音……はぁ、もうあと2時間くらいは買い物に付き合わないといけないかも」
「みたいやな……」
沙彩とひかりは呆れつつも、やはり内心楽しさは隠せずに過ごしていた。
ちなみに、千春も夏音と同じように次から次へと色々な浴衣を沙彩とひかりに合わせに来ている。浴衣の取り合わせが良すぎたのが何とも、ある意味失敗なのかもしれない。
千春と夏音は楽しそうだが、それに付き合わされる沙彩とひかりはかなり疲れていた。
そんな沙彩とひかりの疲労感など知らず、千春と夏音は赤だったり青だったり黒だったり……様々な色の浴衣を沙彩とひかりに合わせては違うなぁ、これかも、と騒いでいた。
○**
「お買い上げ有り難うございました!」
――店員の声を背に、結局2時間半ほど居座っていた浴衣を売っている店から離れる。
沙彩は紺色がベースとなっていて、桃色の大きな花がデザインされた比較的落ち着いている浴衣。元々沙彩は大人っぽい容姿をしているので、これを着ればさらに中学2年生には見えない容姿になるのだろう――。
ひかりは白がベースに、パステルカラーの水玉が散りばめられたデザインの浴衣。ひかりは他の女子よりか色が黒く、顔がはっきりとしているから薄い色の方が良いよー、という夏音のアドバイスを受けてそれを選んだ。
「もう12時か…」
今日は朝9時半頃――開店したばかりから居るが、もうお昼。このショッピングモール内にある和食屋さんにでも行こうということになった。
「―――天ぷら蕎麦2つと、きつねうどん2つ。それからサイダーを4つお願いしまーす」
「かしこまりました、では注文の確認を致します――」
夏音が店員に向かい全員の注文を言う。
注文の確認が終わった後、店員は厨房の方へと戻っていった。
「天ぷら蕎麦ときつねうどんは両方とも税込900円で、サイダーは税込350円らしいから…準備しておいてねー」
夏音は財布を整理しながら3人に言う。
「今日本当2人の浴衣、良いの買えたよね!」
「まぁうちも結構お気に入りやわ、ありがとうな~」
「私も1人じゃ選べなかっただろうし…ありがと、2人とも」
しばらく、そんな話をしていると。
「お待たせいたしました、きつねうどん2つです。蕎麦の方はもう少々お待ちください」
―――きつねうどんを頼んだのは沙彩とひかり。天ぷら蕎麦は夏音と千春。
その宣告を聞いたとき、かなりお腹がすいているのか夏音と千春は机に2人同時に項垂れた。
「ううー…お腹減った…」
「あたしもきつねうどん頼めば良かったなぁー」
2人の嘆く様子に、何だか可笑しさがこみ上げてきて沙彩は静かにだが肩で笑う。
「ちょ!沙彩ちゃん笑ってるー」
「沙彩ちゃん、最近よく笑うようになったよね!」
一拍おいて指摘され、思わずきょとんと首をかしげる。――よく笑うようになった?
「――ねぇ。沙彩ちゃんは今この空間が、楽しい?」
沙彩が驚きに口を小さく開けてぽかんとしていると、夏音がいつもの気だるい喋り方ではなくどこか真剣に――そう聞いていた。