コメディ・ライト小説(新)

Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ募集中』 ( No.121 )
日時: 2017/09/12 11:32
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)

42.決心。



「来たー!晴れてきたよー!」

それから約20分経ったとき――沙彩たちや他の一般人たちの願いが通じたのか。ようやく、雲の間からもうすぐ落ちてしまいそうな光が見えた。辺りも暗くなってきているが、確かに雨は止み、晴れている。

「やったぁ…」

沙彩も思わずそんな声を出してしまった。周りに聞こえていなかったことを確認して沙彩も雨宿り用の屋根から出る。
雨が止んだ瞬間、屋台を営む人たちが次々と営業を再開する。神社内にまた賑わいが戻っていく――。

「よーし!かき氷食べに行くよー!」
「雨でちょっと冷えたのにかき氷食べるの……?」
「美味しいからいいのー」

夏音がそう叫びながらかき氷の屋台へと、下駄で動きにくいのに走っていった。千春もこの雰囲気に当てられたのか夏音を追いかけて走る。
その2人を見て沙彩たちもかき氷の屋台へと急いで向かった――。


○**○

「ブルーハワイ美味しい~♪」
「ええ!?かき氷は苺味に決まってるじゃん!!」
「……メロンでしょ」

夏音と千春と沙彩がそう話している隅っこで。


「―――秋本くん」

ひかりが悠夜を呼んでいた。

「…ん?」
「うちは沙彩ちゃんが不登校になった理由知らんねんけどな……せやけど、2年で同じクラスになって…1学期の始業式で顔見たとき、全くの無表情で話しかけても素っ気なかってん。夏音ちゃんから聞いたで?秋本くんが初めに沙彩ちゃんを学校に連れて行こうって話しかけたってこと。せやから…秋本くん、諦めやんといてな」

ひかりと悠夜、これだけ色々話すのは初めてだが、実は夏音から悠夜のことを聞いていたのだ。夏音も悠夜のことを結構信頼している。それに――そうやって悠夜が動き始めてからだ。沙彩がこんなに楽しそうに過ごすようになったのは――。

「うちも沙彩ちゃんと学校行きたいしな」

そう言ってひかりは軽く微笑んだ。

「……言われなくても、諦めねぇよ」
「え…?なんで?」
「…決めてるんだよ。不登校児が居たら頑張って学校に誘うってな」

悠夜にとっての悲劇――あのような過ちを二度と犯したくない。
悠夜は沙彩の事情を知らないが、それでもどうしても学校に来て欲しい。学級委員の仕事だからではなく、これは個人的な感情だ。

「そう。深くは聞かへんけど、お互い頑張ろな」
「…ああ」

ひかりが強く微笑んで、それに悠夜は応えて。
かき氷の話で夏音と千春と盛り上がる、笑顔の沙彩の様子を見ていた――。