コメディ・ライト小説(新)
- Re: 君との出会いは本屋さん。『コメ募集中』 ( No.128 )
- 日時: 2017/09/16 23:57
- 名前: ましゅ ◆um86M6N5/c (ID: QYM4d7FG)
- 参照: 4章スタート!
44.思いが交錯する2学期初日。
8月下旬――今日から、夏休みが終わり通常通りの学校が始まる。……といっても授業はまだない、中学校において嫌い、と言う人がよく居る総合学活道徳、そういう授業が続くのだ。
「……はぁ」
沙彩の自宅。窓から見える学校を見ると最近ため息がこぼれる。
『そうね。楽しかったわ』
あの時の素直な気持ち。その気持ちが夏祭りから10数日経ったが、全く忘れられない。
そして――その時実は、「学校に行ったらこの楽しみを毎日味わえる」という気持ちになったことも忘れられないのだ。夏音に言ったら「急にどうしたの」と言われるだろうし千春に言ったら「じゃあ学校来る!?」と言われそうだし、悠夜に言ったら佐野のことを話題に出されると思って誰にも言えなかった。
――いつ頃からだっただろう、夏音、千春、ひかり、悠夜、俊と――よく話すようになったのは。
夏音と俊とは元々本屋に来てくれていた関係で話はしていたが、これほど沢山話したりはしなかった。
それに、千春や悠夜とは最近初めて会ったはずなのに、この2人とも居て気分を害することはあったとしても楽しさで打ち消されていたと思う。
ひかりとも陸上部にいた頃、あまり喋らなかった。彼女が殆ど他人に興味がないというのもあったが、そもそも喋ることもあまりなかったから。そんな彼女が自分のことを色々考えてくれていると言うことには驚いた。
「あぁ……まぁいいか……」
意識を無理矢理切り替えさせるように、沙彩はベッドにダイブする。
――あの夏祭り以来、どうも調子が狂っている。
○**○
「ええっ!?月島さんと夏祭りに行った!?」
「……行きましたよー」
「行きましたよ!」
教室に入ってから夏音と千春が話していると、突然割り込んできた佐野。夏音たちは大して大きな声では喋っていなかったのだが、佐野が教室内にいるときに話したのが間違いだったのか。
「あの子……そんな行事だけ行って…」
「あ、違いますよ先生ー。あたしたちが誘っただけなんで、そういうこと言わないでくださいー」
「けど!誘われたとしても行ったんでしょう!?なのに学校には何回言っても行かないとはどういうことですか!」
佐野が取り乱したように夏音と千春に向かって言う。千春は確かに……という顔で少し考えていたが、夏音はというと。
「…先生が居るから……」
「――え?」
「いえ、何でもないですよ~」
思わず口走ってしまった言葉をこれ以上詮索されないように作り笑いで誤魔化す。
全く悪気のない佐野。もしかして沙彩に向かっていった言葉を忘れているのだろうかと思えるほどの開き直り。
だから沙彩ちゃんは学校に来ないんだよ――そう、夏音が思いかけたところで。
「私だって……謝りたいことがあるんですよ…――」
――不意に聞こえたその言葉に、夏音は佐野の方を思わずじっと見てしまった。