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コメディ・ライト小説(新)
- Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ募集中(=゚ω゚)ノ』 ( No.11 )
- 日時: 2017/07/23 13:10
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
06.静かに消える声。
『え……お母さんと、お父さんが……?』
丁度、中学1年生の夏休み。父が母を職場へ送っていき、そのまま母も近くの職場へ行く――沙彩の家庭はそのような事情で、一人っ子の沙彩はいつも家で独りだった。
自分の部屋にいると、突然リビングからなる電話の音。
いたずら電話かな、と思い沙彩は取らずにいると、その音は鳴りやまない。もしいたずらなら文句を言ってやろうと思い部屋からリビングへ移動して電話を取ると――
『涼風市立病院の杉野と申します!月島沙彩さんですか!?至急涼風市立病院の方へ来てください!』
電話を取るとすぐに聞こえてきた焦った声。
『あの……どうしたんですか?』
いくら焦られても、事情を説明してもらわないと困る。どうしたの、そんな気持ちはあったがとりあえず冷静に聞いてみた。
『貴女のお母様とお父様が……――!!』
『―――…え?』
返ってきた言葉は衝撃的だった。
『――交通事故で――!!』
沙彩は反射的とも言える素早い行動で自転車を走らせ、市立病院へと向かう。
(無事で、いて……!)
切実な願いを胸に留めながら。
○**
『おか……あさん……おとうさ……ぅ、あああぁ…――』
息の根が止まる――そんなことは沙彩には想像も出来なかった。
……けれど、それが現実に起こってしまった。
あふれ出る涙を見られたくなくて、近くに静かな森――子どもたちの遊び場になっている森で、泣きじゃくった。
……お母さん、お父さん、どうして交通事故なんかに――?涙の余り声は出ないけれど、沙彩はずっと心の中で繰り返していた。
『もう……ずっと独りなんだ……』
父も母も、朝と夜は居た。独りを我慢するのは昼だけで良かったのに。
声に出すと、また涙が流れる。
『ど…すれば……いい……のよ……』
涙でかれた声が、静かな森に霧散した――。
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