コメディ・ライト小説(新)

Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ募集中』 ( No.112 )
日時: 2017/09/09 23:58
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

38.夏祭りの始まり。



「………うー…ん、よし!」

独り言のように呟いて沙彩は鏡で自分の姿を確認し、小さくガッツポーズをする。
今日は夏祭り前日――沙彩は浴衣の着付けを練習していた。

おそらく当日、それほどの時間はないだろうし時間があっても色々忙しいだろう。前日から準備しておこうと思ったのはどんな心境の変化か――沙彩は考えもしなかったが、はっきり言って沙彩はかなり浮かれている。
自分では気付いていないだけで――。

すると、机の上に置いた携帯の着信音が鳴り響いた。件名の所には夏音とある。通話ボタンを押して耳の横に当てると――

『やっほー、沙彩ちゃん。明日の祭り楽しみだね!』
「……何の電話?」

気恥ずかしくなって楽しみだね、という言葉には応えられず――無愛想な返し方になってしまった。

『明日の集合時間。6時半から始まるから……6時に神社の近くの公園に集合ねー!もう皆には言ってあるから、そんなわけでよろしくー』
「あ、分かった…」

ささっとメモを取っておき、電話を切る。

「……」

このとき自分が浮き足立っていることに初めて気付く沙彩であった。


○**○


そしてついに夏祭り当日――浴衣を着て、髪もいつもとは少し違う、サイドテールにして沙彩は家を出ようとしていた。
すると、遠くからよく透る声が聞こえる。

「沙彩ちゃん!!」

沙彩の姿を遠くからでも見つけたのか、彼女――千春は浴衣だから走りにくいのに走って来た。

「千春……着付け、崩れるわよ」

一応そうは言っておくが、千春は着崩れしないように抑えながら走っていた。……何というか、これも差なのだろうか。どれだけアウトドアかインドアかの…。

「千春、似合ってる…ね」
「…そう?ありがと」

普段こういう会話をしないからか辿々しくなってしまうが、皆こういうことを言うのだと思って――そして何より自分が思ったことを言った。
千春の浴衣は淡い桃色で、いつもより大人っぽい雰囲気だ。細かい模様が入っているからか、背も少し高く見える。

「公園に集合だよね?行こうー!」
「……ええ」

相変わらずのハイテンションだが、この日はもう周りが賑わっているからかもしれないが…全くうるさいなどと思うことはなく、逆に心地よさまで感じるのであった。