コメディ・ライト小説(新)

Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ募集中』 ( No.118 )
日時: 2017/09/10 22:05
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

41.光の筋。



「うっそー!雨降ってきたじゃん…」
「マジか…やばくね?」

しとしとと降り始める雨。予報では晴れだったはずなのに――せっかく、珍しく楽しみにしていた夏祭りが…中止になってしまったら元も子もない。

「あたし晴れ女だよー」
「うちも。誰や、雨女か雨男は…」
「私は違うよ……」

男子2人組も違う。ちなみに沙彩も雨女というわけではない。寧ろ沙彩が行く行事は結構晴れていることが多いから、何とも珍しいことだ。

「うぅ……どうしよう?花火見れないかもしれない…」
「そんなネガティブになっちゃ駄目だよー……けど無理かも」
「桃瀬だってなってるだろ……」

雨が降ったことにより、皆の心がかなり沈んでいた。このままでは花火を見ることはもちろん、屋台を回ることだって出来ない。空にはこの真上だけ雨雲があって、それ以外は普通の白い雲だ。何とタイミングが悪いこと。

沙彩はバッグから携帯を取り出して、雨で濡れないように左手をかざしてから操作する。それから天気予報アプリを開いて見た。


――雨はこの1時間だけのようだ。花火が上がるのは8時。その時間はなぜか晴れになっている――この天気予報、果たして本当か否か。
予報が当たることを願って、沙彩は他の5人が屋根に入ったから後に続いて入った――。



○**○


(雨止んで、雨止んで、雨…止んでよ……)

屋根に入ってしばらく経って。まだ小雨だが、降り続いている。
沙彩は心の中で何回も何回も雨止んで、と繰り返していた。

「雨止んで…止んで……」

遂に声に出る。第三者から見ればずっと同じ言葉を呟いていて不気味に聞こえてしまうかもしれないような声のトーンで。
いきなり雨が降ってきて皆がこの屋根に入ったのだから、この人口密度の高い空間では周りの人に聞こえていてもおかしくないのにずっとずっと繰り返す。

「……沙彩がそんなに願うなんてなー…」

ずっと繰り返していると、それが聞こえたのか俊に声を掛けられた。

「―――悠夜、テストの日に余計なことしたって言ってたよ。それに心配してた。終業式の日にも人の目から逃れるみたいにこそこそ学校から帰ったの、見てたらしいよ」
「…え?ほんと?」

突然のカミングアウトに、沙彩はなんで――という気持ちも込めて悠夜のほうを見る。

(……あの子はあの子なりに……心配してくれてるの?)

正直、訳が分からない。けれど――沙彩は自分が学校に行かないだけでこうも色々な人間に心配を掛けさせないといけないのかと。申し訳ない気分に襲われる。



――ふっと意識が切り替わる。
夏祭りの日までこんなことを考えるのは嫌だ。純粋に楽しむためにここへ来た。
考えるのは後……今はとりあえず、この雨が止むように願う。

陽は出ていた。もう少しで日の入りだが、所々にある青空から光は降り注いでいる。きっと、天気予報の通りになるだろうと沙彩は強く願った。