コメディ・ライト小説(新)
- Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ募集中』 ( No.108 )
- 日時: 2017/09/04 23:17
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
37.自分が不登校だということを…。
「…言うと思ったー」
「え?」
沙彩が言った「考えておく」という言葉に、夏音はいかにも分かりやすいなぁみたいな顔で頬杖をつきながら沙彩を見ていた。
「これもまぁ曖昧な返事かもしれないけど……沙彩ちゃんにしては…学校が絡んだことで考えとくって言ったのは初めてじゃないー?」
夏音に言われて気付く。そういえば、今までは頑なに嫌と断っていた。そんな少し前と比べてみれば――かなりの成長かもしれない。
(一番初めに動いてくれた――秋本くんのおかげなのかな)
夏音は密かにそう思って――
「――あ!知らないうちに蕎麦来てるしうどん冷めてるんじゃないー!?」
「……あ…」
それ以降は、殆ど何も喋らずただ蕎麦とうどんを食べる音だけが4人の中に流れた。
○**○
「楽しかったね~」
「……そうね」
まだ夏だから、陽は高いところにある――17時だ。結局昼ご飯を食べ終わった後、バッグやら髪飾りやらと色々買った。主に夏音と千春の提案で。沙彩とひかりは完全に振り回される形となったショッピングだったが――楽しかったことは確かだ。
「4日楽しみやな。うちら4人と秋本くんと松原くんとで行くんやろ?」
「そうだよー、もう誘ってokもらっておいたから。ひかりちゃんは人見知りな所もあるからねぇ……けど同じ3組だし、2人とも面白い人たちだから大丈夫なはずだけどねー」
「別に関西人は必ず人に面白さ求めるわけやないで?そこらへんは誤解せんといて欲しいわ」
まだ明るい帰り道――そんな他愛もない会話が交わされる。
「せや!沙彩ちゃん、あの公園の看板まで走ろ!」
「……は?え、なんで…」
「勝負勝負!関西人は勝負にこだわるねん!」
急なひかりの提案。突然よく分からない勝負を挑まれた沙彩はおろおろしながらも、ひかりがクラウチングスタートで構えたので沙彩も渋々構える。
「よ、よーい…スタート!」
千春もあまりこの状況を飲み込めていないのか、少し自信のない声でかけ声を上げる。
――現役陸上部であるひかり、元々陸上で走っていた沙彩。文字だけ見ればその差は圧倒的かもしれないが、かなり予想を超える結果となっていた。
「え……沙、沙彩ちゃん……早っ…」
突然にもかかわらず、そしておそらく久しぶりにもかかわらず。沙彩は何だか驚異的な速さを見せていた。夏音が見ていたところ沙彩が少し早く看板を通過、最近陸上はやっていないだろうにもの凄いスピードだった。
(佐野から逃げてるからか)
多分これで勝手に鍛えられたんだろうと沙彩は思った。
(でも……――)
横でぜぇぜぇと肩で息をしているひかり、沙彩ちゃん早っ!と驚く千春と夏音。そして帰り道に響く楽しそうな笑い声。
それらを聞いて、見ていると――一瞬、自分が不登校だと言うことを忘れるような楽しみが沙彩にはあった。